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7年前の今日

2015年9月15日、3年半働いた金融業界を離れ、どんな未来が待っているか全く予想ができぬまま、フランスの地に降り立った。今思い返しても、その時に私が持っていた「希望」と呼べるようなものの量は微々たるものだった。不安に苛まれていたと思う。

フランス語を習得するところから始まって、紆余曲折あってパリの大学院に入り、そこからまたさらなる紆余曲折の末、çanomaを立ち上げるに至る。

フランスに移住した当初は、その5年後に自分のフレグランスブランドを立ち上げるなんて夢にも思っていなかった。


昨年末あたりに、居住を日本に移した。フランスには6年ちょっと住んだことになる。ただ、パリのアパートは借りたままにしていて、今は東京とパリを行ったり来たり。


パリが好きか、と聞かれると、正直困る。良いことも悪いことも、あれこれあった。もちろん、パリに行ったから、今こうして香りを作ることを生業にできている。日本ではできなかったことだろうし、もし仮にできていたとしても、今のクオリティは出せなかったはずだ。

一方で、大小様々な矛盾や理不尽も、しっかり心に刻まれている。幾度となくそういったものに振り回され、その度にその矛盾や理不尽を生んでいる大元と自分自身の無力さに腹が立った。「今となっては笑い話」というには、それらの量は多すぎる。


ヘミングウェイは『移動祝祭日』の中でこのように書いている。

もし、きみが、幸運にも、青年時代にパリに住んだとすれば、きみが残りの人生をどこで過ごそうとも、それはきみについてまわる。なぜなら、パリは移動祝祭日だからだ

アーネスト・ヘミングウェイ『移動祝祭日』(福田陸太郎訳)

だいぶ前、フランス語に翻訳されたこの本を読んだが、パリが移動祝祭日である理由は結局最後までよくわからなかった。いつかわかる日が来るのかもしれないが、今のところは「わかってたまるか!」と叫びたい気持ちが強い。


もちろん、パリで楽しみなこともあるが、パリに行く一番の理由は、パリでしか手に入らない、必要なものがある、ということ。来週末からまたちょっとだけその「必要」のためにパリに戻るが、7年前の「始まり」のことを考えると、だいぶ遠くまで来れたことが、少しだけ感慨深く思える。

そんな気持ちが、パリを少しだけ好きにさせてくれる。


パリとの適度な距離が生まれた今、改めてパリを楽しんでみようと思う。

楽しいといいな…


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