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手紙

見て、この前買ったかわいい便箋。手紙なんて書く?意外と書くよ。へー、いつもだれに書いてるの?だれって、決まってはないけど。うーん。その時浮かんだ人かなあ。えー。俺まだもらったことないよ。そうだっけ?って、まだ出会ったばっかりじゃん。関係ないよ。はじめまして、のお手紙とか!絶対いらないでしょ。すぐに適当な場所で眠らせてる未来が見える。まあまあ、一回書いてみてよ。また気が向いたらね。でた、それ一生こないやつ。

真っ白な紙、緑一色の紙、色んな生き物の紙、ぜんぶぜんぶ、だれかを想って買った紙。今度あの人が荷物を取りに来ると聞いて、最近買ったばかりの透明の封筒とまるい月が描かれたポストカードを引っ張り出した。ペンはいつも1番細いやつ。机に向かった瞬間、言葉が溢れてきて、止まらない。太いペンだと書ききれない。母に送ったポストカード、片面では収まらず表の絵の横に文字を敷き詰めた。溢れる気持ちをペンにのせている瞬間。もしかしたら、この時のために、わたしは生きているのかもしれない。

電車、距離が近い男性。わざとではなく、距離感を掴めていない人。無意識のうちに立ち入られる、自分の不快な領域。勝手に好かれたり、嫌われたり、この人の毎日、大変そう。他人のことを想う暇があるなら自分のことを、と思うけれど、自分のことを考えれば考えるほど嫌なことばかり思い出してしまう。自分のことを考えるのに疲れて、他人に目を向けることにも疲れて、真っ暗な感情に自分が支配されていく。もっと、もっと、きれいな人間だったと思うんだけどな。

朝起きれなくて夜眠れなくなる。プレッシャーを感じるとお腹を下す。そういう病気になってしまった過去がある、と素直に伝えてくれた。病院に行って診断されてしまったら、就職活動に影響がありますか。って心配そうにしてた。大丈夫だよありがとう、って言いながら、これってわたしだよね、って言葉をグッと飲み込んだ。健康って難しい。わたしは病院に行かない。不調なんてずっとだ。ご飯を摂取するたび整腸剤が手放せなくて、おんなのこの日がちゃんとこなくて、下半身に不調が現れて、突然泣いて、ずっと眠っていて、起きられない。認める勇気がないから、ずっとずっと逃げている。逃げなかった、認めたあなたは偉いよ。わたしはずっと、平気なふりをして生きている。

だから、

わたしを奥深く知られることがこわい。隠していること、ちゃんとしていないわたし、見せたくないわたし、嫌われたくないわたし、普通ではないわたし、なんか、もう、いろんな消したいわたしが積み重なって、手遅れな負債がたくさん、ぜんぶぜんぶ、ひとりで抱えてなかったことにしたい、だれか一緒に背負ってください、はあんまり本心ではない、うーん、わからない、自分でもわからないわたしのことを、知られてしまうのが、こわい。

【孤独がつらければ孤高になればいいと思います】

孤独だ、と嘆いているわたしを、そうっと包み込んでくれた。ああ、わたしはまた、孤独だ、って言って、助けてほしかったんだ、って思った。そんなときに、わたしを大切にしたまま、必ず助けてくれるから、本当に、かなわないなあ。ありがとう。


「結局、さ。」
「ん、なに?」
「手紙を書くのって、その人のことを思い出したいから、なんだよ。手紙を書いている時間は、想うことを許される。これはただの、自己満足。だからわたしは、この時間が、とてつもなく愛おしい。」

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