見出し画像

志を振り返る! 青春雄飛編

私は、少林寺拳法グループという団体に本業として関わっています。

この少林寺拳法は、要素として、武道あり、宗教あり、社会教育、国際交流あり、多様な側面を有している組織として、現在は、5つの法人・団体が、グループとして組織されています。

仕事としてのみならず、ライフワークとして、関わっている私は、組織の一員として、世の中により高い価値を提供する為にも、存在意義と未来の可能性を日々、思考しています。

そこでまずは、創始者の志[動機と願い]を理解・研究する必要がありました。

種々の資料からその歴史をまとめてみましたので、どうぞご覧ください。

少林寺拳法とは

少林寺拳法を行ずる(愛好する)形は、実に膨大であり、広義と狭義、人それぞれの注視したい部分も違っていて、いろんな理解・解釈が個々にはあるだろうと思います。

厳格な知財保護管理によって、流派のない「世界で一つの少林寺拳法」として統一組織となっています。しかし、そこには、多種多様な広さと深さを内在していると感じています。技だけみても、剛・柔・整の三法があり、同じ技名でも掛け方が使う理によって、何パターンもあり、趣として、痛めてとったり、痛めず崩したりします。若者は、競技として、演武中心、乱捕中心に楽しんでいたりもする。

教えにしても、学習主体、ボランティア活動主体派などもあります。また、修練場としても、地域の道院、スポーツ少年団や学生や実業団の部活、シニアが多い所、少年部が多いところもあって、地域密着イベントが活発なところも少なくありません。

もちろん、教範や教材において、適宜適応、バランスよくすること。偏らせずと明記はありますが、集う人によって、バランスや特性、規則がそれぞれの法人別、道場別にあるのが実際でしょう。

2020年現在、73年の歴史を通してみても、いろんな個性のコミュニティーが存在していることを見聞しています。

個人の結論から申し上げますと、どれも素晴らしく、文句のつけようなんて到底なく、各々の行じ方、楽しみ方、オールマイティさ、ゆえに人生にどう取り入れるかは自由であろうと考えます。

すべてを統合・調和・包括するだけの広さ、深さのポテンシャルを有するあまりに、しばしば一体になにが少林寺拳法たる核なのかが、わからなくなってしまう拳士諸君もいるのではないでしょうか。

少林寺拳法に、絶対に外せないもの(本質)は、宗道臣先生の志だと思います。

武道であれ、宗教であれ、ボランティアであれ、介護であれ、体操であれ、競技であれ、道衣を脱ぎ社会でバリバリ働くのであれ、なんにしても開祖の志を理解し、その思いと自分の志を重ね、平和な世の中づくりのために自ら行動する。

それすなわち、(広義において)少林寺拳法を行っているといっても過言ではないのでしょうか。

その「宗道臣先生の志」の原点が学ぶことができる宗道臣史については、教範という少林寺拳法のバイブルの第1編第1章つまり、一番大事なこととして、記されています。生前、宗道臣先生は、教範第1章を何百回も読んで、丸暗記できるくらいになれよと法話されました。

また、文庫「強さとは何か。」において、開祖の最も近くで学んだお二人(監修 宗 由貴前師家 構成 鈴木 義孝先生)が、現代版として、わかりやすく70の言葉をもとに、要約され書籍となっています。

そこで、忙しい現代人に向けに、区分けして、宗道臣先生の半生を理解しやすいようにまとめてみたいと思います。

参考書籍を基にしながら、あくまでも、一個人の学習の一環(インプット~アウトプット)として、ご一読頂きましたら幸いです。また、卍から双円繋ぐ世代である私として、「温故知新」がテーマでありますゆえに、古い資料の表記と新しい資料の表記が入り混じった形式となっております。悪しからずご了承ください。

※念の為、少林寺拳法グループ公式見解ではないこと、あらかじめ述べておきます。

【エピソード1 18歳~36歳 青春雄飛編】

➀17歳の熱血青年中野理男(宗道臣)は、「日本民族発展の捨て石になろう」と自ら志願し、満州へ渡る。

➁ついた仕事は、関東軍の特殊工作の要員。任務の遂行に必要な教育を受けるため、道教の十方叢林に預けられ、陳良老師との縁が生まれる。陳良老師は、嵩山少林寺に源を発する北少林白蓮拳の師父であった。

③老師の人格に傾倒し、日々任務のかたわらに教わる拳法は、やがて中野青年をとりこにした。任務で各地を旅する機会などを生かして、各地で生き残っている秘密結社の頭目や拳法の師父に各種の拳技を学び、自分なりに研究し整理、編成する。

④一方、任務の大旅行の厳しい現実は「国難を救う」という大志と異なり、師を離れて一時帰国、19歳のとき、岐阜県各務原の飛行隊に入隊。

⑤20歳のとき、そこでの雨中訓練の無理がたたって、心臓弁膜症と診断され、余命を宣告をうけ除隊。残り少ない命ならとやけっぱちとなり、三度、陳良老師を頼って満州へ

⑥危険な任務をかってでるなど、生き急ぐ行動を「人の命は天のみぞ知る」と陳良老師にさとされ、死生観を改めると共に、東洋の経脈の理にもとづく「整体医法」を施され、身をもって効果を体験する。(22歳の時)やがて、陳良老師の師である文太宗郎氏の直弟子として入門を許される。

⑦齢70を超え、陶治された文老師の人格にふれながら、厳しい修行を重ねた。25歳のとき、西安まで旅する道中にて、陳老師、文老師と三人で河南省嵩山少林寺に立ち寄り、文老師から北少林義和門拳21代師家の継承を受ける。またこの際、僧が演練する様子が描かれた壁画からこれまでの武道武術と違った着想を得る。後に、この着想から修行法を確立したことから「少林寺拳法」と命名することになる。

⑧26歳ソ満国境にて、鉄路警護隊員となる。その後28歳で民間に転職、満洲綏陽県商工股長となる。32歳で満洲綏陽県商工会事務局長となる。1945年(昭和20年)8月9日、ソ連軍、日ソ不可侵条約を破棄して、ソ満国境から攻め込んできた。一方、無敵を豪語していた日本の関東軍は、在留邦人を見捨てて、退去してしまう。ソ満国境から命からがらの逃避行の間に、自分中心に行動するもの、自己犠牲をいとわず行動するもの、人の本質を感ずる機会に多々直面。8月15日日本は無条件降伏。ソ連共産軍の軍政下で、極限状態の生活を味わう。

⑨この極限状況下での敗戦国民の惨めさと悲哀から、宗教、イデオロギー、道徳よりも、国家や民族の利害の方が優先し、力だけが正義であるかのような国際政治の現実をまのあたりにする。法律も、政治も、イデオロギーや、宗教や国の方針で決めるのではなく、その立場に立つ人の人格や考え方によることを痛感、「人、人、人、すべては、人の質にある」という真理を発見する。

⑩その極限状況下において、心から真の平和の到来を希求し、その実現には、人づくりの道以外はない。生きて帰ったらば、祖国日本で私塾を開き「慈悲心に富み、正義感に燃え、自信と勇気と行動力を兼ね備えた人間」を育てるという大志(夢)を持つ。

⑪有象無象の引き上げ部隊のリーダーとして、指揮を執りながらなんとか帰国するも、祖国は焼け野原、ついこの前まで、一億総動員で団結していたはずの国民たちは、一転互いに傷つけあう、無秩序な弱肉強食の修羅場と化していた。

⑫「正直者が馬鹿を見る世の中で、日本はこのままではいいのか」「なんとかしなければ」少年時代からの行動の原動力であった正義感と慈悲心が頭を巡り、満州の地で描いた夢を現実化するための活動を始めた。

⑬昭和22年(1947年)10月、ついに香川県多度津の一角に、のちに五畳半道場といわれる小堂を建て、中国で学んだ印度伝来の阿羅漢の拳の秘技を教えて人を集め、道を説き始め、36歳で、少林寺拳法を創始する。

⑭「正しい釈尊の教えから、人間の尊厳と自己確立の道を説き、それに幼少時代の不遇の経験、激動の昭和初期を生き抜いて培った人生訓、世界観、死生観を加え、人間尊重の教えに立脚した愛民愛郷の必要性を説かれた。

⑮このインド伝来の「宗門の行」としての、北少林義和門系の阿羅漢の拳は、少林寺拳法と名付けられた。相手を倒すことを目的とせず、己に克ち、心と体を整え、お互いに技術を楽しみながら、上達を図る特殊なもので「護身練胆」「健康増進」「精神修養」の三徳を兼備した禅門覚道の行法として確立する。

⑯ここに宗道臣先生は、この拳法を主行とした人づくりの道を「拳禅一如、力愛不二の法門」として編成し、金剛禅を開創されたのである。そして、初期の弟子たち(高校生、自衛隊員、国鉄職員)が中心となりやがて全国へと波及し、一代にして大きな組織となっていく。 

【エピソード1 完】

【まとめ】

先日、読んだユヴァル・ノア・ハラリ著のホモサピエンス全史では、約7万年前、新しい思考と意思疎通の方法を得る「認知革命」が起き、人類は「現実には存在しないものについて語り、信じられる」ようになり、「大勢で柔軟に協力するという空前の能力」を手に入れ、貨幣、国、宗教、虚構・共通の神話を信じることで、無数の見知らぬ人同士が力を合わせられると著者は分析しました。

ホモサピエンス(人間)は、虚構を共有できる唯一の存在であったからここまで生き残り、科学を繁栄させることができたということです。

少林寺拳法の世界を堪能にするには、まずこの教範第1編第1章を全員が共有することが大切なのではないだろうかと私は考えています。

開祖の物語は、開祖にとってはノンフィクションで、事実であるけれども、それを直接体験していない人にとっては、フィクション同然に近くなるとも思えます。時代も移り、開祖も直接知る世代が、徐々にいなくなるこれからの時代の課題でもありますね。

しかし、この物語を深く知り、学ぶことで、あなた自身の修行のストーリーに大きな意義を持たらすことがあります。

例えば、漫画の「ワンピース」「鬼滅の刃」などにしても、そのストーリー、世界観を共有しているからこそ、ファン同士のコミュニティーが盛り上がりますよね。

私は、ストーリーとそれに基づいたテーマや主義主張を理解、共有することで、生涯修行としての少林寺拳法がより充実できるのではないか思います。

少林寺拳法もかつては、さかんに漫画や映画の題材になりましたが、また新たに令和時代版でつくられることを大いに期待したいです。

【参考文献】

「強さ」とは何か。少林寺拳法創始者・宗道臣70の言葉 (文春新書)2012

あらはん1983年9月号 (社)日本少林寺拳法連盟出版局

少林寺拳法入門 (徳間書店)1977

少林寺拳法教範 1973 改訂新版

ホモサピエンス全史 2017 河出書房新社

●「強さ」とは何か。少林寺拳法創始者・宗道臣70の言葉        

ぜひ読んでみてください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?