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熊手を納め、財布を買う
仙台三越で開催中の「サロンドパルファン2024」を抜け出して、昨日今日と東京にいたのは、当然仕事の用事があったからではあるのだが、それ以外にもうひとつ重要な目的があった。
「酉の市」だ。
3週間ほど前にこんな記事を書いた。
以下記事の一部を引用する。
日本で会社を立ち上げてからは、毎年新宿の花園神社で熊手を購入した。3年前、とある出店で見た、中央にはめ込まれたおかめをしめ縄でぐるりと取り囲み、その周りに稲穂やら俵やら小判やらで装飾を施したもの買ったのを皮切りに、同じようなデザインで前年よりも一回りほど大きくした熊手を手にするようにしていた。購入時に火打石で散らしてくれる火花を感じながら、また来年は一回り大きな熊手に相応しい会社にしよう、と誓っていた
それが今年は気持ちが変わってしまった。酉の市で昨年購入した熊手を奉納したら、それでおしまいにして、新しいものは買わずにいよう、と思っているのだ。
それは、場所を取る大きな熊手を小さなオフィスに飾っておくことが些か不釣り合いであると感じているのと同じように、私の中で会社を大きくすることに強い疑問を抱いているからだ。このnoteではしばしば書いているが、私が正しいと信じていることをやろうとするにあたって、組織や売上を拡大することは必ずしも正解ではないように感じている。
熊手によって「来年は今年よりも大きくしたい」と願うのは、今の私にとってはきっと足枷になってしまう。それなら私はあえて熊手を手放すことによって、その足枷から自分を解き放とう、と思ったのだ。信心深い私にとっては小さくない決断だった。
こんな記事を書いたものの、この3週間、熊手を見るたびに本当に今年は買わないべきか、やはり購入した方がいいのではないか、などと逡巡していた。習慣というのは恐ろしいもので、数年続けていた熊手の購入をやめることで、なにか悪いことが起こるような気がする、という些細な恐怖が私の心の片隅に巣食っていた。
加えて、この1年をともにした熊手との別れもどこか寂しかった。中央におかめの顔がはめ込まれた熊手であるから余計にそう感じたのかもしれない。あまりいいことではないのだろうが、このまま1年同じ熊手と過ごす、というのも一応選択肢に加えてみたりもした。
そんなこんなであれこれ考えてみたが、結局初志貫徹で私は熊手を納め、今年は買わないことを決断した。今日の午後早い時間に仕事を終え、そのまま新宿の花園神社に向かった。ひとりだと心細いので友人についてきてもらった。
3時ごろにタクシーで向かった。新宿四丁目の交差点から明治通りにかけてひどく渋滞していた。まるで私の気持ちを押し留めようとしているかのようだった。
花園神社から少しだけ離れたところで友人と待ち合わせをし神社へと向かった。鳥居をくぐると、ただでさえ細い参道は屋台がひしめいていたことでさらに細くなり、そこを数多の人々が縫うように歩いていた。私たちもその流れに乗り、ゆっくりと前進した。
熊手を納める場所には小さな列ができていた。私たちの目の前には立派な熊手を持った男性4人組がいた。きっと彼らはこれからさらに大きな熊手を買うことだろう。
私たちの順番になった。熊手納め所の入り口にはひとりの男性がいた。熊手を渡すと、その男性は熊手を適当なところに放り投げた。その後彼は私たちに向き直り、私たちは「ありがとうございました」を言い合って別れた。
あっけなく終わった。迷う隙は刹那も与えられなかった。
これでよかったのだろうか。
その足で友人と財布を買いに行った。数日前ふと、前から気になっていた財布を購入しようと思い立ったのだ。今使っている財布の「小銭が取り出しにくい」という欠点を解消してくれそうなものだったというのが大きな決め手になった。
調べてみると今日11月29日は「一粒万倍日」と「母倉日」が重なっている縁起のいい日取りらしい。あえてその日を選んだわけではなく、たまたまその日がそういった縁起だったというところに、逆に何かの因果を感じずにはいられなかった。
何かいいことが起こるのだろうか。何か変わるのだろうか。
よくわからないが、きっと、これでよかったのだろう。
さて、明日から来週火曜日まで、仙台三越の「サロンドパルファン2024」の店頭に戻る。熊手を手放し新しい財布を手に入れた私は、もしかしたらどこか変わったかもしれない。あるいは、何も変わっていないかもしれない。
いずれにしても、今年最後の「サロンドパルファン」になる。大変だった1年が、もう少しで終わりを迎える。色々あった。とても辛かった。
そんな中改めて、店頭に立つのが好きだと思った。明日からの4日間、楽しく過ごそうと思う。
ということで、ぜひ来てね。待ってます。
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