05 秋灯

第1話「01 鍵」

前話「04 紙飛行機」

 爪先から冷えていく、そんな夜でした。
 窓の外では、あかがね色の月が傾いていました。ベッドに入って本を読んでいると、風が窓ガラスをたたく音が聞こえたんです。
 そうです、古今和歌集にもありますね。

秋来ぬと目にはさやかに見えねども 風の音にぞおどろかれぬる

 窓辺を見たときには、すでに宝箱は戻ってきていました。いつかの日、いらなくなった、あの宝箱です。

 そっと蓋を開けると、箱の中には一本、仄青い水の鍵が入っていました。

 ああ、やっぱりあの手紙はとどいていたんだ、そして今、お返事がきたんだ。そう、思いました。


第6話「06 どんぐり」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?