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パワーと丸の内

気づくと7月も半ばを過ぎ、独り寂しい大学デビューから早半年が経った。
相変わらず友達という友達はできない割に、学期末のグループワークやペアでのスピーキングテストなど人見知り殺しのイベントが永遠のように続く。

と、別にこんな話がしたいわけではない。

前回書いたように、6月下旬から念願の書店バイトが始まった。厳密にはブックカフェの、カフェ要素が圧倒的に強いバイトだが、楽天ポイントがつくことと社割があることに勝るものはない。

そんなバイト先のある丸の内を歩くことが多くなり、僕はこの街が好きで嫌いなことが分かった。

「丸の内」と聞きくと、空飛ぶタイヤで有名な某財閥系グループの元役員の方が、本社のことをそう呼んでいたことを思い出す。「霞ヶ関」が中央省庁を意味するのと同じようなことではないだろうか。

調べてみると、三菱グループの企業が丸の内に多くあり、「丸の内」がそれを意味することには歴史的な背景があった。なんとその昔、丸の内周辺地域は岩崎弥之助(三菱社)が国から払い下げを受けた草地であることに由来する。払い下げられる前は陸軍の兵舎などかあったという。その後、三菱社によって日本有数のオフィス街へと変貌した。

僕がこの街を好きにならないのは、権力の中枢を感じさせる景観と空気だ。

逆に、好きなところは圧倒的な権威を感じさせるところだ。

有数のオフィス街ということは、巨万の富を生む企業でなければそこに腰を落ち着かせることなどできない。すると、必然的に日本を代表する伝統企業が軒を連ねる。スケールはかなりダウンするが、日本のウォール街とも言えるのではないだろうか。近年ではようやく、旧来のやり方に危機感を覚える大企業らによってスタートアップの誘致やインキュベーションが行われるようになったものの、その勢いや空気は圧倒的に渋谷に負けるだろう。

アメリカの西海岸と東海岸に見られるような文化の違いがこの丸の内と渋谷にはあるように見える。

渋谷は近年、スタートアップが集う街として知られる。駅前には首を90度曲げてやっと見えるほど高いビルが3棟立つ。渋谷ヒカリエにはDeNAが本社を置き、Googleはオフィスを六本木ヒルズから渋谷ストリームへ移転し、35階建てのそのビルの14階から35階までを借り上げている。隈研吾の設計した渋谷スクランブルスクエアには、WeWorkやサイバーエージェントが入る。

丸の内と渋谷は伝統企業と新興企業の構図が見える。昔からの伝統と文化でその地位を確固たるものにする丸の内、新しい文化や価値観を取り入れながら発展し続ける渋谷。どうも丸の内という街の雰囲気は好きになれないが、そのおかげでバイト先のカフェスペースにはそれなりの人しか来ず、接客にもやりがいが出る。書店コーナーではビジネス書があまり売れないというし、面白い一面もこれからたくさん見ることになるだろう。

そのカフェには、どこから湧いてきたのか週末には若いカップルが国内の旅行雑誌を山積みにして読み漁っている姿を多く見る。女性がまるで若手起業家が投資家にピッチをするように、「ここに行こう」「これ可愛い」と熱弁する。ここまで2つの土地の関係性について書いてきたが、二人の人間の間にも他からは見えない「パワー」が働いているのだろうか。


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