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(実況中継)減損会計④

財務会計の計算問題を実況中継していくマガジン
今回も、減損会計に関する問題を実況中継してくよ。
では早速、問題を見ていこう。

問題

原則法と例外法のそれぞれで、のれんに配分された減損損失の金額はいくらになるか求めなさい。

前提条件
・期中に甲事業と乙事業を買収。
・甲事業に関連した以下の資産グループとのれんに減損の兆候あり。

・甲事業と乙事業は内部管理上独立した業績報告が行われている。
・のれんの帳簿価額は60,000千円である。
・のれんが認識された時点の甲事業の時価は90,000千円、乙事業の時価60,000千円である。
・のれんの帳簿価額は、のれんの認識された時点の甲事業と乙事業の時価の比率で分割する。
・のれんの帳簿価額を各資産グループに配分する場合には、各資産グループの帳簿価額をもって配分する。

解説(実況中継)

今回は、のれんがある場合の減損に関する問題だ。
早速解いてみよう。

まずは、のれんの帳簿金額60,000千円を甲事業と乙事業に分割するよ。
問題文に、「のれんの認識された時点の甲事業と乙事業の時価の比率で分割する」とあるので、甲事業の時価90,000千円と乙事業の時価60,000千円で按分する。
のれんの帳簿価額 60,000千円×甲事業の時価 90,000千円÷甲事業と乙事業の時価の合計 150,000千円= 36,000千円

甲事業ののれんの帳簿価額が求められたので、
まず、原則的な方法で計算した場合ののれんに配分された減損損失の金額を求めていこう。

原則的な方法とは、「より大きな単位」で減損損失を認識及び測定する方法だ。
測定のステップは、次の通り。
ステップ①:資産グループごとに減損損失を測定する。
ステップ②:より大きな単位で減損損失の金額を計算し、のれんを加えることによって増加する減損損失はのれんに配分する。
<のれんに配分された減損損失がのれんの簿価を超過する場合>
ステップ③:その超過額を合理的な基準で各資産グループに配分する。
資産グループ⇒より大きな単位という流れを意識しよう。

それでは、ステップ①
今回の対象は、兆候ありのグループBとC。
これらは、割引前将来キャッシュ・フローも簿価を下回っているから、減損損失の測定を行う。
グループBの減損損失は、簿価4,300千円-回収可能価額2,900千円=1,400千円となる。
同様にグループCは、簿価51,600千円-回収可能価額40,000千円=11,600千円となる。

続いて、ステップ②
より大きな単位の簿価の合計は、
グループA30,100千円+グループB4,300千円+グループC51,600千円+のれん36,000千円=122,000千円となる。
割引前将来キャッシュ・フローは90,550千円だから、より大きな単位でも減損損失を認識することとなる。

より大きな単位の減損損失の金額は、より大きな単位の簿価の合計122,000千円-84,675千円=37,325千円となる。

すでに、資産グループBとグループCで1,400千円+11,600千円=13,000千円の減損損失を認識しているから、のれんを加えることによって増加する減損損失の金額は、37,325千円-13,000千円=24,325千円となる。
のれんの金額36,000千円>のれんの減損損失24,325千円のため、今回はステップ②でおしまい。
以上から、原則的な方法によってのれんに配分された減損損失の金額は、24,325千円となる。

次に、例外的な方法でのれんの減損損失の金額を算定する。

例外的な方法とは、のれんの帳簿価額を各資産グループに配分する方法だ。
一般に、のれんの帳簿価額を合理的な基準で各資産グループに配分することは困難なので、この方法は、合理的に配分することができる場合にのみ認められている。

この点、計算問題では、問題文に従って各資産グループにのれんを配分すればOKだ。

今回は、問題文を読んでみると、次のように書いてある。
「のれんの帳簿価額を各資産グループに配分する場合には、各資産グループの帳簿価額をもって配分する」

なので、のれんの簿価を資産グループA~Cの簿価で配分する。
資産グループAは兆候なしなので、飛ばして、
資産グループB:
のれん36,000千円×資産グループBの簿価4,300千円÷資産グループA~Cの合計86,000千円=1,800千円。
資産グループC :
のれん36,000千円×資産グループBの簿価51,600千円÷資産グループA~Cの合計86,000千円=21,600千円。

資産グループBと資産グループCは割引前将来CFも簿価を下回っているから、減損損失の認識を行う。
さっきから特に強調していないけど、減損損失の認識の判定のステップは必ずやってほしい。ここにもトラップをいれてくるのが通常だからね。

資産グループBの減損損失の金額は、
簿価6,100千円-回収可能価額2,900千円=3,200千円。
この減損損失は、のれんに優先的に配分されるから、
のれんに配分された減損損失は1,800千円となる。

続いて、資産グループCの減損損失の金額は、
簿価73,200千円-回収可能価額40,000千円=33,200千円。
この減損損失は、のれんに優先的に配分されるから、
のれんに配分された減損損失は21,600千円となる。
以上から、例外的な方法でのれんに配分された減損損失は23,400千円と求まる。

さらなる解説

固定資産の減損会計基準では、共用資産とのれんの取り扱いについて、取り上げられている。

基準の文言をきちんと押さえておくことで、計算の定着率も増す。
問題をひたすら解いているうちは、慣れで解けるかもしれないが、少し期間がたっても忘れないためには、計算プロセスを基準の文言で覚えておくといい。
それでは、原則的な方法とはどのような方法か、基準で確認してみよう。

共用資産の取扱い
58⑴ 減損損失を認識するかどうかの判定は、まず、共用資産が関連する資産又は資産グループに減損の兆候がある場合、当該資産又は資産グループごとに行い、その後、より大きな単位で行う。共用資産を含まない資産又は資産グループに減損の兆候がない場合でも、共用資産に減損の兆候があるときには、より大きな単位で減損損失を認識するかどうかの判定を行う。
⑵ 共用資産を含む、より大きな単位について減損損失を認識するかどうかを判定するに際しては、共用資産を含まない各資産又は資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額に共用資産の帳簿価額を加えた金額と、より大きな単位から得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額とを比較する。割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額の合計額を下回る場合には、減損損失を認識する。
⑶ 減損損失の測定も、まず、資産又は資産グループごとに行い、その後、より大きな単位で行う
⑷ 減損損失を認識すべきであると判定された共用資産を含む、より大きな単位については、共用資産を含まない各資産又は資産グループにおいて算定された減損損失控除前の帳簿価額に共用資産の帳簿価額を加えた金額を、より大きな単位の回収可能価額まで減額する。
⑸ 共用資産を加えることによって算定される減損損失の増加額は、原則として、共用資産に配分する。ただし、共用資産に配分される減損損失が、共用資産の帳簿価額と正味売却価額の差額を超過することが明らかな場合には、当該超過額を各資産又は資産グループに合理的な基準により配分する。

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

のれんの場合もほぼ同様で、基本的に共用資産をのれんに読み替えればOK
だ。ただし、(5)「共用資産の帳簿価額と正味売却価額の差額」のところは「のれんの帳簿価額」と読み替える必要がある。
共用資産は売却できるけど、のれんは売却できないから少し違うんだね。
計算問題では、この点に少し意識しておこう。

次に、例外的な方法とはどのような方法か、基準で確認してみよう。
まずは、共用資産の場合。

50.共用資産の帳簿価額を各資産又は資産グループに配分する方法を採用する場合には、配分された各資産又は資産グループに減損の兆候があるときに、以下のように減損損失の認識の判定及び測定を行う。
⑴ 共用資産の帳簿価額を、当該共用資産に関連する各資産又は資産グループに配分したうえで減損損失を認識するかどうかを判定する。
⑵ 各資産又は資産グループの帳簿価額に共用資産の帳簿価額を配分した額を加えた金額を回収可能価額まで減額する。
⑶ 共用資産の帳簿価額を配分した各資産グループにおいて認識された減損損失は、帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法により、共用資産の配分額を含む当該資産グループの各構成資産に配分する

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

次に、のれんの場合。

54.のれんの帳簿価額を各資産グループに配分する方法を採用する場合には、配分された各資産グループに減損の兆候があるときに、以下のように減損損失の認識の判定及び測定を行う。
⑴ のれんの帳簿価額を、当該のれんが帰属する事業に関連する各資産グループに配分したうえで減損損失を認識するかどうかを判定する。
⑵ 各資産グループの帳簿価額にのれんの帳簿価額を配分した額を加えた金額を回収可能価額まで減額する。
⑶ のれんの帳簿価額を配分した各資産グループにおいて認識された減損損失は、のれんに優先的に配分し、残額は、帳簿価額に基づく比例配分等の合理的な方法により、当該資産グループの各構成資産に配分する

固定資産の減損に係る会計基準の適用指針

共用資産の場合は、帳簿価額に基づく比例配分等の方法で資産グループと共用資産の減損損失を配分するのに対して、のれんの場合は、のれんに優先的に減損損失を配分する点が若干異なるね。

以上から、次の点を押さえておこう。
①原則的な方法(より大きな単位)では、各資産グループで減損損失を計算してから、共用資産(orのれん)を含むより大きな単位での減損損失を計算する。
②減損損失が共用資産の簿価と正味売却価額の差額を超える場合には、問題文に従って、各資産グループの減損損失を計算する。
⇒問題文に書いてあるから、それに従えばいい。
③例外的な方法(配分する方法)では、兆候のありなしにかかわらず、いったん資産グループに共用資産orのれんの簿価を配分する。
④配分後の簿価で、減損損失を認識の判定と測定を行う。
⑤のれんの場合は、のれんに減損損失を優先的に配分する。
共用資産の場合には、問題文に従って、その資産グループと共用資産に配分する。

まとめ(チェックポイント)

・共用資産やのれんがある場合における原則的な方法とは、どのような方法か説明できるか?
・共用資産やのれんがある場合における例外的な方法とは、どのような方法か説明できるか?
・原則的な方法では、どのようなステップで減損損失の計算を行うか説明できるか?
・例外的な方法では、どのようなステップで減損損失の計算を行うか説明できるか?
・共用資産とのれんの場合で減損損失の配分方法にどのような違いがあるか説明できるか?


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