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可能性を提示することの善悪

仙台三越で行われた「サロンドパルファン2024」は無事に閉幕した。最終日の今日も、çanomaのブースを目掛けてきてくれた方が何人もいたし、昨日と同様にシャンプー、トリートメントがよく売れた。嬉しい限り。

これで今年の「サロンドパルファン」は終了。10月中旬の新宿伊勢丹に始まり、名古屋三越、京都伊勢丹、そして仙台三越と、なんとか駆け抜けることができた。とても疲れたが充実していた。幸せだった。

来年も呼んでいただけるのであればもちろん参加したいところだが、こればかりはわからない。そそして、イベントが継続するかどうかも未定である。いずれにしても、もしまた開催されるのであれば、引き続き呼んでほしいな。


夜8時半に仙台を出た帰りの新幹線の中で筆をとったが、気がついたら眠りこけていた。今ちょうど大宮に着いたところだ。あと30分もせずに東京に到着する。数時間前まで店頭に立っていたはずだが、それが遠い昔のことのように思えるから不思議だ。「サロンドパルファン」は、どうやら本当に終わったようだ。


仙台三越での最終日は、なんだか不思議な1日となった。仙台三越の社員さんや他の出展ブランドの方々と思いがけない話になったり、よくわからない理由でお客さんに怒鳴られたり(そういえば店頭で怒鳴られるのは今回がはじめてだった)、とても美味しいケーキやお菓子をもらったり、駅で急に知り合いに声をかけられたり。

中でも特に不思議だったのが、「香水業界で働きたいから話を聞きたい」「調香師になりたいがどうしたらいいか」などの相談を持ちかけてきた人が複数いたことだ。1週間の会期中、わざわざ私に相談するために来た人がいたのは今日だけだった。


ポップアップの店頭に限らず、香水業界で働くこと等に関する相談を受けることはままある。SNSで連絡がきたら、先方が望むのであれば実際に会って話すようにしている。私の知見が何かの役に立つのならそれは喜ばしいことだし、またもしかしたら将来私が助けてもらうことになるかもしれない。

ごく稀に面会後にひどい言葉を投げかねられることもあるが、概ね私に“損”はないと考えている。尤も、“得”をしているわけでもないとは思うが。

今日会って相談を受けた方々は皆、「お会いできてよかったです」という主旨の言葉を最後にくれた。私に会うことが、彼ら彼女らにとってどのような“いいこと”になり得るのかは正直わからないが、取り急ぎその場では「会えてよかった」と思ってもらえたというところだけを切り取ると、それは悪い話ではないのだろう。


東京駅到着後、遅延とディズニー帰りの乗客でごった返した中央線の中、私はその方々に本当に“いいこと”をしたのかをぼんやりと考えていた。

私は基本的に、可能性が低くてもゼロでない限りにおいては選択肢のひとつとしてそれを提示する。つまり、「フランスで大手ブランドの香水を調香したい」という願望に対しては、どれほどそれができる可能性が低かろうと、「であればこのキャリアパスが適切でしょう」と回答する。

その背景には、私にはその人が秘める可能性などわからないし、その可能性以上に偶然がもたらすものが大きいと考えているということがある。人生、何がどうなるかわからない。渡仏時の私に、「5年後に香水ブランドのファウンダーになってるよ」と言ったところで、「そんなバカな、からかうのはやめてほしい」と返ってきたことだろう。その5年の間に私の身に起こる様々なことを、フランスへと向かう私は何ひとつ想定できていなかったはずだ。

とはいいつつも、可能性を提示してしまったが故に、そちらに突き進むことで結果的に苦しい思いをすることは十分に考えられる。特に私は相手の能力等を全く把握できていない状態でアドバイスをすることになるので、尚更そういうことは起こりやすいだろう。

となると、私がその細く険しい道を提示することで、相手はより不幸になるとは考えられないだろうか。どうなのだろう。


家に到着しても、それについての回答は得られなかった。私にしたって、なぜ今このように仕事ができているのか、自分ですらよくわからないのだから。もしどこかでひとつでも違う選択をしていたら、全く異なる人生が待ち受けていたことだろう。


あるいは、私に意見を求めてくる人は、話を聞いているようでそれを真に受けてはいないのかもしれない。それよりも私に相談を持ちかけることで、ただ“一歩前進した”と感じるのだろう。それならそれで結構だ。


私はフレグランス業界に対して、何か啓蒙的なことをしようとは特段考えていない。そういうことにはあまり興味がない。

ただ私の中の何かが“結果的に”啓蒙的な帰結をもたらしうるのであれば、それはそう思う誰かがうまいこと使ってくれて構わない、とも考えている。

そんなものがあるのかは、よくわからないけど。


今はお風呂に入り、洗濯機を回しながらこのnoteを書いている。明日は東京で仕事、明後日から週末まで、徳島、佐賀、福岡だ。

その後もいくつか出張が入っている。結局は年末まで落ち着かなそうだ。


いずれにしても、やはり「サロンドパルファン」は終了したようだ。まだそれを現実としてうまく受け止められていないが、明日の朝起きたらまた「サロンドパルファン」のない日常がはじまっていることだろう。


大変だったけど、楽しかった。また来年も、こんな感じで楽しめるといいな。


今年会場でお会いした皆様、お越しくださってありがとうございました。来年もぜひ、「サロンドパルファン」でお会いしましょう。

また来てね。


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