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【AISTS #25】 20週目 社会学の講義とフットサル Copa de España の衝撃 (2020/3/2-8)

今週は社会学 Sport in Consumer Culture の講義を受けて、金曜日にグループでプレゼンでした。
あと、卒業論文の研究計画の提出があったので、その準備を進めていました。
週末はフットサルの Copa de España を観にマラガへ。想像以上の盛り上がりに衝撃を受けました。

社会学の講義 Sport in Consumer Culture

社会学の観点から、消費の対象としてのスポーツを理解するための講義です。
以下のトピックを通して、消費者はスポーツに何を求めていて、それはどのような社会理論で説明されるかを学びます。

- Consumer Culture and Sport
- Sport and Consumption: Concepts and Theories
- The Sport Consumer: Identity and Leisure
- Lifestyle Sport and the Quest for Authenticity
- Case Study of Consumer Sport: Fitness
- Sport and Commodification

詳細は書ききれないので割愛しますが、キーワードとしては、

- Symbolic Creativity, Extended Self, Taste and Distinction
- Identity, Casual/Serious Leisure
- Lifestyle, Authenticity, Flow
- Social Order, Cultural Construction
- Commodification, Alternatives

といったところです。

グループプレゼン

6〜7人のグループで、社会学の観点から、新興スポーツの競技人口増加のための戦略を立案する、というものでした。
僕らのグループは、BMXの女性人口増加をテーマにプレゼンしました。
着目したのは Lyng によって提唱された "Edgework" という概念です。

Edgework:  voluntary participation in dangerous leisure activities requiring skills (Mascini 2015)

「自らリスクを冒して取り組む、スキルが必要な余暇活動」といったところでしょうか。

BMXの競技人口は大きく男性に偏っています(スイスの登録人数は 男:女=9:1)。
BMX参加者(ほぼ男性)に対する調査では、「理屈ではなく楽しいから」「非日常のスリルを味わえるから」といった動機が多く挙げられています。
日常の "Iron cage" からの脱却を求め、論理的な理由付け Rationalization を嫌います。

一方で、女性は男性に比べて(単純に)リスクを取ろうとせず、リスクを冒すことによって得られるであろう結果や利益を重視して判断する傾向が強い、という研究があります。Rationalization が必要なわけですね。そのため、女性に対しては男性とは異なる訴求の仕方が必要で、参加することの対価を示すことが求められます。
身体コントロールやバランスの向上といった身体面の効果や、男性主体コミュニティにおける女性のエンパワーメントといった社会的な影響を例として挙げました。

一つの理論に拠って単純化した話ではありますが、社会学の理論をスポーツに適用して考えることがポイントで、その点では求められていたプレゼンにはなっていたかなと思います。
個人的には、そういうアプローチをした先に起こりうる、既存男性ライダーからの反発やオリンピック種目化の影響など、もっと掘り下げてみたいテーマでしたが、時間的な制約もありそこまでは踏み込めませんでした。

卒業論文の研究計画

これは改めて詳しく書こうと思っていますが、フットサルの統括団体について、主に組織形態の観点からあるべき姿を探っていく予定です。
具体的には、フットサルは今後もサッカー協会の傘下にあるべきか、という問いです。

例えばスペインでは、リーグ戦(LNFS)は独立した組織で運営していますが、代表の活動や一部のカップ戦は連盟(RFEF)の管轄です。
日本では、日本サッカー協会傘下に日本フットサル連盟があり、そこがFリーグを運営しています。
フットサル連盟がなく、サッカー協会が直接フットサルリーグを運営する国も多いです。

サッカー協会のリソースのおかげで成り立っている部分が大きいわけですが、このままでは「サッカー選手の育成のためにフットサルをやっておくといいよね」くらいの位置付けから抜け出せないと思っています。
子どもたちがフットサル選手を目指すような世界にするには何が必要か、考えていきます。

Copa de España de Fútbol Sala(スペイン杯)

週末は、マラガで開催されたフットサルのスペイン杯 Copa de España de Fútbol Sala を観に行ってきました。
リーグ戦上位の8チームがトーナメントで優勝を決めるこの大会。毎年の盛り上がりを見て、今年こそはと思っていました。

土曜日、準決勝1試合目の途中で到着すると、いきなり異様な雰囲気に圧倒されました。
バルデペニャス Valdepeñas というチームがリーグ戦1位のインテルに対して1-1の同点。そしてそのサポーターが熱狂的で、アリーナは完全にバルデペニャスの空気でした。
一度は勝ち越しを許すものの、逆転して最後のパワープレーを凌いで3-2で勝利。完全に虜になりました。
ぜひ以下の動画をご覧ください。逆転ゴールの直後の様子です。

準決勝のもう1試合は バルサ 3-2 エルポソ。
試合としてはめちゃくちゃレベルが高くて面白かったですが、観戦体験としては1試合目が強烈でした。

そして迎えた日曜日の決勝戦。バルデペニャス vs バルサ。
試合前からバルデペニャスサポーターは圧倒的な熱量。選手のバスを発煙筒と大声援で迎えます。

試合は、バルデペニャスが健闘するも、バルサの層の厚さの前に最後は力及ばず、4-3でバルサが2連覇を果たしました。

昨年12月に観戦したリーグ戦とはまた違うレベルの熱狂があり、フットサルの持つ力を改めて感じることができました。

印象に残ったのは、隣に座ったバルデペニャスのおじさんの「おれたちにはこれしかないからね」という一言。フットサルクラブが街のアイデンティティになっています。
スペイン王者をかけてバルサと戦うようなことは、サッカーではあり得ない。これがフットサルの一つのあり方なんだろうと思います。

国単位でも、東欧が西欧のサッカー強豪国に勝つ、アジアが欧州/南米に勝つ、そういった余白が比較的残ってるスポーツです。
アジアの中では、タイ、ベトナム、インドネシアが日本に勝つ、これはもう現実的な話です。
スペインの凄さを体感した一方で、やり方次第でまだまだ変わる世界だと思っています。

試合は夕方からだったので、日中はマラガ旧市街と郊外のロンダを散策しました。最高の天気のもと、観光も存分に楽しんできました。


来週の予定

前半が法律の分野で紛争解決 Settlement of Conflict in Sport の講義、後半は Leadership Development の講義です。
あとは、社会学の講義を踏まえて、週明け月曜日締切の軽めのレポートが一本。
ちょっとゆったりな一週間になりそうです。

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