リモートワーク再考

リモートワークから出社する形態に戻ってきたが、生産性が本当に上がるのか不安なところもあるだろう。本記事では、出社が必要な場面とそうでない場面を比較する。単位時間あたりの成果物の量、通勤時間や声をかけられることなどの面で、リモートワークと出社を比較し、それぞれのメリット・デメリットを明らかにする。また、出社によって得られる「引き出し」についても言及し、情報の交換が大事であることをソーシャル物理学の観点から解説する。最後には、組織目線ではなく、働き手の視点で考えた場合の出社のメリットについても触れる。

アフターコロナの出社ブーム

ニュースを読んでいると、リモートワークから出社する形態に戻る企業が増えてきた印象がある。

朝6時出社は特殊なケースかもしれないが、週に一定日数以上の出社を原則とする企業が出始めてきた。もちろん、NTTのようにリモートワークを推進する企業も残っているが、Googleとて完全リモートワークを原則として禁止する方針とのことだ。

生産性とは何かを振り返る

全ての企業の出社推進理由ではないが、多くの言い分として、生産性が挙がる。

企業において生産性は重要で、大きく考えると、一定の期間でどれだけの売り上げや利益が得られたか、と定義できる。個人単位で考えると、目標設定が適切であると仮定した場合、単位時間あたりにできる成果物の量になる。例えば報告書、議事録、提案資料。ただ、こういったものは、リモートでも十分に仕上がりそうだ。

出社するとどのような状況になるか

出社するとどうなるか。自分たちの1日を振り返ってみる。身支度を整え、出社前にどこかのカフェで仕事をして、電車に乗ってオフィスに行く。ちょっとした作業をした理、打ち合わせの連続だったり。作業中は声をかけられることもあるし、ついついダラダラと残業してしまったりするかもしれない。雑談でいつの間にか時間が過ぎてしまうことも。これだけ見ると、個人の作業という観点では生産性が高まっているかどうかは疑問が残る。

他の観点で、少し踏み込んで考えてみる。声をかけられるのはどうしてか。相談や雑談だったりするだろう。そこからは、新たなアイデアや発見、背景、仕事のネタが得られるかもしれない。通勤ではどうか。風景や状況から新たな発見があるかもしれない。これらの気づきは、短期的には成果にはならないだろう。しかし、着実に自分の引き出しに入れるべきネタになる。

ネタが転がっていたとしても、引き出しに情報を入れる能力がなければ意味はない。1日を振り返って、それがどのようなことだったのか、自分は何をすべきかを意識すれば、将来に何かがあれば引き出しから情報が取り出せるかもしれない。

また、雑談や相談の中で相手のパーソナリティだったり考え方が分かることもある。意思決定者であれば、どのような状況の中で何を意思決定しないといけないか、何を目標としているかが分かるかもしれない。このような理解は、「適切な目標設定」に伝わる可能性がある。

出社によるコミュニケーションが正しい思考の確率を上げるかもしれない


新たな発想というのは、一般にはほとんど得られない。ソーシャル物理学によると、ある一定のコミュニティにおける情報の交換量が大事だという。誰かの情報と自分の情報を組み合わせて自分の持っている概念を強化、刷新できる。その積み重ねで組織の持っている概念を強化、刷新しすることで、組織全体の生産力は高まるのかもしれない。

また、言語化の難しい「目標設定の理由や背景」を伝える機会にも繋がる。べき論では、目標は誰が見ても誤解なく適切に言語化され発信されて然るものだ。ただし、コミュニケーションというのは非常に難しい。伝える人と伝えられる人の背景は大きく異なる。部長と部下の立場は違うし、家庭環境も違うし、学歴だって選考だって違う。普段に目を通している情報も、コミュニケーションを取る相手も違う。このような状況下では、とにかく多くのコミュニケーション量を取るというのは一つの手段になる。

とはいえ、個人単位で物事は考えるべき


ただ、出社のメリットはそういった組織目線ではなく、働き手の目線で考えた方が良いのではと思う。組織の出力の源泉は人材なので、その人材を集めるためのメッセージを強く発信した方が組織にとってもメリットがある。

例えば、前述のメリットは携わっている仕事による。定型化された作業かつ、人間同士のコミュニケーションの割合が少ない業種ほど出社は適した選択にならない。そのような業種の人々に対しては、コミュニケーションによるウェルビーイングの価値を訴求した方が良いだろう。

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