06 どんぐり

第1話「01 鍵」

前話「05 秋灯」


 ふんふんと鼻を近づけてみる。嗅いだことのない匂いがして、ちょんと前脚でさわってみた。
 まるまるとした形をしているのに、あまり転がらなかった。残念。

 ちょっと強めにパンチしてみる。ころん、と一回転しただけで、その後はちっとも動かなかった。
 仕方がないので、ふて寝する。ふかふかの落ち葉の上にごろりと横になれば、空から赤い葉と黄色い葉が降ってきた。

 いつもどおり脱走して、ぬかりなく駆け上がって、飽きたので遠出をしてみたら、知らないものばかりだった。

 ひげが風にそよいで、心地いい。
 なんとなく、この赤い葉も、さっきの丸いのも、あの子が好きなもののような気がした。


第7話「07 引き潮」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?