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(実況中継)リース①

財務会計の計算問題を実況中継していくマガジン
今回はリースに関する問題を実況中継してくよ。
では早速、問題を見ていこう。

問題

当期末(X15年12月31日)の貸借対照表に計上される次の金額を求めなさい。
(A)1年以内返済予定のリース債務(B)備品減価償却累計額

前提条件

  • X13年4月1日に、備品をファイナンス・リース取引により取得。

  • リース料総額:350,365千円

  • リース料支払条件:毎年3月末日に1年分(70,073千円)を後払い。

  • リース期間:5年

  • 貸手の現金購入価額:不明

  • 貸手の計算利子率:不明

  • 借手の見積現金購入価額:330,000千円

  • 借手の追加借入利子率:年3.1%

  • 支払リース料の割引現在価値と借手の見積現金購入価額を等しくさせる割引率:年2.0299%

  • 所有権移転条項:あり

  • 経済的利用可能期間:8年

  • 減価償却方法:定額法(残存価額は取得原価の10%)

解説(実況中継)

まずは当初認識額を求めよう。
今回は、「所有権移転条項あり」なので所有権移転ファイナンス・リース取引に該当する。(以下、所有権移転FL)
所有権移転FLの場合、貸手の現金購入価額が分かっていればそれを使う。
今回は、不明だから、借手の見積現金購入価額とリース料総額の割引現在価値のいずれか低い方が当初認識額となる。
また、割引率について、貸手の計算利子率が分かっていればそれを使う。
ただ、今回はそれも不明だから、借手の追加利子率を用いる。

最終的には、リース料総額の割引現在価値と見積現金購入価額のいずれか低い方が取得原価になるわけだけど、実際に計算しなくても割引率を比較することでどちらが取得原価になるかが分かる。

ずばり、割引率が高い方だ。

毎年のリース料70,073を3.1%で割り引く方が2.0299%で割り引くよりも当然小さくなるからね。

そんなわけで、今回は借手の追加借入利子率3.1%を用いたリース料総額の割引現在価値が取得原価となる。
僕のはカシオの電卓なので、次のように計算する。
1.031÷÷70,073 M+ M+ M+ M+ M+ MRで320,000
(A)の金額は、ひとまずタイムテーブルを使って解いてみる。

16年3月末にリース債務63,940千円と支払利息6,133千円を計上するわけだから、15年12月期における(A)1年以内返済予定のリース債務の金額は63,940千円と求まる。

また、備品減価償却累計額は、所有権移転FLだから、自己所有の固定資産に適用する減価償却方法と同一の方法を用いる。
320,000千円×0.9×1年/8年×33ヵ月/12ヵ月=99,000千円
したがって、(B)備品減価償却累計額の金額は99,000千円と求まる。

さらなる解説

リースの問題では、まず当初の計上額を正しく出せることが超重要だ。
所有権移転外FLと所有権移転FLでは、少し異なるから、次の表を確実に覚えておこう。

ポイントは、貸手の購入価額等が明らかな場合だ。
所有権移転FLでは、貸手の購入価額等をそのまま使うけど、所有権移転外FLでは、①貸手の購入価額等と②リース料総額の割引現在価値のいずれか低い方が取得原価になる。
所有権移転FLは、リース物件の割賦購入と同じ経済的実態だけど、所有権移転外FLは、リース物件を返還したり、使用期間がリース期間に限定されたりするので、所有権移転FLとは異なる性質もあるからだと覚えておこう。

ここまでで、きっちり当初認識額が分かったところで、タイムテーブルとは異なった解き方を紹介しよう。端数処理にシビアな必要がない短答式では、この方法が便利だと思う。

僕は、こんな風にメモをとってみた。
最初に左の時間軸を記載して、電卓で、
1.031÷÷70,073 M+ ⇒18/3に67,966をメモ
 M+⇒17/3に65,922
 M+⇒16/3に63,940
…と下から順にメモしていく。
最後の14/3までメモしたら、MRで合計の320,000をメモする。
そうすると、次のようなものができる。

この表を使うと、あらゆる数値を出すことができる。
(BSからのアプローチなので、端数は差が出るケースがある。)

例えば、15/12期の数値を出してみよう。
・1年以内返済のリース債務の金額は、16/3に支払うリース債務の63,940
・リース債務の金額は、133,888(65,922+67,966)
・支払利息は、6,614
(70,073-62,018)*3ヶ月/12ヵ月+(70,073-63,940)*9ヶ月/12ヵ月

なんで、これでいいのか?
結局、ファイナンス・リースの処理というのは、毎年のリース料をリース債務と支払利息に分けているだけだ。
例えば、14年3月であれば、リース料70,073千円を支払利息に9,920千円、リース債務の返済に60,153千円と分けているわけだね。

ここで、15年3月の支払利息を求めるために、
次のようなアプローチをとるとどうなるだろうか?

リース料-(15年3月に返済するリース債務の金額)

=リース料-(14年3月のリース債務の金額-15年3月のリース債務の金額)

14年3月のリース債務の金額は、分解して考えると次のようになる。
$${リース料 /(1+割引率)^4+リース料 /(1+割引率)^3+リース料 /(1+割引率)^2+リース料 /(1+割引率)}$$
同様に、15年3月のリース債務の金額は次のようになる。
$${リース料 /(1+割引率)^3+リース料 /(1+割引率)^2+リース料 /(1+割引率)}$$

上記より、両者の差額は、$${リース料 /(1+割引率)^4}$$と求まる。
これは、上の表では、15/3 62,018が該当するよね。
だから、この方法でOKなんだ。
少し難しかったかもしれないけど、理解できたかな?
割引回数が大きいものから順にはけていくようなイメージをもつといいよ。

まとめ(チェックポイント)

・所有権移転外FLについて、貸手の購入価額等が明らかな場合の当初認識額はどのような金額となるか説明できるか?

・所有権移転外FLについて、貸手の購入価額等が明らかでない場合の当初認識額はどのような金額となるか説明できるか?

・所有権移転FLについて、貸手の購入価額等が明らかな場合の当初認識額はどのような金額となるか説明できるか?

・所有権移転FLについて、貸手の購入価額等が明らかでない場合の当初認識額はどのような金額となるか説明できるか?

・見積現金購入価額とリース料総額の割引現在価値を比べて、当初認識額を決定する際に、割引率の大きい方と小さい方、いずれの方となるか説明できるか?

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