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人の熟達は努力か才能か。オリンピック選手を観て考える

紆余曲折あったオリンピックがいよいよ開催されています。
皆さまご覧になられているでしょうか。

オリンピックということもあり、ふと思い出した話があります。
もう10年以上前になるのですが、とあるシンポジウムで聞いた話をご紹介したいと思います。

人の熟達は「努力なのか才能なのか」というテーマで、熟達を研究されている大学教授と元陸上選手の為末さん、オリンピック候補の現役アスリートの方がパネルディスカッションをするというシンポジウムでした。(注:古い記録なので、細かい情報は誤っているかもしれません。ご容赦ください)

本当にインパクトのある面白い話で、当時のメモも残しているので、それを元に今書いているのですが、たとえば背の高さは95%が遺伝であるそうです。努力しても及ばない要素が大きいということです。その他有酸素運動の能力は40-90%、IQは48%など、ある程度遺伝の影響力は解明されてきているとのことです。

一方で「努力」と言われる要素。これが熟達の研究テーマになってくるわけ
なのですが、努力によって、物事をうまくできるようになっていくために
一番大切なのは、心的表象(メンタルレプレゼンテーション)だそうです。

専門用語でなじみのない言葉ですが、要は自分の目指したいパフォーマンスのイメージを持てているかということ。

つまり、イメージできていないところには到達できない。
遺伝子が認識できてなくて「伸ばそう」「使おう」というスイッチが入っていない状態であると、せっかく能力を持ち合わせていても、その潜在的な身体能力を呼び覚ますことができないそうです。

そのスイッチを入れるのが、心的表象(メンタルレプレゼンテーション)の
役割になります。イメージすれば叶うという類の自己啓発の書籍にあるような言葉もあながち間違っていないのではないかと思わされます。

さらに、為末さんの話で強烈に印象に残っているのは、
一流の人は「自分のできること」を練習しない。
「できるかわからないこと」に挑戦する。
という言葉です。

陸上選手、特に100m短距離走などは持って生まれた才能の比重がかなり
高い競技だそうですが、そのように才能を持った人であっても、オリンピックに出れるほどまで能力を開花させることができる人は、コーチのいうことを真面目にこなすだけの人ではなく、自分で自分自身のことをよく理解して、「できるかわからないこと」にのみ集中して努力を重ねていける人だということです。

トップレベルの人は、一人で練習する時間を多くとっているとの話もあり、
どこかで人に引き上げてもらうレベルでは限界があることを知り、正しい努力をするというインテリジェンスが必要になることを示しているとのことで、非常に興味深く思ったことを覚えています。

これは企業組織でも同じではないでしょうか。

会社から言われたからやるというレベルで引き上げられるレベルと、
一人ひとりが主体性と自律性を持ち、自分のことを理解して意味のある
仕事だけに集中して取り組んでくれている組織。

こういう状態のチームがつくれたら、非常に強いだろうと
思わざるを得ません。

また、心的表象(メンタルレプレゼンテーション)の話は、
チームづくりにおいても、能力開発においても、自分やチームが
どんなことができる存在だと思っているか。何を達成したいと思い、
日々の仕事がそのこととどうつながっていると認識しているかという
ことが、一人ひとりに紐づいていないといけないと感じさせます。

チームの役割、仕事の役割を適切に
フレーミングすることが必要だと再認識させられます。

また来月もよろしくお願いします!

2021/7/31 VOL129                                                                                        sakaguchi yuto

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