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詩「船」


沈んでいく船に乗っている人々は
あなたに言葉を預けようとしている

その言葉を受け取る勇気が
あなたにあるだろうか 

船はゆっくりと沈んでいく 

彼らは沈む速度より
もっと早く考える

何を伝えなければならないかを 

そして沈む速度よりもっと速く
その言葉を投げる

 わたしたちはただ待つことしかできないのだろうか

人々は口々に
さよなら
さよならと言っては

ひとりまたひとりと消えていく 

わたしはもう一度立ち上がって
暗く狭いこの通路を
歩いていかなくてはならない

そしてこの先の広い甲板に出たら
彼らの声を聴こう

彼らの手をとって
時間の許す限り
ともに過ごそう

そうしているうちに船は
波の向こう側の方へと見えなくなり 

いつもと同じ朝がやってくる




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