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🍥山椒仕事🍥
地域の農産物直売所を徘徊していると、掌大にパックされた山椒の実が小ぢんまりと積まれているのを発見した。
梅雨時になると料理家たちがSNSに投稿する「山椒仕事」という言葉に憧れ、指を咥えて眺めるだけで旬を逃し続けていた私だったが、今年は山椒の眼鏡にかなったようで、晴れて採用の運びとなった。ようやく仕事にありつける喜びを噛みしめ山椒を手に帰路に就いたのである。
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山椒の手仕事は、目を瞑ってもこなせる程度には何年も前から本やネットで予習済みだ。さっそく枝から外していく。
無数にある実をひとつひとつ枝からプチプチと取る途方もない作業だが、私は下処理愛好家だ。地味で平坦な作業の連続に悦びを見出す倒錯者だ。B級の吹替ホラー映画を観るともなく音声を流しながら、血飛沫や銃声、断末魔の悲鳴をBGMに山椒仕事も忘我へと没入していくのだった。
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恍惚の枝除去仕事を終えたら、実を茹でていく。
沸騰しない程度の熱湯で8〜10分間茹で、実が指の腹で潰れるほどの柔さになったらざるに取る。山椒の時期や収穫場所で個体差もあるので「指腹チェック」は必須といえるだろう。
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ボイル後はアクを抜くため水にさらすのが一般的のようだが、私は鮮烈な香りと麻れを大いに残したいので、水にさらすのは避けておいた。
ざるのまま半日程度の日陰で風にさらして水分を飛ばし、よく消毒した保存瓶に詰めて塩漬けにする。
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塩の量は山椒の8〜10%がちょうど良さそうだが、保存性の観点から15%ほど投入した。塩辛さは料理で引き算をするか、水にさらして塩抜きして使えばいいだろう。
塩をしたら、蓋をしてよく振り、数日間馴染ませ塩が溶けてから冷蔵庫で保存する。
よく漬かった塩山椒は、ピリリと鮮烈な風味が素晴らしく、肉に乗せたり豆腐に乗せたり、おにぎりにひと粒だけ忍ばせ「ジャパニーズ・ルーレット」などとランチタイムの一興にしたりと、八面六臂の活躍をみせた。
とりわけ、ツナや薬味と合わせた冷製パスタは、これからの季節にぴったりの涼味となったので、塩山椒は渡さないが作り方は置いておく。
《冷製山椒パスタのつくりかた》
せっかくなので、ツナから作っていこう。
まず、マグロを用意する。スーパーのお値打ち品、しかも筋張っていて刺身用では選ばないような──くたびれたキハダやメバチで充分だ。
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重量の1.5%の塩を全体に振る
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浸るほどのオリーブオイルを注ぐ。
ガーリックパウダー、ジンジャーパウダー、ブラックペッパーを少々加えて軽く揉み込み、65℃で0:40ほどの低温調理にかける
低温調理器がなくても、炊飯器の保温機能を利用した方法も可能だ。
火入れを終えたら、バックのまま氷水で急冷しておく。
材料
・カッペリーニ 200g(素麺でも◯)
・パスタの茹で塩 少々
《A》
・EXオリーブオイル 大さじ5
・塩漬け山椒 約10g
・白だし 大さじ1
・ツナ 約100g
・ツナの漬けオイル 大さじ1
・ブラックペッパー お好みで
・大葉 10枚〜
・茗荷 3個〜
作りかたはいたって簡単だ。
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60〜90秒長く茹で、氷水で締め水気をよく切る
《A》を混ぜ合わせる
粒の塩山椒を散らし、薬味をあしらう。
仕上げにEXオリーブオイルを回しかけて完成だ。
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パスタの山を崩し、もりっと巻いてかぶりつく。
ニヤニヤと顔に出るほどのうまさだ。
粒が細かいものから粗いもの、ひと粒まるごとまで、均一ではないが、塩山椒の濃淡が面白くてクセになる。ツナと薬味、オリーブオイルとの食べ合わせも抜群だ。
今回はビールのお供にしたが、次はキンキンに冷やした辛口の酒で昼からやってしまおう──などと、早くも再調理が決定したのであった。
一年分は仕込んだつもりの山椒仕事だったが、我が家の売れ行きを見るに──このままでは冬を待たずに姿を消すだろう。そして、年も明けぬうちから初夏の山椒に焦がれてウズウズとした日々を送るにちがいない。
この状態を、売り切れ山椒だけに──痺れを切らす、という。
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