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(実況中継)リース④

財務会計の計算問題を実況中継していくマガジン
今回も前回に続いてリースに関する問題を実況中継してくよ。
では早速、問題を見ていこう。

問題

所有権移転外ファイナンス・リース取引について、X1年度(X1年4月1日~X2年3月31日)における次の金額を求めなさい。
①貸手の利益
②借手の費用

前提条件
・リース取引開始日:X1年4月1日
・解約不能のリース期間:5年
・リース物件の経済的耐用年数:6年
・リース料:年額5,500千円(毎年3月31日に後払い)
・貸手のリース物件の現金購入額:26,520千円
 借手はこれを知りえない。
・借手の見積現金購入価額:25,680千円
・貸手の計算利子率:3.28%
 借手はこれを知りえない。
・借手の追加借入利子率:2.86%
・貸手の見積残存価額:1,800千円
・残価保証:なし
・貸手・借手ともにリース料の利息相当額を利息法で計算。
・借手は、減価償却方法に定額法を採用。
 耐用年数と残存価額は、会計基準における原則的な取り扱いを採用。
・貸手・借手ともに決算日は3月31日
・現価係数と年金現価係数は以下の通り。

解説(実況中継)

今回は、リースの貸手と借手の会計処理がテーマです。
まずは、貸手の利益から求めていこう。

貸手の会計処理には、3パターンあるけど、利益はどの方法も同じ。
リース会社で一般的に採用されている「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」で考えていこう。

みなさんは、普段借手の会計処理ばかりを解いているから、貸手の会計処理を考えると混乱してしまうこともあるかもしれないけど、「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」は利息相当額が売上と売上原価でグロスになっているだけだ。

要するに、利息相当額を100と計上しないで、売上高1,100売上原価1,000のよ
うに総額で計上するわけだ。

ここで、売上高は、各期にもらえるリース料の5,500千円となる。

一方で、売上原価はいくらかとえば、当然買ってきた金額だから、今回では、貸手のリース物件の現金購入額26,520千円が該当する。
これをリース期間に配分していくわけだね。

貸手の計算利子率が、3.28%と分かっているから、
26,520千円×3.28%=870千円
これが貸手の利益となる。
これで、答えは求められたけど、補足として、売上原価を求めると、
リース料5,500千円-利息相当額870千円=4,630千円となる。

これで、売上と売上原価がグロスで計上されるということの意味は理解できただろうか?

続いて、借手の費用を求めていく。
借手の費用とは、①支払利息と②減価償却費のことだね。

所有権移転外ファイナンス・リース取引で、「貸手の購入価額は明らかでない」のパターンだから、
見積現金購入価額とリース料総額の割引現在価値のいずれか小さい方がリース資産とリース債務の当初認識額となる。

今回は、貸手の計算利子率も借手は知りえないので、追加借入利子率2.86%で現在価値を計算する。
今回は、2.86%の年金現価係数が4.5981だから、
5,500×4.5981=25,290千円が割引現在価値と求まる。
見積現金購入価額25,680千円>割引現在価値25,290千円だから、
当初認識額は25,290千円となる。

あとは、いつも通り
①支払利息
25,290千円×2.86%=723千円
②減価償却費
原則的な会計処理とは、リース期間を耐用年数、残存価額をゼロで償却、さらに今回は定額法だから、
25,290千円÷5年=5,058千円
と求まる。
以上から、借手の費用の合計は①723千円+5,058千円で5,781千円となる。

さらなる解説

今回は、リースの貸手の会計処理にフォーカスを当てて解説していく。

みなさんは、リース会社のビジネスについてよく理解できているだろうか?

リース会社は、コピー機のような事務用機器から、飛行機や建物のようなものものまでありとあらゆるものをリースしている。
リース会社は、その信用力によって、低いコストで資金を調達して、そこに利益(スプレッド)を乗せることで利益を生み出している。
例えば、0.5%で銀行から借り入れてきて、1.5%のスプレッドを乗せて2.0%の計算利子率で借手に物件をリースするといった具合だ。

所有権移転外FLは、「リース債権」という勘定科目で計上され、1つのリースの借手から投資額の全額を回収するスキームである。その意味で、純然たる債権といえる。

一方で、所有権移転外FLでは、「リース投資資産」という勘定科目で計上され、リースの借手からのリース料とリース期間終了後の再リース又は売却により、投資を回収するスキームである。
見積残存価額の設定のノウハウは、リース会社の生命線で、この設定を失敗すると収益性を損なう結果となるおそれがある。(説明はちょっと下で)
その意味で、所有権移転外FLは純然たる債権ではなく、リースの借手に対する信用リスク管理に加えて、物件管理も多少は必要となる。
(なお、オペレーティング・リースの場合は、当初の借手のみから投資額の全額は回収できないので、物件管理は極めて重要。有形固定資産として計上されるから、収益性が低下した場合は、減損損失が計上されるよ)

さて、ここで、当初認識額について、リースの貸手と借手で比較してみよう。
リースの貸手は、自らリース物件を購入しているわけだから、リース物件の購入価額が明らかでないケースは基本的にはない。
だから、所有権移転FLでも所有権移転外FLでも当初認識額は現金購入価額となるんだね。まとめると、下の表のようになる。

続いて、見積残存価額について説明していこう。
見積残存価額とは、リース期間終了時に見積られる残存価額で残価保証されていない部分の金額をいう。
リース会社が当初のリース料で回収を見込んでいない部分だから、リース会社がリスクをとっている金額といえるね。
なお、残価保証の場合は、物件の処分価額が保証価額に満たない場合には、借手にその不足額を支払ってもらえるわけだから、リスクがないわけだね。

さて、貸手の計算利子率は、次のような利率になるように計算するよ。

貸手の計算利子率=
リース料総額(残価保証がある場合は、残価保証額を加える)と見積残存価額の合計額の現在価値が、現金購入価額と等しくなるような利率。

下の図だと、利息相当額を利息法で期間配分するような利率となる。
見ての通り、見積残存価額を大きくすると利息相当額が大きくなって、貸手の計算利子率は大きくなるね。

次に、「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」を前提に
リース料の受取時の会計処理を見ていこう。
(なお、会計処理方法は、3つあるけど、利息相当額はどれも同じ)

リース投資資産(又はリース債権)の金額に貸手の計算利子率を乗じることで、各期の利息相当額が計算されて、これを受取リース料から控除した金額を売上原価として計上していくよ。

これを毎期行っていくことで、最終的には、見積残存価額が売上原価に計上されずに残ることになる。
なぜなら、上の図で、次の式が成り立っているからね。
利息相当額+リース物件の取得価額=リース料総額+見積残存価額
ちょっと式を変えると分かりやすい。
リース物件の取得価額-(リース料総額-利息相当額)=見積残存価額
リース物件の取得価額のうち、青色の見積残存価額に対応する部分が残っていることを確認してみてね。

色々と説明してきたけど、要するに次のポイントを押さえてほしい。
・リース投資資産(又はリース債権)の残高に、計算利子率を乗じた金額が各期の利息相当額になる。
・売上と売上原価をグロスで計上するから、受取リース料を売上に計上、受取リース料から利息相当額を差し引いた金額を売上原価に計上する。

補足だけど、借手は、リース債務とリース資産の両方を計上しているから、リース資産の減価償却方法の論点があったけど、貸手がFLとなる場合には、減価償却の論点はないよ。
なんでって、資産としてリース債権(又はリース投資資産)を計上して、利息法で各期に費用配分しているからね。借手の場合とごっちゃになって「あれっ、減価償却はどうするんだっけ?」とならないようにね。

仕訳で示すと、下記のような仕訳となる。
現金預金 100/ 売上高 100
売上原価 90 / リース投資資産 90
この場合、この期の利息相当額は10となることも併せて確認しておこう。

まとめ(チェックポイント)

・リースの貸手の当初認識額は、どのような金額になるか説明できるか?
・契約に残価保証がある場合、貸手の計算利子率の計算にどのように利用されるか説明できるか?
・見積残存価額がある場合、貸手の計算利子率の計算にどのように利用されるか説明できるか?
・貸手において、各期の利息相当額はどのように計算するか説明できるか?
・リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法において、売上高と売上原価はどのような金額となるか説明できるか?







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