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業務を教えたり、寄り添うことでは成長実感にはつながらない

富士ゼロックス総合教育研究所(現パーソル総研)は毎年人材開発白書を発刊しています。

バックナンバーは以下で無料ダウンロードできます。
https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/publication/wp/

毎年、非常に示唆に富む研究内容が発信されていますが、その中で、2009年の「他者との“かかわり”が個人を成長させる」は、今見てもとても参考になる内容なので、今回ぜひご紹介させていただきたいと思います。

職場での”かかわり”がテーマなのですが、まず、社員は職場の同僚、上司、同期のかかわりからどんな支援を得ているか。分類してみると以下3つであると紹介されています。

1.業務支援:業務に必要な知識やスキルを提供してもらったり、業務をスムーズに進められるよう取り計らってもらったりすること
2.内省支援:自分自身を振り返るきっかけを与えてもらうこと
3.精神支援:仕事の息抜きや心の安らぎを与えてもらうこと

さらに、この調査では、「個人が成長を実感する因子」を以下6つにまとめています。(調査対象は30歳前後)

①業務能力の向上
②他部門理解の促進
③部門間調整力の向上
④視野の拡大
⑤自己理解の促進
⑥タフネスの向上

この6つの因子が高まった時に、30歳前後の若手は”成長実感”が得られると明らかにしているのです。

では、個人が成長を実感するこの6つの因子は、職場のどのようなかかわりで得られるのでしょうか?これを調査したのがこの白書の大変興味深いところですが、

実は、①~⑥いずれにも好影響を与えるのは2の内省支援のみで、いわゆる1業務支援は①~⑥いずれにも影響がなく、3の精神支援も「④視野の拡大」によい影響があるのみで、それ以外の因子にはつながっていないとの結果だったそうです。

つまり、内省支援を提供できてなければ、若手は成長を実感しないということです。

皆様の職場の実態をこの結果に照らしてみるといかがでしょうか?

私のこれまで所属した職場でも、今いろんな会社を見聞きして周っている感触でも、若手に対して仕事のやり方を親切にアドバイスしたり、何か困っているときに相談相手になったりと、業務支援や精神支援をしている会社は多いように感じますが、あまり内省支援を意識してやっているという会社は多くはないように思います。

私たちは、若手を支援するということを少し誤解しているのではないか、あるいは、効果的にできていない可能性があるのではないか。この調査を見ると、そう思わされます。

ただ、内省支援の提供は今、簡単ではありません。リモートワークが増えたり、ハラスメントのリスクに敏感になる必要があるなど、フィードバックしづらい環境があるのではないでしょうか。

現在、若手の離職をいかに防ぐか、あるいは仕事でパフォーマンスを高めてもらうかに各社は腐心していますが、内省支援のためのスキルを提供すること、職場環境をつくっていくこと。このあたりを、職場のかかわりの中でどう実現していくかが、古くて新しいテーマなのだろうと思います。

また来月もよろしくお願いします!

2024/5/25 VOL161                             sakaguchi yuto

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