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「Web業界の当たり前」でリアルな製品を作る。TENTIALのものづくりの考え方

2019年に「TENTIAL」ブランドの第一弾となるインソールの販売を始めてから4年。現在TENTIALでは挑戦する方々の身体を充電するツールとして、50種類以上の商品を展開しています。

特に主力製品のリカバリーウェア「BAKUNE」シリーズは約2年で累計販売枚数が20万枚を突破し、多くの方に手にとっていただける製品になりました。今後もシリーズ初となるベビー向け製品や掛け布団など、新しい切り口の商品作りを続けていく計画です。

今回はそんなBAKUNEを含めた「TENTIAL流のものづくり」をテーマにnoteを書いてみたいと思います。

最近は「TENTIAL=BAKUNEの会社」として知っていただくことも増えてきているのですが、もともと僕たちはリアルな製品を開発・販売する会社として始まったわけではありません。

TENTIALの祖業は「スポシル」というスポーツ系のWebメディアです。創業から1年強は、完全にWebサービスの会社でした。

だからインソールの企画を始めた当初、僕たちは「Webサービスについては詳しいけれど、ものづくりや商品開発については何も知らない」チームでした。言わば、ものづくりに関しては素人の集団だったんです。

(現在も従業員の50%強がIT業界出身やWebサービスに携わった経験のあるメンバーでテクノロジーに明るいという特色は残っている反面、ものづくりや研究開発に専門性のあるメンバーが入社してきてくれるようになり、高い専門性あるチームになってきています)

小売業界での経験がなかったからこそ、自分たちのやり方でチャレンジし、試行錯誤を重ねてきたことが、今になってみれば「TENTIAL流のものづくり」の土台になっています。

まずは僕たちが最初の製品であるインソールを開発するまでのストーリーから紹介したいと思います。

Webサービスを作る際の考え方でリアルな製品を作る

小売業界やメーカーにおける当たり前を知らなかったがゆえに「Webサービスを作る際の考え方」に基づいてプロダクトを作ってきた

これがTENTIALの商品開発において、ものすごく大きなポイントになっています。

インソールを作り始めた時、僕たちが「ものづくりの知見」の代わりに持っていたのは、「Webサービスを成長させるための知見とその経験」でした。そこで培ってきた考え方が、リアルな商品を作る上でも拠り所になっていたのだと思います。

インソールを立ち上げた際の詳細は前回の記事にゆずりますが、インソールを作るきっかけになったのは、自社メディアの検索ワードでした。

スポシルを分析すると、検索エンジンで「足の悩み」を解決する方法を調べ、記事にたどり着いている人が多かったのです。

そこで接骨院の先生と連携して、LINEで足の不安を気軽に相談できるアカウントを立ち上げてみることに。すると特別なプロモーションなどを実施していないにも関わらず、コンスタントに1日数十件程度の相談が寄せられてきたのです。

LINEアカウントを運営しながら、リサーチを進めて行った結果として、足の悩みを抱えている人が一定数存在し、インソールがその課題の解決策になりうることがわかってきました。

自分たちにとっては初めての商品開発でしたが、ニーズがあることが定量的にもわかっていたからこそ、必要とされる機能性を備えた(ニーズを満たした)インソールを作ることさえできれば、かなりの確率で受け入れられるはず。

そのように自信を持った状態でスタートできたのです。

インソールを作る前から月間数十万PV規模のスポーツメディアを運営していたこともあり、分析結果などを見ながら「データドリブン」でサービスを開発したり、改善したりするという考え方が、社内に浸透していました。

データドリブン、デジタルを軸とした商品開発

この土台の部分は、現在50以上の製品を扱う上でも変わりません。

例えばTENTIALの1つの特徴として、ECサイトや商品・顧客分析システムなどをフルスクラッチで開発していたりします。

もちろん保守運用などの負担も考えると、絶対にフルスクラッチで開発するべきとは言えません。ただこれらのシステムによってサイトの運営を効率化するだけでなく、お客様の声やSNSのデータなどを効果的に収集し、新商品の開発や既存商品の改良にも活かせています。

特にTENTIALの場合はオンラインでの購入が全体の8割近くを占めるため、データを素早く集め、高速でPDCAを回せる仕組みが欠かせません。

こうした基盤を武器として、デジタルを軸に商品開発ができる体制は、TENTIALの強みになりました。

アスリートや専門家の知見をプロダクトに入れ込む

メディアの知見に加えて、インソールを開発する前からTENTIALが持っていた資産がもう1つあります。それがアスリートを中心とした専門家の方々との繋がりです。

もともとスポシルの特徴が「専門家が監修・解説した独自のスポーツコンテンツ」だったので、アスリートの方々と情報交換や連携ができる関係性がありました。

実はTENTIALの製品開発は、スポシル時代のアプローチと共通する部分があります。それは専門家の持つ知見やノウハウを、日常生活に落とし込んでいくという考え方です。

例えばインソールは、アスリート向けの高機能インソールなどを手がける開発パートナーと共同で開発をしています。同社のインソールはトップアスリートにも愛用されているほど、品質が高いものです。

製品開発にあたっては開発パートナーに協力いただきつつ、複数のアスリートとも連携しながら、試作品を改良し続けました。

アスリートの中には人並み以上にコンディションに気を配っている方が多いので、彼ら彼女らが納得できる品質であれば、必然的にビジネスパーソンの人たちにも喜んでもらえるものが作れるのではないか。そのような考えもあります。

データを活用しながら企画した商品を、専門家の方々のレビューを通じてブラッシュアップし、クラウドファンディングなどを通じたテストマーケティングでニーズを検証した上で、一気にオンライン販売をしていく。

こうした商品開発のプロセスは「ART」という形で整理しています。

なぜリカバリーウェアだったのか

現在TENTIALの主力製品となっているBAKUNEについても、大まかにはARMの流れに沿って開発をしています。

それまでにもインソールやマスクなどを作った経験はありましたが、「睡眠(SLEEP)」カテゴリの商品はBAKUNEが初めてでした。

睡眠カテゴリを選んだ理由はいくつかあります。1つは僕自身がもともと睡眠領域の製品を作りたかったから。

自分も含めたビジネスパーソンの1日の大部分は、「歩く(FOOT)」「寝る(SLEEP)」「働く(WORK)」時間によって構成されていると思います。だからそれぞれのシーンにおいて、人々のコンディションをサポートするような製品を作りたいと考えていました。

また、定量的にも睡眠の領域は面白いだろうと感じていました。

インソールの時と同様、自社メディアを調べていても睡眠に関連する記事にはトラフィックが集まっていましたし、検索ボリュームそのものが伸びている傾向にありました。

調査会社のデータでも「日本人の60%が睡眠課題を抱えている」といったものも存在するほど課題が大きく、市場規模自体の拡大も期待できる状況。「スリープテック」という市場が立ち上がり始め、スタートアップや大手企業が関連する取り組みを新たに始めていた状況も見られました。

睡眠領域の中でもリカバリーウェアを選んだのは、他の商品と比べてもこれから世の中に広がっていく可能性があると思ったからです。

マットレスや枕などの寝具と比べても、リカバリーウェアはまだまだ一部の人にしか浸透していないように感じていました。

近年は「予防医療」や「未病対策」の重要性が高まり、企業においても「健康経営」の取り組みが活発になりつつあります。リカバリーという概念そのものが、これからもっと広がっていくだろうという仮説を持っていました。

もちろん僕たちがBAKUNEを開発した時点ですでに複数社がリカバリーウェアを展開していましたが、市場を分類すると、意外とポジションが埋まっていない。そう考えたのです。

具体的にはビジネスパーソンに焦点を当てて、普段の疲労を軽減し、身体を充電するツールとして展開されているものはそこまで多くなかった。

アスリート向けに「パフォーマンスを向上させる」「身体を強くする」といったメッセージ性のものはいくつかありましたが、ビジネスパーソンを応援するようなコンセプトの製品は少ないと感じました。

そこでBAKUNEでは、30〜40代のビジネスパーソンを中心に「今頑張っている人」「挑戦している人」を支えるリカバリーウェアという切り口で、商品の開発を始めました。

「良い風が吹く場所」を選ぶ

起業とは崖から飛び降り、落ちるまでに飛行機を組み立てるようなもの

これはLinkedInの創業者であるリード・ホフマン氏が起業について説明した名言として、さまざまなシーンで引用されている言葉です。僕もどこで聞いたのかまでは覚えていないのですが、この考え方は印象に残っていました。

2018年からスタートアップを経営している身としても、この言葉は本当にその通りだなと思うのですが、自分たちの経験を踏まえて1つポイントを付け加えるとしたら「飛行機を組み立てる際に、良い風が吹いている場所を選ぶべき」ということです。

簡単に言えば「伸びている領域や市場」を選ぶということなのですが、BAKUNEはまさにその影響が大きかったと思います。

もちろん良い製品を作るために、パートナー企業や専門家の力も借りながら開発・改良に取り組んできました。でも、自分たちの実力だけで伸びたわけではありません。

良い風が吹いている領域で良いものを作る。伸びている市場や領域を選ぶことができれば、当たり前のことを積み重ねていくだけでも、事業が成長していくチャンスがあります

そしてTENTIALにおいては、自社メディアやECで蓄積された「データ」や定期的に情報交換ができる「専門家」の存在が、良い風が吹いている場所を見極める上で大きなヒントになりました。

「機能性」「権威性」「デザイン性」

実際に商品を企画・開発する際には「機能性」「権威性」「デザイン性」 という3つのポイントを重視しています。

需要がある領域で、機能性とデザイン性に優れた製品を開発すれば、様々な方に手に取っていただける可能性があります。

TENTIALの場合は、そうした流れの中で著名人やアスリート、経営者といった方々にも愛用いただいたことで権威性が備わり、より多くの人に活用してもらえるようになりました。

実際、BAKUNEが大きく成長したタイミングを振り返ると、著名人の方がマスメディアやSNSなどでBAKUNEに言及してくださったことが、起爆剤になりました。

そもそも機能性が乏しければ、誰にも使ってもらえません。また機能性に優れていても、デザインがあまりに悪ければ、やはり手に取ってもらえない。特にBAKUNEのような衣類はなおさらです。

BAKUNEは30〜40代のビジネスパーソンに手に取って欲しいと思ったので、そういった方々から「かっこ悪い」「着たくない」と思われるようなデザインは避けたいと考えていました。

また基本的には室内で着ることを想定した製品ではありますが、「近所のコンビニくらいであればそのまま行ける」ようなイメージで作っていたりもします。

実際、SNSなどの投稿を見ると、外出時にBAKUNEを着用している方もいらっしゃるようです。

機能性についてはパートナー企業の存在も大きいです。リカバリーウェアであれば繊維専門商社と共同で製品を開発しているといったように、各領域で品質の高い製品を作ってきた実績のある企業に協力いただいています。

その品質をベースとして、連携しているアスリートや専門家の方々の知見を掛け合わせながら、TENTIAL独自の製品を開発していくようなイメージです。

開発にあたってはプロトタイプを数パターン作りながら改良を重ね、テストマーケティングを経て本格的に販売をします。

当然ながら、一度作って終わりではなく、既存製品は継続してアップデートを続けていきます。この辺りはITスタートアップの文化が残っているというか、プロダクトは「永遠のベータ版」のような認識で、常に少しでも良いものに改良していきたいという考え方です。

TENTIALが「エビデンス」にこだわるわけ

また機能性については、もう1つこだわっているポイントがあります。それが「エビデンス(R&D)」です。

僕たちはTENTIALをアパレル企業ではなく、健康を届ける企業だと定義しています。

だからこそ、コンディショニングの研究や科学的エビデンスに基づく商品開発、人々の健康課題に対するアウトカム実証実験といったR&D活動は、事業の柱になるものだと位置付けています。

短期的な売上を考えれば、エビデンスに投資しているリソースをマーケティングなど別の活動に回した方が伸びるかもしれません。ただ中長期的にはエビデンスに本気で取り組むことが、TENTIALのブランドの価値をより高めていくことにつながるはずだと考えています。

エビデンスに関する考え方や取り組みについては、執行役員 Chief R&D Officer (CRO)の舟山がnoteを書いてくれているので、よろしければご覧ください!

健康課題、睡眠課題の解決策へのニーズはなくならない

現在TENTIALでは「歩く(FOOT)」「寝る(SLEEP)」「働く(WORK)」の3領域で50以上の製品を手がけていますが、挑戦する方々の身体を充電するツールという観点では、まだまだ足りない。もっと作りたい商品がたくさんあります。

BAKUNEシリーズに関しても、そうです。既存の方向性で商品を拡充していくのはもちろん、海外展開や企業との協業など新しい可能性も見えてきました。「良い風が吹いている」からこそ、伸びしろも事業機会もまだまだあります

特にBtoBの領域において、企業の方々とコラボレーションをしながら健康経営を推進していくような取り組みはニーズが高く、事業としても大きなポテンシャルを感じています。

TENTIALを経営していて改めて感じるのは、「健康課題」は大きな社会課題であり、その解決策へのニーズは今後も高まっていくということです。

特に「病気になる前段階から健康保持・増進を広めること」の重要性はさらに増していくと考えており、マーケット自体がこれから盛り上がっていくはず。そんな状況下で、TENTIALとしても引き続き大きなチャレンジをし続けていきたいと考えています。


最後までお読みいただき、ありがとうございます。TENTIALでは採用活動にも力を入れているので、TENTIALのものづくりや事業に少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ気軽にご連絡ください!

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