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博士は教授にあらず

「博士ってことは、教授なんでしょ?」

今回のnoteは、とりとめないことを書きます。

先日知人と久々に会った際の出来事。私が博士号を取得したことについて、友人は開口一番、「博士ってことは、教授なんでしょ?」と言いました。「いやいや、教授ではない」と私が答えると、友人は「でも、どこか大学で教えてるんでしょ?」と言いました。

博士=教授という友人の理解は、欧米ではまっとうです。しかし、日本においては、両者はイコールであるとは言えせん。私は「教授」ではありません。ニュースウィークの以下記事では、この点に関して興味深い指摘が行われています。

この記事の筆者は、博士学位を持つ社会学者で、大学で「教授」経験がある人です。以下では筆者と呼びます。この記事で筆者は、博士号や教育・研究業績がなくても、大学教授になれるの日本特有の現状について書いています。

筆者は、欧米の大学のスタンダードは、博士号なしには大学教授どころか、大学教員にすらなれないが、日本ではそのスタンダードに「異端」の教授が多く存在すると指摘しています。筆者が指摘する「異端」とは、博士学位を持たずに採用された教員のことです。以下一文を引用します。

「異端」とは、博士学位(単位取得満期退学を含む)という大学院での学位取得をしないで、社会経験のみで大学の専任教員に採用された人のことで、いわゆる「社会人教授」(ないし、教授以下の教員)のことを意味している。

この記事の筆者は、博士学位を持たない、官僚・メディア・企業出身・作家・評論家等の「社会人教授」=「異端」が多く存在することを指摘しています。

筆者は、大学が、彼らのタレント的知名度による集客力を期待し、「教授」という称号を使い(言葉を極めて悪くすれば、餌にして)採用していることを批判し、この「異端」が多く採用され「正統」な博士学位を持つ人たちの採用が少ない、と苦言を呈しています。

念の為、筆者は、博士号取得が、大学教員としての「教授」の十分条件ではないと考えていることを強調しておきます。以下に引用します。

ここで1つお断りしたい。大学教授の要件として、必要条件は博士号の取得であるが、十分条件としては、大学教授に相応しい、教育業績・研究業績があるかどうかということである。こうした2つの条件を有している社会人教授が大学教授としての資格をもっている人といえるだろう。

博士は教授にあらず。そして、教授は博士にあらず。

いま、私は、このnoteを複雑な気持ちで書いています。私自身は、いま大学/大学院の教員をしていません。いまは、教員を目指したいという志向性はほとんどというより全くありません。

正直に言えば、以前はすごくありました。博士取得前後では、博士号を取得してその称号をおおいに活用するなら学校で研究を続けるべきだろうと考え、おそらく数十件の大学教員の求人に応募しました。

しかし、全滅でした。大学で教えた実績がなければ、教員として採用されにくいからです。採用する大学の立場からすれば、単に博士学位取得しただけでは、学生に教える能力がなければ教えられないだろう。という理屈だと思います。それはある程度理解できます。

私には20年におよぶ社会人向けの教育の実績があります。しかし、大学の教員採用時の申し込みフォームには、もっぱら、その実績をアピールできる欄がありません。書き込めることは、「大学で何時間教えた実績があるか」=教歴だけです。20年間社会人に教育を行ってきた経験よりも、大学卒業後、すぐに大学院の修士を取りそのまま教授の研究室に入って助教(あるいは講師)の仕事を始めた20代の人の方が、教歴が多いとみられるのです。もちろん、若いので使いやすいということもあるでしょう。

博士号は持っている、しかし、教歴がない人は、教員募集に対してエントリーしても、何のコネもない場合は特に不採用で、エントリーシートは無傷のまま戻ってきます。

こんなことを繰り返しているうち、私は「それでも、教員になりたいのか?」と考えるようになりました。私は、博士取得後、幸運にもそれが民間企業の経営者に評価され、長期のコンサル仕事ができるようになりました。それに伴い、教員になることへの個人的な魅力は、いまやほぼゼロになりました。

そんな折、冒頭の「博士ってことは、教授なんでしょ?」に遭遇しました。

ちなみに、いま大学教員の応募は「博士号取得が前提」となっている場合が多いようです。これは国の施策です。しかし、すでに述べたように、博士号を持っていても教歴がなければその人は学校から門前払いです。皮肉なことに、「異端」の教授から教歴がないことを理由に不採用を宣告されるのです。

先日、博士号を持っている先輩とお話しをさせていただいた際に、「博士号を持っていても教歴がない人は、どうやって実績を積めばよいのか?(できねーじゃねーかよ!)」という話題で盛り上がりました。その先輩は、100件位エントリーを行い、ようやく非常勤の教員として採用されたとのことでした。

日本において、「博士号取得者が大学教員に進む道は茨(イバラ)」であることは自明と言ってもよいでしょう。では、一般企業でキャリアを活用していくという道はどうでしょうか。

少し調べただけで、その道はさらに険しいことがわかります。博士号取得者「日本企業では冷遇」。博士しか相手にされない欧米、博士を必要としていない日本。このあたりについて語り始めると長くなりそうなので(笑)今回はこれで終わりにしておきます。

最後に

「博士ってことは、教授なんでしょ?」と言われたことをきっかけに、これまで考えていても言葉に出すことがなかった話題について触れてみようと思い、思うがままに好きなことを書きました。

念の為申し上げれば、今回のnoteは、いま現在大学教員である特定の方を批判したり、大学教員という仕事を否定する意図はまったくありません。魅力はゼロと書きましたが、博士学位取得後のなりゆきにより、私は、教員の道とは異なる道をいまは選んでいるということを示したいだけです。

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