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漫才コンビを組んだ話
高校生のある日、カワイイと言われるよりオモシロイと言われたい願望が突如としてやって来た。
その頃はいかにして自分を可愛く見せるかが至上命題であったのが、そんなことはどうでも良くなってしまった。
関西の人ならご理解いただけるのではないかと思うけれど、自分(関西人はあなたを自分という)オモロイやっちゃな~と言われるのは勲章である。少なくとも高校生ぐらいの年齢ではオモシロイヤツは紫綬褒章どころか勲一等に等しい。
これは女子でも例外ではない。ただあまりやり過ぎるとヨゴレ扱いされてしまうし何より男子からモテない。ワタシ的にこれは困る。
でも、サイトーさんってカワイイしオモロイし最高やなと言われたいのである。結局カワイイと言われたい気持ちは捨てきれないのだが、だとしてもオモロイと言われたいのである。そしてあわよくばモテたい。
わたしはさっそくネタ帳を持つことにした。そして授業中だろうが食事中だろうがオモシロイと思うことを思いつくたびにそのネタ帳をせっせと埋めていった。
ひとを観察していると以外とオモシロイことのひとつやふたつはあるもの。ただし、そのネタをオモシロイに落とし込めるかどうかは別なんですが。
そんなある日の通学途中、阪急電車の中吊りの宝塚歌劇団のポスターを眺めていて閃いた。
宝塚のカッコした刑事が張りこみしてたらオモロイんちゃうか。
いまは冷静になっているから面白くもなんともないわって思うけど、閃いたときはコレだ!っと思ったんである。
宝塚歌劇団のカッコをした新人刑事が物陰に隠れて張り込みをしているとき背中の孔雀の羽根みたいなのがはみ出ていてバレるみたいな。
こうして改めて書くと全然面白くないけど、そこから話を膨らませてショートコントをつくり、仲の良い友人に聞かせた。
「いや、全然おもんないし。つーか宝塚ファンやばいしな、めっちゃ炎上するで」
もう散々だった。すっかり自信をなくしたわたしだったが、最後に一番の親友であるМに見せることにした。
これがなんとМにはバカうけ。
「これおもろいやん!サイトー才能あるで!これウチラでコンビ組んで学園祭でたらエライことになるで!」
Мの謎のテンションにすっかり自信を回復したわたしはМとふたりでコンビを組んだ。
そして興奮冷めやらぬМが、なあ、もうこんな学校辞めて一緒にNSCに入らへん?と言いだした。
それを聞いたわたしもすっかり舞い上がり、こんな学校やめてしまおう、ふたりでてっぺん狙おうや!とすっかり意気投合。それからわたしたちは授業もそっちのけで新しいネタ作りに夢中になった。
だがひと月もすると当初の勢いは嘘のように萎んでしまい、ネタ作りもネタ合わせもやめてしまった。わたし達それぞれ二人に彼氏が出来てしまったことが大きな理由だった。
結局、わたしたちにはお笑いよりも男が大事だったのである。そして男のためにお笑いを棄てたという後ろめたさでしばらくの間Mとはお互いに気まずい思いをする羽目になった。
タカラヅカ刑事ともう一つのネタはMの後輩の男子に譲った。後輩の男子は大喜びだったが、秋の学園祭でそのネタを披露してものの見事にスベリ倒してとんでもない事故を起こしていた。
その様子を見ながら、お笑いやめてよかったと心の底から安堵した。
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しばらくnoteから離れます。
最後にこの作品を置いていきます。
皆様と再びお会いする日までごきげんよう。
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