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シンガポール、台湾、日本で暮らすミュージシャンが、福岡で出会い、共に暮らし、歩き、対話を重ねて生まれた音楽。 「Co-Write Day Fukuoka 2023」 コライト・キャンプトークセッション

2023年9月29日、30日に福岡市大名のROOMSで開催された「Co-Write Day Fukuoka 2023」。国内外のミュージシャンがLIVEを披露し、福岡の音楽ファンを心地良い音楽で満たした。

9月30日には、4日間のコライト・キャンプに参加した、YAØ(シンガポール)VUIZE(台湾)Ai KakihiraChocoholicらによるトークセッションが行われた。モデレーターはCo-Write Day主催者のNAMY、通訳をAnna Hataが担当。福岡市と糸島市でそれぞれ生活を共にしながら楽曲制作を行った4組のミュージシャンは、「とても新鮮で貴重な体験だった」と振り返った。


NAMY
初めて日本に来たVUIZEに、糸島の印象とコライトセッションの感想から聞いてみようかな。

VUIZE
魔法のようでした。初めての海外、初めての日本、初めての福岡は本当に本当に特別でした。
空港から長い長いドライブを経て糸島のゲストハウスに到着した時、空も、人も、空気も福岡市内のものとは全く違っていたので衝撃を受けました。ライフスタイルも市内とは違うんだなと思った一方で、糸島は、私が生まれ育った新埔鎮のようで、懐かしさと親しみも感じたんです。
私が糸島に抱いた気持ちは、今回作った楽曲で「ここに来たことはないけれど、まるで帰ってきたかのような気持ちになる」という歌詞にして表しました。本当に魔法のような、特別な体験ができました。

NAMY
わぁ。とても嬉しいですね。VUIZEとコライトしてくれたのが、Ai Kakihiraさん。Aiちゃんはどうですか、今の話を聞いて。

Ai Kakihira
私は英語があまり話せないので、VUIZEがわかりやすい単語と表現で話してくれたことを、感じ取る日々でした。なので、今、VUIZEの気持ちがしっかり理解できてすごく嬉しいです。

NAMY
そうですよね。言葉がうまく通じない中で、5日間共同生活を送りながらコライトセッションをしてもらったわけですが。どのように曲作りが進んでいったのか、どんなことを感じていたのか教えてください。

Ai Kakihira
糸島に来る前は、どんな生活になるのか、どんなふうに曲を作るのか全く想像できませんでした。
下地になるものがあるといいかなと考えて、デモを作って持ってきていたのですが、実際糸島に来て、糸島の空気を感じると「これは全然はまらない。一から作り直したい」と思っていたんです。VUIZEに相談したら「難しいことだけど挑戦してみよう」と言ってくれて。翌日から制作に取りかかろうと話して、その日は終えました。

次の日の朝、部屋から出てきたVUIZEが外の景色を見て、「わぁ!FKJのスタジオみたいだー!」と言って、ギターを弾き始めたんです。
彼がなんとなく弾き始めたフレーズがすごくその場所にはまっていて、「この曲を使いたい!」と思い、すぐにボイスレコーダーで演奏を録音しました。その演奏の中から自分が気に入ったコードをピックアップして、曲を膨らませていきました。

VUIZE
私も糸島に来るまで、どんなことをするのか全くイメージがわいていませんでした。でも、文化も言葉も違うからこそいろいろな感情が湧いてくるはずで、そうした感情を交換しながら曲を作っていくことについては全く心配していませんでした。

福岡空港でAiと会った時、言葉が通じないとわかって、少し不安になったし緊張もしました。言葉が通じなくてちょっと大変だなと思うこともありつつ、相手を理解しようとしたことで、Aiとのコライトは言葉を超える体験に繋がりました。
何気なく弾いたギターから制作が始まったのですが、その後一つ一つ丁寧に楽曲を作っていく作業は、言葉で言い表すのが難しいほど魔法のような体験でした。

NAMY
VUIZEは何度も「magical」と伝えてくれましたね。Aiちゃんはとても嬉しそうな顔で聞いていたけど、あれ、泣いてる?

Ai Kakihira
糸島でも、けっこう泣いているんですよ(笑)。

NAMY
僕も、Aiちゃんが夕日を見ながら泣いている姿を見ましたよ。VUIZEとAiちゃんが心のやり取りで音楽を作っていたのは知っていたけれど、彼が何を思っていたのかがわかって、僕も嬉しいです。
福岡市内でコライトをしてくれたYAØたちの話も聞かせてください。

YAØ
福岡は大都会だと知っていたので、シンガポールのようにすごく忙しい街だと想像していました。でも福岡は、良い意味で都会が持つ人を圧倒するような雰囲気がなくて、とてもリラックスした街でした。
私は都会が持つ早いペースについていけない時があるのですが、福岡はとても心地良く、快適に過ごすことができました。すごく親しみを感じる雰囲気と、人がとても親切だったのも印象的でした。

Chocoholicはbrb.(シンガポールのR&Bバンド)と仕事をしていたし、英語も堪能だったので、リラックスしてコミュニケーションをとることができました。Chocoholic、NAMYさんと出会えて、本当に幸せな体験になりました。

Chocoholic
私もYAØと出会えて嬉しいよ。
YAØの音楽は大好きだったので、今回一緒に曲を作ることができてとても嬉しかったです。私たちは、音楽性が近いこともあって、事前にSNSで会話をしている時から、お互いにやりたいことがはっきりしていたんです。
ただ、コライトって、音楽性が近くても実際にやってみないとわからないことが多いんですよね。相性もあるし、会ってみないとわからないよなぁという気持ちもありました。

でも、YAØと会ってみたら、お互いにやってみたいアイデアがたくさん出てきて、1日目はYAØのアイデアで、2日目は私のアイデアで、というふうにどんどん制作が進みました。気の合うコンビだったから、それを見極めたNAMYさんはすごい(笑)。

NAMY
ありがとうございますー(笑)。
Chocoちゃんが言っていたように、同じジャンルのアーティスト同士だったとしても、人間的な相性だったり、スピード感だったり、やっぱり合わないこともあります。コライトセッションは始めてみるまでわからないんですよね。
実は、VUIZEにも「もし僕とAiが合わなかったらどうしていたの?」と聞かれたんです。
その質問に対する僕の答えは、「That's Life.」でした。

せっかく来てくれたのに曲が作れなかったら、と考えると確かに怖いですよね。でも、しょうがない、とも思うんです。
曲が仕上がるかのか、僕もわからないしミュージシャンもわからない。誰にもわからないけど、それはそれで、一つの音楽の形だと思ってもらえたら嬉しいし、それを楽しめばいいなって思っているんです。
「That's Life.」でいるからこそ、生まれるものだってあるし、magicalな体験に繋がっていくかもしれない。
実際に、昨日のライブでYAØとChocoちゃんがコライトした曲を急遽発表してくれるといったミラクルも起きているんですよ。そういう体験をしたからこそ、これから「Co-Write Day」を続けていく上で「That's Life.」を大事にしていきたいと思っちゃいましたね。

YAØは、楽曲制作でどんなことを感じていたのかな?

YAØ
音楽制作は主体性と最初の一歩がとても大切だと感じているのですが、最初の一歩を踏み出すのは怖くもあります。Chocoholicとのコライトでは、いい曲が作れるという確信はありましたが、お互いに一歩を踏み出したところで不安もなくなり、とてもスムーズに制作を進めていくことができました。

シンガポールで曲を書いていると、ネガティブな感情を抱いたり、ついつい考えすぎてしまったりすることがあります。でも、福岡に来てから、ほっとできる雰囲気と親切な人たちが、私のポジティブな感情を引き出してくれました。
「穏やかである」という概念と、落ち着いた心をもたらしてくれて、音楽に対しても「考えすぎない」ことを教えてもらったんです。

その結果、たった2日で2曲も作ってしまいました! それは、コライトセッションでおこったとても特別な出来事だったと感じています。

NAMY
この短期間で2曲作ったのには、僕も驚きました。もっと聞きたいことはあるのですが、最後に、今までのコライトセッションと、このコライトキャンプでのセッションの体験で感じた違いなどがあれば聞いてみようかな。

VUIZE
私にとって音楽は、とても親密なもので、自分の部屋のようなものです。共作をするというのは、自分の部屋に相手を迎え入れることであり、相手の部屋に招き入れられるような感覚になります。それくらい親密で大切なものです。

今回のコライト・キャンプを通して、自分が共作するときに大切にしたいのは、相手を好きになる、相手を理解するということなのだと、より強く思いました。相手との関係が大切で、関係性が自分にも変化をもたらすことを知った、新鮮で貴重な体験になりました。

YAØ
私がシンガポールで体験したコラボレーションと、コライト・キャンプの一番の違いは「ペース」でした。シンガポールでコラボレーションする時は、とにかく早いんです。部屋に入るとプロデューサーがすでに待っていていて、すぐに曲作りが始まって、ポンポンとものすごい勢いで仕上げていく。曲を仕上げていくことに集中して進んでいくのですが、私にとってはちょっと「早すぎる」という感覚もありました。

今回は、Chocoholicと一緒にドン・キホーテに買い物に行ったり、スタジオの近くで猫を見つけたりする時間もあって、たくさん、ゆっくり会話ができました。絆を深め、信頼関係を築きながら楽曲を制作する体験は初めてでしたが、本当に楽しかったです。

NAMY
ミュージシャンがどんなふうに曲を作っているのか、コライト・キャンプの人間ドラマを、このトークセッションを通して知ってもらう機会になればいいなと思っていたのですが、想像以上に熱い話が聞けて、僕はもう汗だくです(笑)。

「Co-Write Day」では、ミュージシャンのトークセッションだけでなく、楽曲を広めるためのマーケティング、契約や法律についてなど、さまざまなことを伝える機会を作っていきたいと考えています。ミュージシャンにもお客さんにも、こうしたトークパートも楽しんでいただけたら嬉しいですね。

YAØ、VUIZE、Ai Kakihira、Chocoholic、ありがとう!
4組のミュージシャンが作った楽曲も配信予定ですので、楽しみにしていてください!

(取材・文)栗原京子コルクラボギルド
(写真撮影)D.(Daisuke Takanashi)

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お知らせ

Co-Write Dayと、クリエイティブ・ラボ・フクオカが主催する“クリエイティブ×エンターテインメント”体験イベントTHE CREATORSのコラボレーション企画が10/21(土)、22(日)と開催されます。

マレーシアのシンガー「Zee Avi (ジィ·アーヴィ) 」を招聘し、福岡のバンド「MuchaMuchaM(ムチャムチャム) 」とコライト(共同制作)で楽曲を制作します。滞在期間の中で、制作の過程からライブまでを披露します。
ぜひお越しください!

10/21(土)
14:00~16:00 公開コライトセッション
福岡アジア美術館アートカフェ
福岡市博多区下川端町3-1
リバレインセンタービル7・8階
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10/22(日)
17:30〜 ライブ
福岡市役所西側ふれあい広場
福岡市中央区天神1丁目8−1
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