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心身問題

足の小指に何かをぶつけると、痛みを感じる。

小指が何かに当たったことは物質的な事象であり、それが原因となって、神経が特定のパターンに従って反応を開始し、脳に信号を送るのである。

だが、この時感じる痛みとは、いったい何なんだろうか?

身体の状態と心の状態の関係について哲学者が抱く疑問には、二種類ある。

1つは、心の状態は身体の状態と完全に一致しているのか、という問いだ。

痛みは、脳内にある神経細胞の反応にすぎないのか?

もしそうだとしたら、心は脳に他ならないという事になる。

しかし、痛みが神経細胞の反応以上のものだとしたら、心は人間が身体や脳とは別に持っているものだと考える余地が生じる。

こうした立場を心身二元論という。

そして、二つ目の疑問はこうだ。

もし心が脳と違うのであれば、身体で起こる事象、特に脳で起こる事象はどのようにして心の事象を引き起こし、心の事象はどうやって身体での事象を引き起こすのだろうか?

そもそも、心が脳とも体の他の部分と違うのであれば、心は非物質的なものであり物質ではできていないはずだ。

だとすれば、心はどうやって脳や体を形成している物質と相互に作用しあっているのだろうか?

哲学者の中には、心と体は、物質と物質の相互作用と同じ仕組みで相互作用していると考えている者がいる。

それに対して、随伴減少説という立場をとる哲学者は、身体は心に影響を及ぼすことはできるが、心は体に影響を及ぼすことができないと考えている。

身体問題は、心理学や神経科学について重要な問題を提起するため、今も哲学で盛んに議論されている。

さらに、心身問題は、人工知能開発の努力にも重大は課題を投げかけている。

コンピューターを使えば脳を再現することはできるかもしれないが、果たして、心を再現することはできるのだろうか?

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