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「先祖が大事にしていた物を捨て続ける少年グラフのこと」

「ああ、またワシの大事にしていた物を捨ておって! 聞いてくだされ、天にしたがえるものたちよ。おお、あわれなワシの言葉に耳を貸してくだされ。ワシの名はアレキサンドロメリヤと申し、生きている間にたいへんごうかけんらんになるまで世界の宝物を集めに集めた者なのです。なのに、ワシが死んだのをきっかけに、まごの少年グラフがワシの大事に大事にしていた宝物をぽんぽこぽんぽこ捨てとるんじゃあ。あ、また捨ておって! それはな、ワワスカス戦争の勝利を治めたあかしとして持ち帰ってきた世には二つともないヴィーナスの絵なんじゃあ。それを、あ! あ! なんという捨て方をするんじゃあ! そっちはな、ピピカツプ会社の名誉理事長としてのこうくんをたたえたあかしとしてもらいうけた世にも珍しいトロフィーなんじゃあ。あー、こんどはワシの、そっちはな、トミミトボ大会で優勝したあかしとしてもらいうけたスーパースーパー貴重な彫像なんじゃあ。見てくだされ、天にしたがえるものたちよ。このようにして、わしのまごの少年グラフはもののかちも分からず、ただただ捨て続けているんじゃあ。これでは、ワシは何のために生きてきたというんじゃあ。ワシのいきたあかし、だいじにしていた、してきたものがどんどんすてられてゆくんじゃあ。こんなのあんまりじゃあ。あ、グラフの動きが止まったぞ? やや、女の子からもらった手紙はとっておくのか。グラフよ、ワシのことも、もっときづかってもらえぬかのう?」

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