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鏃のとがり具合

やじり【矢尻・鏃】
①矢柄(やがら)の先端に挿し込んで、射あてたとき突き刺すための武器。鉄製。縄文・弥生時代には石・骨・銅などを用いた。やさき。やのね。根。矢鏃。
②矢を射あてる技量。射術。

広辞苑 第七版

「生年月日と生まれた時間帯を教えてください」

久しぶりに会うなりそう尋ねられた。それは一応仕事のミーティングであったし、その方とはじめて会ったのも仕事を通してだった。

私はその情報を伝えると、彼女はスマートフォンのアプリにそれを入力し、少し考えてこう告げた。

「なるほど…それだけ移動しているから、人が理由なのかと思ったら、全部自分の中で完結しているのですね」

彼女によると、移動が多い私は、その理由や行き先が他人によって決められるわけではなく、全て私が行きたい、行くべきだ、という、私の意思のみによって決定されている、とのこと。

確かにそうかもしれない。それゆえなのかはわからないが、私は「フットワークが軽い」と評価されることが多い。そういえば彼女にはじめて会った4年前も、この人には会っておいた方がいいと思い、わざわざ福岡まで押しかけてのことだった。


改めてブランドのことやマーケットの概況について尋ねられたので、それについて回答していると、話はだんだんと昨今の日本のフレグランマーケットやブランドのあり方に関する私の考え、主には不満になっていった。きっと私は熱っぽく語っていたのだろう。私は私なりに、あれこれ思うところがあるのだ。

後ろの予定が詰まっていたので、彼女とのミーティングは1時間半弱だったが、本当であればもっと話せることはたくさんあったし、彼女の側もきっとそうだったと思う。

まだまだ話し足りないと双方思いながらも、そろそろお開きにしようという流れになったちょうどその頃、彼女がこんなことをいった。

「より一層、鏃が尖ってきましたね」

彼女と最初に会った4年前に比べて、私は丸くなったどころか、より“尖ってきている”という主旨での発言だったようだ。彼女はそれを、ポジティブなニュアンスで口にしたようだが、実際のところそれが本当にいいことなのかはよくわからない。

だいたいにおいて人というのは、時間が経つとどうあれ丸くなるものだろう。私はブランドを運営する中でより尖ってきているという自覚は特になかったので、少々驚いた。少なくとも、尖りたい、攻撃的、好戦的になろう、という気持ちは今も昔も一切ない。私はただ、私の思うまま感じるままに、ただ角が立ちすぎないように、考えていることを話しているだけだった。

ただ、彼女に言われたことが全くもって思い当たる節がないわけではなかった。4年間のブランド運営に加えて、4年間noteに私の考えを書き連ね続けたこともあり、私の考えが以前にも増して明確なものとなっている可能性は大いにある。そして私自身がそれを解像度高く認識できているが故に、それをより明瞭に口にできるようになったし、より自信を持って発信しているのかもしれない。その部分を彼女が「鏃が尖ってきた」と感じたのだろう。


広辞苑で「鏃」という言葉を改めて調べてみると、この記事の冒頭の結果を得た。①の意味しか知らなかったが、実は②の「矢を射あてる技量」というのも鏃の意味するところだった。


私はただ鏃の形ばかりを尖らせていないだろうか。どんなに鋭い鏃でも、それを適切な箇所にきちんと放り投げられなければ意味がないだろう。

彼女のいう「鏃」が、ただその穂先の尖具合のみを指しているのではなく、私の矢のコントロールについてもポジティブな評価をしていてくれていたとするならば、私はとても嬉しく思う。


それにしても…そんなに尖ってるのかな、私…


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