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(実況中継)リース②

財務会計の計算問題を実況中継していくマガジン
今回も前回に続いてリースに関する問題を実況中継してくよ。
では早速、問題を見ていこう。

問題

次のファイナンス・リース取引について、リースの借手が利息相当額を利息法で計算する場合の当期末(X2年3月31日)のリース債務残高を求めなさい。

前提条件
・リース取引開始日:X1年4月1日
・解約不能のリース期間:4年
・所有権移転条項なし、割安購入選択権なし
・貸手の現金購入価額:不明
・借手の見積現金購入価額:30,000千円
・リース物件(特別仕様でない機械装置)の経済的耐用年数:5年
・リース料は毎年3月31日に後払い。残価保証なし。
・貸手の見積残存価額:ゼロ
・貸手の計算利子率:不明
・リース料を借手の追加借入利子率6%で割り引いた現在価値:29,800千円
・利息相当額を定額法で会計処理する場合、毎回のリース料のうち、利息相当分1,150千円

解説(実況中継)

今回もリース債務の残高を求める問題だ。
まず、問題文にファイナンス・リース取引とあるので、FO判定は特に必要ない。
続いて、所有権移転か移転外かということだが、今回は所有権移転FLに該当する3つの要件①所有権移転条項あり、②割安購入選択権あり、③特別仕様のリースのいずれにも該当しないため、所有権移転外ファイナンス・リース取引に該当する。

所有権移転外FLの当初認識額は、前回にも解説したけど、次の通り。
■貸手の購入価額が分かるときは、
A.貸手の購入価額等とB.リース料総額の割引現在価値のいずれか低い額
■貸手の購入価額が分からないときは、
A.見積現金購入価額とB.リース料総額の割引現在価値のいずれか低い額
どっちのパターンでもリース料総額の割引現在価値と比較するというのがポイントだったね。

今回は、■貸手の購入価額が不明なので、
A.見積現金購入価額30,000千円とB.リース料総額の割引現在価値29,800千円を比較して、小さい方であるB.リース料総額の割引現在価値29,800千円がリース資産とリース債務の当初認識額となる。

次に、1年後のX2年3月末のリース債務の残高を出したいわけだけど、毎年の支払リース料が問題文に記載がない。だから、これを求めていく。

今回は問題文から利息相当額を定額法で会計処理する場合における利息相当額が1,150千円と分かっているので、これを利用するとリース料総額を計算することができる。
当初のリース債務29,800千円+利息相当額の合計1,150×4年=34,400千円
リース料総額が34,400千円なので、毎年の支払リース料は8,600千円となる。

補足だけど、問題文では解約不能のリース期間の4年とリース物件の経済的耐用年数の5年という条件があるけど、後者の方は今回は使わない。
(これは、所有権移転FLの場合の減価償却期間の情報として利用する。
所有権移転外FLの場合は、リース期間を耐用年数とするのが原則だ。)

さて、毎年の支払リース料が8,600千円と分かったので、あとは普段通りにX2年度末のリース債務を求めるだけだ。
当初のリース債務29,800千円-(支払リース料8,600千円-利息相当額29,800千円×6%)=22,988千円。
これが答えとなる。

さらなる解説

リースの問題では、まず当初の計上額を正しく出せることが重要だ。
前回の記事でも載せているけど、次の表は確実に覚えておいてほしいので、また掲載するよ。

また、所有権移転FLか所有権移転外FLの判定も重要だね。
所有権移転FLに該当する要件が含まれるかどうかを最初にチェックする習慣をつけよう。
①所有権移転条項があるか
②割安購入選択権があるか
(正確には、その行使が確実に予想されることも必要)
③特別仕様のリースか
上記の要件のいずれかに当てはまれば、基本的に購入しているのと変わらないので所有権移転FLに該当するんだなと理解しておこう。

ところで、所有権移転FLか所有権移転FLで会計処理でどこが異なるか説明できるかな?

今回の問題で関連するもので3つある。
①当初認識額(リース資産とリース債務)の判定方法が異なる。
⇒上記の表の通り。(貸手の購入価額等が不明のときは同じ。)
②減価償却方法が異なる。
⇒所有権移転外FLでは、基本的には、
リース期間を耐用年数、残存価額をゼロとして償却。
償却方法は、定額法、級数法、生産高比例法等の中から選択適用。
(自己所有の固定資産と同一の償却方法にする必要はない。)
⇒所有権移転FLでは、
自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法とする。
また、耐用年数は、経済的使用可能予測期間とする。
③リース資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取扱いが異なる。
⇒所有権移転外FLでは、
A.リース料総額から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法によることができる。
B.利息相当額の配分方法として、定額法を採用することができる。
⇒所有権移転外FLでは、上記のような定めはない。

計算問題では、この辺りは問題文で指示があるからあまり問題はないのかもしれないけど、減価償却方法が異なる点だけは確実に覚えておこう。

まとめ(チェックリスト)

・所有権移転FLに該当すると判定されるための3つの要件を説明できるか?
・所有権移転FLの減価償却(償却方法・償却期間)について説明できるか?
・所有権移転外FLの減価償却(償却方法・償却期間)について説明できるか?
・所有権移転外FLの利息相当額について、原則的な取り扱いと例外的な取り扱いを説明できるか?

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