26 対価
「水はめぐるものですからね」
あの猫に言ったのと同じ言葉を、あなたにも告げた。あなたはあの猫が言ったとおり、物分かりが良かった。
「水がめぐるように、命は廻ります。もう一度めぐり逢うために、まっしろにするのです」
あなたは眉ひとつ動かさず、聞き入っている。
「それはまるでやわらかな雨に濡れるように、ゆっくりと咲いて、静かに散ります」
あなたは察しも良く、小さくうなずいた。
「あなたの猫はまっしろになり、ひとしずくの鍵を置いていきました」
あなたは仄青い水の鍵を見つめる。やがて、祈るように握りしめた。
「あなたにありがとうと云い、そして、あなたに許されるための、対価です」
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