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アントワープで感じたこと

レンヌからパリに帰る電車の中で、ふと思い立ってアントワープへの旅行を予約した。直前に取ったので多少電車賃が高かったが、それでも許容範囲内だった。


パリからはユーロスターで2時間。パリ北駅を出て、10時半ごろにアントワープに着いた。ホテルに荷物を預け、地下鉄やトラムの乗り放題チケットを買い、腹ごしらえをしてから、まずはモード美術館に行った。Willy Vanderperreという写真家の特別展が大変よかった。

その後は今回のお目当てのひとつ、Atelier Solarshopに足を運んだ。Jan Jan Van Esscheというブランドのフラッグシップストアでありながら、一部セレクトされた商品も置いている。

店頭にいたのはJan Jan Van Esscheの共同設立者であるPietroだった。彼とは何度か顔を合わせたことがあり、すでに親しい仲だった。

「Antwerp Art Weekendのために来たの?」と尋ねられたが、なんのことか分からなかった。問い返すと、アントワープのクリエイターブランドがアーカイブセールをやるというイベントが、この街全体で行われているとのことだった。Atelier Solarshopもこのイベントに参加しており、店内の一角にアーカイブセールコーナーがあった。そこに置かれている商品は、私が知っている通常のブランドの値段の半分以下になっていた。

いくつか商品を選んだ後、Pietroと世間話をあれこれをとした。話は尽きず、もし空いてたら夜ご飯を一緒に、と誘ってもらった。特に何も予定していなかったので、もちろん、と返事をして店を後にした。


PietroにもらったAntwerp Art Weekendの地図を手に、いくつかのセール会場を回った。日曜日だったこともあり、開いているお店の数は限られていたが、Ann Demeulemeesterで素敵なコートを見つけて購入した。最終日だったからだろうか、値札に記載されている値段からさらに40%近く安くなった。これらの買い物で、私は今回の旅費を、かなりのお釣りとともに“取り返した”ことになる。もちろん、実際に商品を買ったのでお金を払ったことには変わりないのだが。


夜はPietroとお店近くのカフェビストロで食事をした。デザイナーのJan Janは残念ながら別の用事で来れなかった。

アントワープでの暮らしが主な話題になった。家賃は安いし、人々は基本的に優しい、アートを受け入れる土壌もあり、とても暮らしやすいとのことだった。

そういえば、街を歩いていたら何度も地元の人から声をかけられた。Antwerp Design Weekendに関すること、私のその日のコーディネート、持っていたニコンのカメラなど、様々なことにかこつけて呼び止められたのだ。

「アントワープの人は、他の都市の人に比べてフレンドリーだと思う」と口にしたところ、「そりゃパリと比べたらね。ただ、優しいフリをしているだけのことがあるから、気をつけてね」といわれた。


Pietroの体調が芳しくなかったこともあり、早めにお別れをして、私はホテルに向かった。帰り道、今年訪れたいくつかのヨーロッパの都市のことを考えていた。パリ、ミラノ、ウィーン、レンヌ、そして今回のアントワープ。近いうちにボルドーにも足を伸ばす。

それぞれの都市によさがある。どこも1、2泊しかしていないが、もっと長く滞在したいと思う。

ただ、だからといって住みたいとは思わない。どの都市も素敵だが、そこまでではないのだ。10年前、パリに住みたいと願い、実際に移住したときのあの強い衝動のようなものは、今のところ感じられない。

そこにどんな違いがあるのかを考えてみたが、今のところの私の答えは、きっと「得るもの」なのだと思う。当時のパリは、私がその時に欲しかったもの、フランス語力や香水業界との繋がりなど、そういったものに溢れていた。

私が今訪れている都市には、今のところそれはない。きっとそれが、住みたいとまでは思わない大きな理由なのだと思う。つまりは都市の側にではなく、私の中に「理由」がないのだ。


「将来的にどこに住みたい?」とよく尋ねられる。日本かフランスか、あるいは他の場所か…

きっとそれは、その時に私が求めるものによって変わるのだろう。それがあるところに私は住んでいるはずだ。

そして私は、いつもいつまでも、何かを求める人でありたい、と思う。何も求めるものがなくなったら、それはなんだか寂しいことだろう。

そうやって私はひとり、私の心に従っていきたいと思うのだ。


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