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シンプルになった世界

 世界史に名が残る事が確実な安倍元首相の自由で開かれたインド太平洋政策により、エストニアのナルバからアメリカ西海岸、台湾、マラッカ海峡、マダガスカルに至る広範囲な地域で、自由民主主義諸国が結束を始めようとしていた中の、2022年2月24日、ロシア軍は隣国ウクライナへ軍事侵攻しました。ロシア・プーチン大統領(以下、プーチン)の当初の目論見であった短期でのキーヴ占領は成らず、勇敢なウクライナの戦士と、米国やNATO、日本、韓国などの自由民主主義諸国のウクライナ支援により、現在はウクライナ領内で膠着状態となっています。撤退など微塵も考えないプーチンは、ウクライナでの戦争を続行する為に、歳入を維持、若しくは増やす必要があり、世界中に策を巡らしています。

 ロシアの歳入の実に34%は化石燃料の輸出から得れらる税収である為、プーチンは特に国際的な原油価格の動向に敏感であり、これをなるべく高値に操ろうとし、しかも半ば以上、成功しています。

 プーチンが原油価格を高値誘導する為にとった第一の策は、OPEC+加盟国に原油減産を促す事です。これはプーチン自身が、サウジアラビアの実権を握るムハマンド皇太子を抱き込む事で成功しており、2024年3月現在、OPEC+加盟7カ国が自主減産を行っています。これにロシアの減産分を含めると日産220〜270万バレルの原油減産です。

 プーチンがとった第二の策は、原油産出国が密集する中東地域に火種を起こす事です。2023年10月7日、ガザ地区のイラン系武装組織ハマスにイスラエルへの襲撃を行わせたのは、イランであり、その盟友ロシアです。襲撃されたイスラエルのネタニヤフ首相(以下、ネタニヤフ)は、長年のハマスによる人質ビジネスの禍根を絶とうと決意し、米国の説得も鑑みず、ガザ地区完全制圧によるハマス撲滅に執着しています。(2024年3月現在)
 また、プーチンは他のイラン系武装組織にも活動を要請しており、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派がそれに応えていますが、他の中東ムスリム諸国はエスカレーションを望まない為、挑発に乗らず、暴動が起きないよう努めています。ロシアの要請を受けたイランにしても、自国を危険にまで晒す意図はない為、その眼前のホルムズ海峡での工作、破壊活動は控えています。結果として、イランから遠く、かつ、原油価格の高値誘導に効果のある、フーシ派による紅海での民間船攻撃が活発になっています。

 また、以上のプーチンの原油価格高騰策を察した、ウクライナのものと考えられるロシア国内施設への攻撃も、ロシアの製油所など原油関連施設がターゲットになっています。

 プーチンの手足として有名なロシア諜報機関FSBは、欧州でも活発に活動していますが、脱炭素運動にもFSBの手が入っています。2023年1月13日の著名環境活動家グレタ氏(以下、グレタ)による、ドイツ西部の村リュッツェラートの炭鉱拡張への抗議活動がそれです。世界各国で石炭利用を減少させる事が出来れば、原油・天然ガス需要が増える為、プーチンは脱炭素運動にも力を入れています。

 一見、無関係に見える日々のニュースも繋がりがあります。人道上の問題を別にすると、中東ガザ地区で起きている戦争は、ウクライナ戦争に付随する副次的な戦争と言えます。
 このように、プーチンの視点に立ってみると、複雑と言われる世界情勢も以外とシンプルです。

 拙い文章で恐れ入りますが、皆様のご参考になれば幸いです。


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