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おっちゃんディープ・インパクト

2022年 9/26(月)
映画「ディープ・インパクト」を観ていると
身に覚えのないインターホンが鳴いた。
ドアを開けるとそこには小柄なおっちゃんが立っていて
聞けば、年金関係の職員なのだという。
普段僕はヒィヒィ言いながらも年金を支払っている。
「ヒィヒィ」以上の言葉があればそれを使いたいくらいだ。
毎回ポストに紙が入っていると天を仰ぎたくなる。
だから向こうが「年金」と口にした瞬間から敵に見えたし、
おっちゃんがなんの用か分からなかったから
「もう搾っても出てきませんよ!!」と言いたい内心だった。

しかし、口を開いたおっちゃんは非常に柔らかい口調で「お支払い大変じゃないですか?厳しければ免除申請をすることも出来ますよ」と言った。
おっちゃんは免除が申請できる紙を携えてわざわざ案内に来てくれたのだ。なんなら味方に近い存在だ。
そのとき、僕はようやくおっちゃんの顔が見れた。
「無理してるとどっかで詰まっちゃいますから」
「払えなくなったら僕みたいなのが来ちゃいますしね、へへ」
「とにかく楽しく生きましょう」
などなど、職員らしくない言葉を並べて帰って行った。
その言葉たちはドアを閉めたあとも僕の頭にこびりつく。


「楽しく生きましょう」

おっちゃんはいい人だったけど、
その言葉だけはなんか嫌だった。
そんな楽しくなさそうな顔をしていましたか?
年金が厳しくとも僕は楽しく生きていますよ。凄く。
あと、だったら年金なくしてくれよ!!とも思った。
年金に人生の楽しみは奪えないぞ、一生。

僕はどうやらかなり捻くれちゃっている。
そんなつもりで言ってないよね。
ごめん、おっちゃん。

しかし、そうなったらもう映画どころではない。
おっちゃんの言葉が僕には何よりもディープインパクトだった。
そんな昼下がり。


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