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(実況中継)減損会計③

財務会計の計算問題を実況中継していくマガジン
今回も、減損会計に関する問題を実況中継してくよ。
では早速、問題を見ていこう。

問題

資産グループGについて減損損失を認識するかどうかを判定するための割引前将来キャッシュ・フローの金額を求めなさい。

前提条件
・資産グループGに減損の兆候が生じている。
・資産グループGは、主要な資産A、その他の構成資産B、その他の構成資産Cにより構成される。
・経済的残存使用年数は、資産A:25年、資産B:30年、資産C:15年である。
・資産グループGから生じる将来キャッシュ・フローの見積り額は、
 最初の10年間は毎年10,000千円、その後は毎年8,000千円。
・現在の価値を維持するための合理的な設備投資として、15年後に資産Cに代えて資産Dを30,000千円で取得する。
・資産Dの経済的残存使用年数は15年である。
・各資産の正味売却価額は以下の通り。

・使用価値を算定するための割引率は4%。
・現価係数と年金現価係数は以下の通り。

解説(実況中継)

前回に引き続き、主要な資産とその他の構成資産があるパターンの問題だ。

前回と異なるのは、前回は主要な資産の経済的残存使用年数が20年未満だったのに対し、今回は25年と20年超となっている点だ。

減損会計基準上は、①土地については使用期間が無限になりうることや②長期間にわたる将来キャッシュ・フローの見積りは不確実性が高くなることから、割引前将来キャッシュ・フローを見積る期間は20年までとされている。

この点を踏まえて、早速問題を解いていこう。

20年までは、普通に将来キャッシュ・フローを見込めばいい。
①10,000千円×10年=1,000,000千円
②8,000千円×10年=80,000千円
③資産Cの取替 +3,000千円
④資産Dの取得△30,000千円
20年目までの将来キャッシュ・フローは、①~④の合計で153,000千円となる。

次に、21年目以降のキャッシュ・フローについて見ていく。

21年目以降に見込まれるキャッシュ・フローについては、割引計算を行って、20年経過時点の回収可能価額を計算する。
現在ではなく、20年経過時点というのがポイントだ。
なので、使用する現価係数を間違わないでほしい。

⑤21年~25年の将来CF 8,000千円×5年の年金現価係数 4.518=35,614千円
⑥資産A、資産B、資産Dの25年経過時点の正味売却価額(14,000千円+4,000千円+2,500千円)×5年の現価係数 0.8219=16,489千円
⑤と⑥の合計で、20年経過時点の回収可能価額は、52,463千円となる。

以上から、減損損失の認識の判定における割引前将来キャッシュ・フローの総額は、205,463千円となる。

さらなる解説

主要な資産と他の構成資産があるパターンの割引前将来キャッシュ・フローをまとめてみよう。

フローチャートとしては、まず、主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超えるか超えないかが分岐点となる。

次に、他の構成資産の経済的残存使用年数が主要な資産の経済的残存使用年数を超えるか超えないかが分岐点となる。

ここで、他の構成資産の経済的残存使用年数が主要な資産の経済的残存使用年数を超えないパターンでは、さらに、他の構成資産の経済的残存使用年数が20年を超えるか超えないかが分岐点となる。

まとめると、最終的には、次の5パターンとなる。

各資産の経済的残存使用年数について
①主要な資産:20年以内、かつ、構成資産:主要な資産を超えない
②主要な資産:20年以内、かつ、構成資産:主要な資産を超える
③主要な資産:20年超、かつ、構成資産:20年以内
④主要な資産:20年超、かつ、構成資産:21年~主要な資産の間
⑤主要な資産:20年超、かつ、構成資産:主要な資産を超える

①と②は、割引計算は不要で、正味売却価額を将来キャッシュ・フローに加えればいい。
何が違うかというと、どの時点の構成資産の正味売却価額を使うかという点だ。
すなわち、①は構成資産の経済的残存使用年数経過時点であるのに対して、②は主要な資産の経済的残存使用年数経過時点を用いる点が異なる。

③の場合は、構成資産については①と同様、割引計算は不要で、正味売却価額を単純に将来キャッシュ・フローに加えればいい。
ただし、主要な資産については、経済的残存使用年数が20年を超えているので、21年目以降のキャッシュ・フローは20年経過時点の回収可能価額を出すために、割引計算が必要となる。

④の場合は、両方とも残存使用年数が20年を超えているので、21年目以降のキャッシュ・フローは20年経過時点の回収可能価額を出すために、割引計算が必要となる。

⑤の場合も④と同様に、21年目以降は20年経過時点の回収可能価額を出すために、割引計算が必要となる。
ただし、④との違いは、②と同様に、どの時点の構成資産の正味売却価額かを使うかという点だ。
すなわち、④は構成資産の経済的残存使用年数経過時点であるのに対して、⑤は主要な資産の経済的残存使用年数経過時点のものを用いる点が異なる。

以上をまとめると下の表のようになる。

色々とまとめてはみたものの、結局のところ次の2点だけを覚えておけばいい。
①主要な資産の経済的残存使用年数が20年を超えると、20年目時点の使用価値を求めるために割引計算が必要となる。
②主要な資産よりも他の構成資産の経済的残存使用年数が長い場合には、主要な資産の経済的残存使用年数経過時点の正味売却価額を使う。

これは逆にいえば、例えば、主要な資産の経済的残存使用年数が25年で、
他の構成の経済的残存使用年数が30年の場合には、30年後の正味売却価額は計算に使わないということを意味している。
なので、主要な資産の経済的残存使用年数より先の期間の正味売却価額が問題に載っているときにはこれにバッテンをつけてしまってもいいと思う。
実際に、今回の問題でも30年後の正味売却価額は使ってないことを確認してほしい。

最後に、減損損失の測定のステップについても補足しておこう。
減損損失の認識の判定のステップでは、21年目以降に発生する見込みのキャッシュ・フローは20年経過時点の使用価値を算定するのに割引計算が行われたわけだけども、減損損失の測定のステップでは、21年目以降に発生する見込みのキャッシュ・フローは測定時点の使用価値を算定するのに割引計算が行われる。
つまり今回のケースだと、主要な資産の経済的残存使用年数経過時点である25年後の正味売却価額は、25年の現価係数を使って計算するわけだね。
この点を混同しないようにしておこう。

まとめ(チェックポイント)

・次の表のA~Eについて、他の構成資産の正味売却価額はどの時点のものを使うか説明できるか。
・減損損失の認識の判定のステップでは、次の表のA~Eの場合において、割引計算が必要かどうか説明できるか。
また、割引計算が必要な場合には、どのキャッシュ・フローに対して、どのような現価係数を使う必要があるか説明できるか。
・減損損失の測定のステップでは、どのような現価係数を使うか説明できるか。


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