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(実況中継)有価証券の評価②

財務会計の計算問題を実況中継していくマガジン
今回は前回に続いて有価証券に関する問題を実況中継してくよ。
では早速、問題を見ていこう。

問題

解説(実況中継)

今回は、損益を求める問題だ。
色々な種類の有価証券が含まれているから分かりにくい。
まずは、こんな感じで銘柄の横に保有区分をメモしておこう。

今回の問題は、上から順番に損益を計算してしまうのが手っ取り早い。
売買目的有価証券は切放処理だから、X2年度の期末時価又は売却価額と比較するのは、X1年度の期末時価となる。
だから、A社株式の損益は、+2,665(=79,365-76,70)となる。
同様に、B社株式の損益は、△2,142(=42,840-44,982)となる。

C社株式は、その他有価証券で当期に売却している。
その他有価証券だから、取得原価との差額が損益となるから、
C社株式の売却損益は、+6,006(=89,817-83,811)となる。
D社株式は、その他有価証券で全部純資産直入法だから評価損益は発生しない。配当金もその他資本剰余金の処分によるものだから損益にならない。

E社社債は、満期保有目的の債券だ。
償却原価法(利息法)だから、損益は、帳簿価額に実効利子率3.14%を乗じた金額となる。だから、2,977(=94,800×3.14%)だね。

これらの合計で、9,506が解答となる。
僕は解くときにこんな感じでメモをしたよ。

さらなる解説

売買目的有価証券の評価差額は、翌期において洗替処理又は切放処理のいずれもOK。損益に関する影響額として当然ながらどちらも同じ
例えば、A社株式に関する仕訳は次のようになる。(X2年度の損益は太字)
<洗替処理>
①X1年度期末
売買目的有価証券585/有価証券評価損益585
②X2年度期首
有価証券評価損益585/売買目的有価証券585
③X2年度期中(売却日)
現金預金79,365/有価証券76,115
         /有価証券売却益3,250
<切放処理>
①X1年度期末
有価証券100/有価証券評価損益100
②X2年度期首
仕訳なし
③X2年度期中(売却日)
現金79,365/有価証券76,700
       /有価証券売却益2,665
これを知っていれば、洗替処理でもX2年度の損益は、X1年度期末の時価と売却価額を比較すればいいことになるね。こういうことを見つけ出すのが普段の勉強だ。自分なりのミスの少ない方法、最速で解く方法を常に探求しよう。

その他有価証券の評価差額は、前回にも解説したね。
今回は、その他資本剰余金からの配当があるパターンだ。
配当原資がその他利益剰余金の場合は、受取配当金として処理して、
配当原資がその他資本剰余金の場合は、帳簿価額から減額する。
今回のその他資本剰余金の処分による配当金2,354は帳簿価額から減額されるから、損益には含まれないよ。
仕訳は次のようになる。
現金預金2,354/投資有価証券2,354
ちなみに、これが売買目的有価証券だった場合は、受取配当金 (売買目的有価証券運用損益)として計上するよ。
まとめると次のような表になる。

最後に、満期保有目的の債券であるE社社債の処理だ。
満期保有目的の債券で取得差額があるときは、償却原価法を適用するよ。
償却原価法とは、まず、利息の配分方法だということを意識しよう。
どのように配分するかで利息法と定額法がある。
原則が利息法で、容認が定額法だね。

⑴ 利息法とは、債券のクーポン受取総額と金利調整差額の合計額を債券の帳簿価額に対し一定率(以下「実効利子率」という。)となるように、複利をもって各期の純損益に配分する方法をいい、当該配分額とクーポン計上額(クーポンの現金受取額及びその既経過分の未収計上額の増減額の合計額)との差額を帳簿価額に加減する。
⑵ 定額法とは、債券の金利調整差額を取得日(又は受渡日)から償還日までの期間で除して各期の純損益に配分する方法をいい、当該配分額を帳簿価額に加減する。

利息法では、債券の帳簿価額に実効利子率をかけた金額が、債券のクーポン受取総額と金利調整差額の合計額となるように、実効利子率が決められている。
ようするに債券の帳簿価額に実効利子率をかけた金額が実質的な有価証券利息になるようにいい感じに実効利子率が決まっていると覚えておけばいい。

有価証券利息=債券の帳簿価額×実効利子率

今回の有価証券利息は、債券の帳簿価額94,800に実効利子率3.14%をかけた金額2,977となる。
債券のクーポンは、額面100,000にクーポン金利2%をかけた金額2,000となる。こっちは額面の方にかけるので、ごっちゃにならないように。
この差額977は、金利調整差額として債券の帳簿価額に加えるよ。
仕訳だと下のようになるよ。
投資有価証券977/有価証券利息2,977
現金預金2,000 
利息法の計算がすぐにピンとこない人は一度どんな風に実効金利を算出しているのかを研究してみるといい。あえて、ここでは書かないけどね。

まとめ(チェックポイント)

・売買目的有価証券の評価差額の処理(洗替処理と切放処理)のどこが違くてどこが同じか分かるか?
・その他資本剰余金、その他利益剰余金からの配当金の処理が分かるか?
 売買目的有価証券の場合は?
 その他有価証券の場合は?
・償却原価法(利息)の計算方法を理解しているか?
 有価証券利息は、なにに実効利子率を乗じる?
 クーポンは、なににクーポンレートを乗じる?
 金利調整額はどのように計算する?


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