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【AISTS #24】 19週目 スポーツにおける法的責任 - Liabilities in Sport (2020/2/24-3/1)

今週は、月曜日朝に社会学の筆記試験を受けて、その後はスポーツにおける法的責任(Liabilities in Sport)の講義でした。
金曜日は Snow Day で、クラスみんなで雪山に遊びに行きました。

スポーツ界は、各種イベントの延期や中止の判断と対応に追われて大変な状況ですね。
火曜日には、スイスでも初めてのコロナウイルス感染者が確認されました。
東京オリンピックの開催可否を筆頭に、こちらでも大きな関心ごとになっています。

社会学の筆記試験

まずは、筆記試験について簡単に。
AISTSでは、各分野の一連の講義が終わってから1週間空けて、月曜日朝に筆記試験、という流れが一般的です。

今回は、エッセイ2問、90分、持ち込み禁止、レポート用紙に手書き、でした。
階層化(社会階級、ジェンダー、人種)グローバリゼーションについての各3問から、それぞれ1つを選んで回答する形式でした。
講義の内容について書いた記事はこちらです。

僕の回答のポイントを簡単に書いておきます。

問:ジェンダーの違いによるスポーツへの参画と意味合い
・生物学的な違いがあり、競技性を担保するためにはジェンダーを区別することは避けられない(基準についての議論は不可欠)
・一方で、スポーツが持つ社会的な影響力の増大により、女性の社会参画の象徴となりうる
・競技レベルだけでなく、アスリートの持つストーリーの価値が上がり、スポーツへの投資の意味合いが変化する
問:スポーツとグローバリゼーションの関係(特定のスポーツを例に)
・サッカーを選択
・1800年代後半:大英帝国の勢力拡大に伴い、欧州諸国と植民地に伝播
・1900年代前半:英国の影響力低下、各国のナショナリズムとの結びつき
・第二次世界大戦後:第三世界の発展と世界的なスポーツへの進化
・現代:商業化の加速と社会的な影響力の拡大(例:ジェンダー平等)


スポーツにおける法的責任の講義

前回からしばらく間が空きましたが、法律の講義を受けました。
法律のモジュールは、断続的に1〜2週間の講義があり、4月頭に一発勝負の筆記試験があります。

スポーツにおける法的責任(Liabilities in Sport)のトピックは以下の通り。
トピックごとにポイントを整理していきますが、法律用語としての日本語の正確性には自信がないのでご容赦ください。

- Penal Responsibilities
- Liabilities for Damages in Sport Equipment and Infrastructure
- Sports Accidents and Liability for Damages
- Corporate Governance and Liabilities of Managers in Sport


Penal Responsibilities(刑事上の責任)

例えばサッカースタジアムで傷害があった場合、刑事上の責任を負う可能性があるのは、怪我をさせた人物、その試合を主催するクラブ、防ぐことができなかったセキュリティなどが考えられます。

- The person who committed the injury 
- The collective entity which organized the game
- The state, which police could not avoid the trouble

制裁(Sanction)は、個人(懲役、禁固、罰金等)と組織(罰金、押収、施設の閉鎖等)に対するものに分かれます。
主な制裁の目的は、処罰、更生、予防、賠償などが挙げられます。

スポーツイベントにおける予防の方法としては、監視強化(セキュリティ、カメラ)、会場デザイン(構造上の安全、ゾーニング)、規制強化(ブラックリスト、持ち込み禁止)、抑圧(刑事訴訟、制裁)、その他(試合時間の設定)など。


Liabilities for Damages in Sport Equipment and Infrastructure(損害賠償責任―製造物責任)

製造物責任(Product Liability)が問われるケースは大きく3つ。

- Negligence(過失)
- Breach of warranty(債務不履行)
- Strict liability(無過失責任・厳格責任)

特徴的なのは Strict liability(無過失責任・厳格責任)です。
一定の責任については、過失が無くても責任が認められるというものです。
原告は相手の過失を立証する必要がなく、被害者を保護する趣旨です。
よく例として出されるのは、アメリカで熱いコーヒーをこぼしてやけどした場合の店側の責任などですね。
スポーツの場合は、例えばスキー滑降での事故による負傷で、スキーメーカーが責任を負うべきか、という議論が起こり得ます。

また、Breach of warranty(債務不履行)はあくまで契約上の問題であって、訴える人も訴えられる人も契約当事者のみが対象となります。


Sports Accidents and Liability for Damages(損害賠償責任―事故)

不法行為(Tort)を立証するためには、4つのポイントがあります。
①違法に ②故意または過失により ③損害を与え ④因果関係が認められること、です。

“Whoever unlawfully causes loss or damages to another, whether intentionally or negligently, is obliged to pay compensation”
(Article 41 of the Swiss Code of obligations より抜粋)

責任が問われないケースの一つが Force majeure(不可抗力)です。
自然災害や、コロナウィルスのような感染症もこれにあたります。
スポーツ大会の開催に関する契約には必ずこの条項が入っています。


Corporate Governance and Liabilities of Managers in Sport(コーポレートガバナンス)

基礎的な内容の講義の後、数人の学生が関連する事例をプレゼンして、それに関する議論をする形式でした。
スポーツにおいては、経済的な目標と競技における目標のバランスを取ることが重要で、ステークホルダーのニーズを踏まえて、その実現のための体制を整備することが求められます。

学生からのプレゼンでは、インドで2つのサッカーリーグ(ISLとIリーグ)が存在する問題など、興味深いものもありましたが、コーポレートガバナンスから外れた話題も多かった印象です。
サッカー協会傘下で運営されるフットサル連盟の話をしてみればよかったと今更ながら後悔しています。
いまだに、行動する前にいろいろと考えてしまう癖が抜けません。反省。


Snow Day

金曜日はクラスみんなで Crans-Montana というスキーリゾートに行ってきました。ローザンヌからバスで2時間くらいです。
頂上の標高は3,000m以上、最高の天気と目の前に広がる氷河は圧巻でした。

午後は1時間くらいスノーシューで歩いて、スイスワインとチーズフォンデュを堪能。スイスらしい体験をした一日でした。

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チームプロジェクトのチームメイトとの一枚)


来週の予定

来週はまた社会学の講義に戻ります。テーマは Sport in Consumer Culture。
金曜日にはグループプレゼンがあります。
週末はスペインのマラガにスペイン杯を観に行く予定ですが、コロナウイルスの状況を見ながら決めようと思います。

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