見出し画像

バンドやってたんだ。

昔から作るという行為が好きだった。
小さい頃、ワクワクさんを見て、番組内容と全然関係ない工作をしている変な子供だった。

発明と題して掃除機に水を入れて再起不能にし、自分も母親に再起不能にされそうになった経験もある。

3歳頃の出来事だが割とちゃんと覚えているので相当怒られたんだと思う。


そんな僕が意識的に「何か」を作りだしたのはバンド活動だった。当時は高校2年生。
最初はドラムだった。何も考えずに叩いて叩いて叩いていた。
ある日、ボーカルがギターコードを組み合わせて曲を作ってきた。
よくわからない曲だったけどみんなでつくりレコーディングをした。
チームで何かを作り上げる体験はそこで初めてしたと思う。クオリティは置いていてとにかく楽しかった。

そこから1年が経った頃にたいして真面目にやって無かったバンドは受験勉強を理由に解散したのであった。(結局僕は推薦で大学を決め全然勉強せずハマっていた弓道をやっていた)

大学に入ってすぐ、中途半端に終えたバンドがやりたくてやりたくて仕方が無くなった。
今度は自分で曲を作りたいと思い、よくCDを買っていたレコードショップで中古のアコギを買った。
ドラムはあんまり叩けなかったけど、ギターはなぜかすぐ弾けるようになった。
何かをコピーするのが苦手だったのですぐにオリジナルソングを作った。
コード理論は一応勉強して、適当だけど歌詞も書いた。

自己満足だったけど本当に楽しかった。
自分で何かを作り始めてから誰かのコピーをすることの意味が初めてわかった。この頃からものを作って生きていきたいと思いはじめた。

1人で曲をつくるのも飽きてきたとき、同じ学科の子がギターケースを持ち登校してる事に気づいた。エフェクターケースに僕が好きだった地元バンドのステッカーを見つけすぐ意気投合した。

彼が言うにはバンドをやってるけどボーカルと仲が悪くなり、もうすぐ解散するという事だった。

バンドがやりたかった僕はすぐにアコギを持っていき大学の芝生広場でオリジナルの曲を聞いて貰った。彼の友人のドラマーも連れて来てくれた。
人に聞かせるのは初めてだったけど聞いてすぐに「一緒にバンドやろう」と言ってくれた。
凄く嬉しかったのを覚えている。


僕は曲をつくると言ってもそんなに技術はないからアコギでコード進行と歌詞を書いてバンドメンバーとセッションしながらそれぞれのパートを考えて貰う。
全体の構成もみんなで考えていた。

最高に楽しい時間だった。

1ヶ月に何曲も新しい曲をつくり、たくさんライブをした。CDを買ってくれる人もいればライブにいつも来てくれるお客さんもいた。サインをお願いされる事なんかもあった。(毎回同じサインは今も書けない)

誰かの一言に嬉しくなったり悲しくなったりした。  

大変なことも多かった。
バイトしてもスタジオ代とライブ代で常にお金はないし、遠征と題して地方に行ったりする事もあったがお金がないので基本は車移動。売り出し中のフェスなんかにも出てるインディーズバンドとたまに対バンするとレベルの違いに死にたくなったりした。音楽で生きていく覚悟も才能も足りないことがわかった。

もっと頑張らないともっと頑張らないと。が当時の口癖

大学の授業よりもライブだった。友達や彼女と遊ぶよりスタジオだった。

そんな折、中学生の頃から大好きだったバンドと奇跡的に対バン出来た時、音楽だけでは生活していけない話を聞いて音楽で生きていく事は僕には無理だと思った。

大学3年生の頃だった。趣味としてバンドを続ければよかったと今では思うけど、今よりずっと不器用だった当時はそれを選ぶ余裕がなかった。

僕以外のメンバーはバイトしてでもバンドを続けると言った。
僕はバンドを辞めて解散した。
10年経った今残念ながらメンバーはもうバンドをやってない。

それから何で生きていきたいか本気で考えるようになった。
ライブをするような派手さは無くて良いから「何かをつくりたい」と思って探した先に、すぐ近くに答えがあった。


あれから10年近く経った。
建築設計者として数年キャリアを積んだ僕は毎日何かしらのものをつくったり考えたりしながら生きていけている。

先日出張で行ったある地方でたまたま昔ライブしたことある箱の前を通った。

「このライブハウス、知らないかもしれないけどピロウズって有名なバンドがライブしたんだよー」
「えっ!?ピロウズ好きです!!凄いライブハウスですね!!」

別にピロウズと対バンした訳じゃないけどなんだか誇らしくなった。憧れたピロウズが昔と今をこんな形で繋いでくれるなんて思ってもなかった。

それでもこの箱でライブした話は恥ずかしいからしなかった。
久々に曲が作りたくなった。
これだけ音楽から離れてもそんな日か来るんだなぁって思ったんだ。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?