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コミュニケーションについて

先日、2年半ぶりに会った友人の家に泊まらせてもらった。
その友人は結婚4度目で今の旦那さんと結婚してから4年。旦那さんとの関係で、下ネタ以外で夫婦のコミュニケーションがない、という悩みを話してくれた。それも子供が言うような、お〇〇ちんや、う〇〇など、友人が「えー(苦笑)」と嫌そうな顔で反応すると嬉しそうにしているとのこと。旦那さんは自分のことを永遠の小学3年生と言っていたそうな。
「以前、心理学系の本を読んだときに、下ネタばかり言うのって、他にする話題がないときって載っててん。」と少し寂しそうに友人が言った。
旦那さんの趣味は、ウインドサーフィン、サイクリング、釣り、とアウトドアなもの。一方友人はアウトドアには興味がなく、スピリチュアルや占い、心理のことを学ぶのが好き。全く合う話題がない。
世の中には趣味が全く合わない夫婦はたくさんいるし、必ずしも共通の話題がないと会話が成り立たないことはない。
友人に「じゃあ、〇〇さんから他の話題をふることはあるん?」と尋ねたところ、ハッとなり「話す話題がないのは私の方やったわ・・・。」と愕然としていた。旦那さんが好きそうな話題をふることもなく、会話がないのは旦那さんのせいと決めつけていたけど、自分の興味のあるもの以外はシャットアウトし、会話をしようと努力していなかったのは私の方やったね、と気付いてショックを受けていた。

そしてこの日の出来事を思い出していたときに、ふと父のことが思い浮かんだ。
私がまだ実家から大阪市内の会社に通っていたとき、いつも最寄り駅まで車で送迎をしてくれていた。車内で父が私に話しかけてくる内容が「JRの踏切の遮断機はいつも早く降ろしすぎや」とか「税金が高い」とか愚痴や文句が多くて、内心またか、と嫌な気持ちになっていた。私も私で受け流して聞いたらいいのに「そんなこと言ったって仕方ないやん。」といちいち反論していた。ある日父が「何でお前はいつも口答えばっかりで、『そうやねお父さん』ってなんで言われへんねん!」と怒鳴られたことがあった。
それに対して何も言い返せなかったけど、モヤモヤしたものが残った。

友人と旦那さんの間のコミュニケーションを思い出し、ひょっとすると、父も愚痴や文句以外で私とどうやってコミュニケーションを取ったらいいのかわからなかったのではないか、と思った。
父は、九州の大分県出身で、父の父(祖父)が亡くなったのをきっかけに、高校を中退し、大阪に働きに出てきた。そこで徳島から大阪に働きに出てきていた母と出会った。
トラックやトレーラーの運転手をして、家族のために働いた。
人との距離の取り方やコミュニケーションの取り方が下手で、友人と呼べるような人はほとんど居なくて、家に帰ってから晩酌をしながら、野球中継を観るのが楽しみな人だった。機嫌が悪くなると、怒鳴ったり、物に当たったり、暴力をふるったり、そんな父を恐れていたし、どこかで軽蔑もしていた。
私がまだ若い頃、父が家族に向かって「誰のおかげで飯が食えると思ってるんや!」と怒鳴るのを聞いて、なんて心の狭い人間だろうと軽蔑していた。

一人暮らしをするようになって、ここ1年くらい、朝目覚めるときに、ふと声が上がってきていた。
「馬鹿にしやがって!」という言葉。この言葉は何だろう?と思っていた。私の心の声なのか。しかし2か月ほど前、これは父の声なのかもしれない、と思った。
突然怒り出して、怒鳴ることが多かった父。
他の家のお父さんみたいに、穏やかで悩み事を聞いてくれて、人付き合いも上手くて、そんなお父さんが欲しいと思っていたこともあった。

しかし、今日洗い物をしているときに気が付いた。
「これは私だ」と。

偏屈で、劣等感の塊で、上手く人と付き合えなくて、コミュニケーションを取るのが下手で、被害者意識が強い自分。

もうすぐ86歳の誕生日を迎える、要介護で認知症も進んでいる父。
最近こちらが話す内容を理解してくれているのか怪しいときがある。
心の中で、お父さん、ごめんね。貴方は私の一部です、と思ったら
涙が止まらなくなった。
まだ生きていてくれるので、会って話をしようと思った。











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