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(実況中継)四半期財務諸表の性格 2021年 第3問 問題2 問2

公認会計士論文式試験の財務会計論の過去問を実況中継していくマガジン
今回は、四半期財務諸表に関する問題を実況中継してくよ。
では早速、問題を見ていこう。

問題

四半期財務諸表の性格付けについては,「実績主義」と「予測主義」という 2 つの異なる考え方がある。わが国の会計基準では,どちらの考え方を基本としているか。また,その考え方が採用された理由について,国際的な会計基準とのコンバージェンスを図るためといった理由の他に2 つ述べなさい。

実況中継

四半期財務諸表の性格に関する問題だ。
四半期財務諸表については、直近10年で1度も出題されていなかったので、正直ノーマーク。

実務上の経験から、税金費用の算定方法などで簡便的な方法が認められていることくらいがすぐに思い出せたこと。

というわけで、このぐらい忘却の彼方にある分野ということを前提に解いていこう。

まず、「実績主義」か「予測主義」か。
ここを外すとジ・エンドだ。こういう問題に本番で直面して、迷ったならば、いったんは飛ばすことをおすすめする。
解ける問題、解くべき問題を確実に解答すれば、それで十分に合格ラインには届く。

話を戻そう。
「実績主義」か「予測主義」かだけど、四半期財務諸表というのは、一部に簡便的な会計処理が認められているものの、基本的には年度と同様の会計方針を適用して作成するものだから、これは「実績主義」ということでいいと思う。

次に、実績だと何がいいのかということを考えてみる。

それは、やっぱり恣意性が入らないということだと思う。

こういうのは、見積りと実績、取得原価と時価などでもよくある論点だ。
例えば、「資産の測定に際して、これまで取得原価が主に選好されてきた理由を説明しなさい。」という問題が過年度に出題されている。

その解答は、外部との取引だから客観性・検証可能性が高く、信頼性が高いというもの。

だからここでも、
実績主義⇒実績⇒基本的には過去の取引⇒信頼性が高い
みたいな流れで答案を作れば、部分点は確保できるはずだ。

模範解答

下記から2つが挙げられればよい

・四半期財務諸表は、四半期会計期間の実績を明らかにすることにより、将来の実績予測に資する情報を提供するものと位置付けることが適当と考えられること
・恣意的な判断の介入の余地や実行面での計算手続きの明確化の観点からは、予測主義よりも実績主義の方が適当と考えられること
・季節変動性については、「実績主義」による場合でも、十分な定性的情報や前年同期比較を開示することにより、財務諸表利用者を誤った判断に導く可能性を回避できると考えられること
・「実績主義」における実務処理の容易さが指摘されただけでなく、「予測主義」によると会社の恣意性が入る可能性があり、また、会社ごとに会計方針が大きく異なると企業間比較が困難になるとの指摘が多かったこと

学習のヒント

実況中継と模範解答を見比べると、実況中継されている話とはかすっているかな程度だと思われる。

本試験では、典型画的な論点の問題から、こういった出題頻度が低いあまり記憶の解像度が高くないところから出題されるということもよくある。

すぐに解答が思い浮かばない場合は、一度飛ばして何かしら書けそうであれば戻ってみればいい。とにかく点をとれるところに時間をかけるのが鉄則だ。

さて、こういった問題への一つのヒントとして、汎用的に使える概念を使って文章を作るとそれなりのものになるというのがある。

例えば、今回だと「信頼性」といったキーワードが挙げられる。

「信頼性」は概念フレームワークで、「意思決定有用性」を支える2つの特性として登場するんだけど、今回の「予測」⇔「実績」のような対立の概念から、「意思決定との関連性」と「信頼性」がトレードオフの関係となるケースがあるという文章が連想された。

ただ、試験だと「意思決定との関連性」とか「信頼性」というキーワードだけだと文章が書きにくいから、事前に、将来の投資成果の予測に役立つ情報だとか、客観的事実に基づいているので信頼性が高いとか何かしらかみ砕いた表現も準備しておくといい。

以上で、今回の問題の解説はおしまい。

最後に、今回の問題に関連する基準を載せておくので、見ておいて。

四半期財務諸表の性格
39.四半期財務諸表の性格付けについては、中間財務諸表と同様、「実績主義」と「予測主義」という2つの異なる考え方がある。
「実績主義」とは、四半期会計期間を年度と並ぶ一会計期間とみた上で、四半期財務諸表を、原則として年度の財務諸表と同じ会計方針を適用して作成することにより、当該四半期会計期間に係る企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する情報を提供するという考え方である。

一方、「予測主義」は、四半期会計期間を年度の一構成部分と位置付けて、四半期財務諸表を、年度の財務諸表と部分的に異なる会計方針を適用して作成することにより、当該四半期会計期間を含む年度の業績予測に資する情報を提供するという考え方である。1973年(昭和48年)に制定された米国基準や我が国の1998年(平成10年)改訂前の「中間財務諸表作成基準」は、この考え方に基づいている。

当委員会では、「実績主義」と「予測主義」のいずれの考え方によるべきかという点について、国際的な会計基準の動向も踏まえて検討を行った。その結果、本会計基準では、次のような理由から、「実績主義」を基本とすることとした。

(1) 1998年(平成10年)3月に企業会計審議会から公表された「中間連結財務諸表等の作成基準の設定に関する意見書」において、①中間会計期間の実績を明らかにすることにより、将来の業績予測に資する情報を提供するものと位置付けることがむしろ適当と考えられること、②恣意的な判断の介入の余地や実行面での計算手続の明確化などを理由として、中間財務諸表等の性格付けが「予測主義」から「実績主義」に変更されたこと

(2) 季節変動性については、「実績主義」による場合でも、十分な定性的情報や前年同期比較を開示することにより、財務諸表利用者を誤った判断に導く可能性を回避できると考えられること

(3) 当委員会が実施した市場関係者へのヒアリング調査や当委員会等での審議を通じて確認した我が国の市場関係者の意見では、「実績主義」における実務処理の容易さが指摘されただけでなく、「予測主義」によると会社の恣意性が入る可能性があり、また、会社ごとに会計方針が大きく異なると企業間比較が困難になるとの指摘が多かったこと

(4) 2000年(平成12年)9月に改訂されたカナダ基準では、「予測主義」の弊害を掲げて「実績主義」が望ましいと判断されたこと

四半期財務諸表に関する会計基準





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