見出し画像

(実況中継)減損会計②

財務会計の計算問題を実況中継していくマガジン
今回も、減損会計に関する問題を実況中継してくよ。
では早速、問題を見ていこう。

問題

当期(X20年4月1日~X21年3月31日)に計上される減損損失の金額を求めなさい。

前提条件
・建物Xと機械Yを1つのキャッシュ・フロー生成単位としている。
・資産グループにおける主要な資産は、建物X
・当該資産グループに減損の兆候が認められた。

・建物X、機械Yの償却計算は、残存価額を取得価額の10%とする定額法。
・X28年3月31日に機械Yの取替を予定。再調達支出は9,000千円。
・将来の各期期間に、毎年1,350千円のキャッシュ・フローが見込まれる。
・当期末における各時点の建物X、機械Yの正味売却価額(処分見込額)は以下の通り。

・使用価値で利用する割引率は5%
・現価係数と年金現価係数は以下の通り。

解説(実況中継)

主要な資産と主要な資産以外の構成資産があるパターンの問題だ。
この手の問題は、受験生の中には少し頭が混乱してしまう人もいるかもしれない。

それはなぜか?

減損損失の認識の判定というステップでは、割引前将来キャッシュ・フローと帳簿価額を比較するステップなのに、計算途中で割引計算(回収可能価額)がでてくるパターンがあるからだ。

このあたりはざっくりと次のように覚えておくといい。
・主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超えると、回収可能価額(=割引計算)がでてくる。
⇒20年超えると不確実性が高くなるから
・主要な資産よりも他の構成資産の経済的残存使用年数が長い場合には他の構成資産の回収可能価額がでてくる。
⇒主要な資産が寿命を終えると他の構成資産は売るか他の用途で使用するしかないから。ただ、受験上は、回収可能価額=その時点の正味売却価額と考えていい。
(基準上も、回収可能価額は原則として、主要な資産の経済的残存使用年数経過時点の正味売却価額とされている。)

これを念頭に問題を解いていこう。

まずは、建物Xと機械Yの簿価から求めていこう。
建物Xの減価償却累計額:16,000千円×0.9×5年÷20年=3,600千円
だから、建物Xの簿価は12,400千円となる。
機械Yの減価償却累計額:9,000千円×0.9×5年÷12年=3,375千円
だから、建物Yの簿価は5,625千円となる。
以上から、建物Xと機械Yの簿価の合計は、18,025千円となる。

次に割引前将来キャッシュ・フローを求めよう。
今回は、この資産グループの使用で毎年1,350千円のキャッシュ・フローを見込んでいるから、
①1,350千円×15年=20,250千円
②X28年3月末に機械Yの取替更新を予定しているから△8,100千円(新規△9,000千円+既存900千円)
③建物Xの正味売却価額は15年後のX36年3月末の1,600千円
④機械Zの正味売却価額は15年後のX36年3月末の2,400千円
これら①~④の合計で割引前将来キャッシュ・フローは、16,150千円となる。

帳簿価額18,025千円>割引前将来キャッシュ・フロー16,150千円だから、今回は減損損失を認識する必要がある。

それでは、減損損失の金額を求めていこう。
使用価値は、次の3つの合計となるから、10,718千円と求まる。
①1,350千円(毎年のCF)×10.380(15年の年金現価係数)=14,013千円
②△8,100千円(機械Yの取替)×0.711(7年の現価係数)=△5,759千円
③4,000千円(残存使用年数経過時の正味売却価額)×0.481(7年の現価係数)=1,924千円

ここで、現時点の正味売却価額は、9,800千円(建物X 5,600千円+機械Y 4,200千円)で、使用価値10,718千円のほうが大きいから回収可能価額は、使用価値の10,718千円となる。
使用価値を出して気を抜いて、正味売却価額との比較を忘れちゃだめだよ。

以上から、減損損失の金額は、簿価18,025千円-回収可能価額10,718千円で、7,847千円となる。


さらなる解説

今回は、主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超えない+他の構成資産の経済的残存使用年数が主要な資産の経済的残存使用年数より長いパターンだ。
ただ、組み合わせとしては、次の4パターンがありうる。
厳密には、Bはさらに細分化されるので5パターン。

今回は、この表のCのパターンで、一番簡単なのは、Aのパターン。
パターンAは、それぞれ経済的使用年数経過時点の正味売却価額を加えるだけ。

パターンBとDは、ややこしいようで実はそれほどでもない。
基本的には、他の構成資産の正味売却価額をCFに加えてあげればいいと覚えておく。
ただ、パターンDでは、主要な資産の経済的使用年数経過時点で他の構成資産も売却してしまうのでその時点の正味売却価額を、パターンBでは、他の構成資産の方が主要な資産より早く経済的使用年数経過するので、その時点の正味売却価額を主要な資産のCFに加えてあげることになる。

上の表でどのパターンがでても大丈夫なように、シミュレーションしておこう。

さて、次に減損損失の認識のステップで「認識の必要あり」となった場合についてみてみよう。

この場合は、非常にシンプル。ただ、割引計算すればいいだけ。

減損損失の認識の判定では、20年という縛りがあるから、それを超えたら20年目時点の回収可能価額をだすために割引計算が必要なパターンがあったわけだけど、減損損失の金額を出すステップでは、複雑に考える必要はない。シンプルにそのキャッシュ・フローが発生するタイミングで割引計算をすればいい。そう覚えておこう。

最後に、こういった問題では、計算のステップが多いから、正味売却価額と使用価値の比較を忘れてしまうかもしれないけど、そこは必ず実施するようにメモの仕方などで工夫しておこう。

まとめ(チェックポイント)

・下記のA~Dパターンの割合前将来キャッシュ・フローの計算過程を説明できるか?

・資産の取り替えがある場合、将来キャッシュ・フローの計算にどのように織り込むか説明できるか?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?