喫茶店で無自覚のルールに気づかされた。

最後に行ったのは何年前だろう。
実家近くにある、喫茶店。

おそらく大学生の時以来2度と足を踏み入れていない喫茶店。
こんなにいいお店なのに。

当時（おそらく）大学生の僕には、その場所の雰囲気やそこでしか過ごせない時間にお金を支払うことに対する価値観が全く今と違ったと思う。
当時の印象としては、少し高めのコーヒーを出す古めな雰囲気のお店くらいにしか考えていなかったかな。

コーヒー一杯400円くらいなのだけれど、その時の僕には少し高く感じたのだと思う。
スタバとかは平気で行く奴だったくせに、何が違うんだか。
学生の時よりは大人になったなんて全く思わないけど、今は落ち着いて店内を観察する余裕くらいはある。

店内に入ると、僕の記憶では１人だった店員さんが、２人に増えていた。

濃い茶色が店内のほとんどを占める、少し薄暗い店内。

奥に仕切りで隔たれた席を見つけ、迷わずそこに座る。
椅子が一つと荷物入れが一つ。完全に一人用の席だ。
見られて困るようなものなんて何もないし、僕自身プライベートと仕事がどうこうとかは無縁の人間だが、大事な会談を控えている重要人物さながら厳かに座る。

BGMは割と大きい。他の人の会話が聞こえないように配慮してくれてるのかななんて考えていたら、自分の席の真後ろにスピーカーがあるだけだった。
もちろん喋り相手なんていないので、僕には関係のない話なのだけど。

とにかく一つ一つの家具やインテリア、内装や全てが好みだった。
「この店何十年前からあるんだよ」と言いたくなるような雰囲気。
日差しが差し込んだステンドグラスがきれい。
実際はお店を構えてから10年も経ってない。

メニューはすでにテーブルに置いてあった。
飲み物はコーヒー。その日は少し暑かったのでアイスで。
朝昼ご飯はいつも通り食べていないし、お腹も減っていなかったので飲み物だけの予定だったがメニューを見てその考えはすぐに変わった。

グラタンやピラフ、スパゲティーやカレーなどの定番メニューがずらり。
品数は少ないのに、見るだけで妙な幸福感がある。

ビーフカレーに決めた。

一番奥だし、仕切りがあるから「すいませーん」と言わなきゃいけないなと少し暗い気持ちになると、僕が振り返る動作をしたその瞬間には「お決まりですか？」とお声がけをいただいた。
いつからそこに居た？とんでもなく早かったぞ。
「すいませーん」の「す」を言うか言わないかくらいだったぞ。

注文を静かに、でも相手に聞き取れる声量で終えた。
せっかくのいい店内でただ携帯をいじるのはもったいないので、紙のnoteに今書いているnoteの下書きというか、アブレインストーミングみたいに書き出した。

「喫茶店巡りが趣味のブロガーとか思われてたらどうしよう」という意味のない自意識が働きながらも、紙に書く。

このご時世にパソコンじゃなくて紙って変だな。
ただでさえ場所を取る紙って。
でも僕はいまだに一部アナログ人間で、自分の手で紙に順序もへったくれもなく書き連ねるのが整理しやすい場合が多い。

さっきの喫茶店女忍者店員さんがカレーを持ってきてくれた。
なんか僕が知っている匂いと違う。
あおさのりの匂い？

プチサラダのサプライズ付き。
ほんの少し遅れてアイスコーヒーも到着。

なんとなく、申し訳なくなりながら写真を撮った。
理由はないのだけど。

先にアイスコーヒーを一口。
アイスなのでもちろんスッキリしつつも、苦味の強めな味。
大好きである。
カレーもピリ辛でスプーンが止まらない。
非常に美味しいです。

ここで皆さんに質問。
上のカレーの写真を見て、皆さんは違和感を覚えましたか？
それとも普通のカレーですか？
この写真は店員さんに置いていただいた向きのまま撮っているのですが、僕はまず最初に、
「米が左でルーが右か」
と思ったんです。

まず大前提としてこれはクレームでもなんでもありません。
世の中のルールがどうとかも知りません。

ただ、この時に僕はとても違和感があったのです。
それと同時に自分の中で無意識にあったルールを初めて自覚しました。

僕は、米が右でルーが左に盛られている状態で置きたいし、食べたいのです。

ルーが右にあるということは、僕は右利きなので最短距離でいけば先にルーをスプーンですくいあげ、そのまま左側にある米をすくう形になります。
なので上から米、ルー、スプーンです。
（この時、先に左からすくい上げるとか最初に米にルーを上からかけて食べる場合は無視してください。）

僕ルールの場合は、右側にある米を先にスプーンで取り、そのままルーへと進む。
最終的には上からルー、米、スプーンとなる。これが良い。
欲を言えば米の全面がルーで隠れているのではなく、半分くらいが被さった状態がベター。

後はなんか俯瞰で見たときに白いのが右がいい。

今「どうでもいいよ」と思いました？
どうでもいいんですよ、でもそのどうでもいい小さな事に意識を向けられるぐらいにはリラックスできてる証拠だと思うんです。

これは僕にとっては良い状態。

最近働き続けて疲れたし、これくらいの心の余裕は欲しい。

美味しかった。

何年もの時を経て再来店させて頂いた喫茶店、今まで足を踏み入れなかった数年間を後悔するくらいにとてもいいお店でした。

また行こう。散歩にもちょうどいいし。

もうこんな季節ですね。あっという間に終わっちゃうのかな。