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実らなかった果実、もぎ取れなかった果実

【463】

恋愛小説やエッセイを書くことがある。

まったくの妄想から描かれるものもあれば、自身の体験をヒントにして書くこともある。そのまま丸出しにしていることは少ないように思える。

昨日書いた作品に関しては七屋糸さんが企画している#月刊撚り糸 に毎月参加させて頂いているお題に沿って書いたものだった。

この企画は恋愛小説を書きましょうという決まりはない。しかし、今まで参加した3回のうち2回は恋愛モノではなかったので今回はしっかりと恋愛小説にしようと書いてみた。

この企画に参加することに決めたときは、月に一度はガッツリと恋愛小説を書いてみようと丁度考えていたところで。そのつもりでいたのに僕ときたら気まぐれでしょうか、テーマをジッと見ていると2回目3回目は遊びの効いた男性的な小説に仕上がっていました。

意外なほどにこと創作する小説においては、うーん…「おっ!!」でプロットと呼べる程ではない断片的なストーリーを思い浮かべてみて感覚的に行けると感じたら書き進めます。(結構、アバウトな書き出しなんです)

恋愛というのは面白い。

好きになるという感覚は特別だ。

そしていつだって人を好きになる時は必死だ。

自分を好きになって欲しいし、嫌われたくない。もっと言うと失いたくない気持ちになる。だから、束縛や嫉妬みたいな人としては醜い感情すら制御出来なくなる。

性欲もそう。抑えきれなくなる。求めるものが多くなる。与えたい気持ちも多くなる。こんな感情の高揚ってあまり他の関わり合いだと起こり得ない気がしている。少なくても、僕はそう思っている。

普段は見せない顔。

親友にも家族にも見せることのない感情をさらけ出す。なんて面白いんだろうって思うんです。この感情の揺らぎを男性とか女性とかの垣根を取っ払って考えて文章にして物語にするのは不思議と楽しい。

つくり上げた人物に感情移入して一人微笑んでいたり、「やべぇ泣きそう」ってなってみたりするんですね。昨日の作品は登場人物の女性の気持ちになって少し泣きそうでしたから。

世の中には残念ながら想いを遂げることなく終える恋がある。

その方がきっと多い様な気がする。

成就して気持ちが通い合うことよりも、自分の中に大事に大事に抱きしめてそのまま過ぎて行く恋愛。

伝えることが出来ず行ったり来たりを自分の中でだけ繰り返す感情はどうしても弱くなりがちだ。

失うことを人は恐れる。

今ある関係性があるのなら壊したくないと思う経験をした人も多いはず。だから前進出来ないままずっとグルグル自分の中で巡らせるだけしか出来ない。

そしていつかその恋愛を諦めてしまう。

自分の中で勝手にケリを付けてしまうかのようにして「もういいんだ」と引き下がる。

最近、友人と昔の恋バナをした。

その彼はずっと長い間あたためて来たその恋心をそっと自分の中に閉じ込めて、心のすみっこで今も抱きしめていた。それは好きで好きで仕方ないというものではなく、好きでいた頃の気持ちが今も美しく残っているかのようで、その話を聞いていて微笑ましく、なぜか僕は応援した気持ちになってしまった。

10年以上も好きだった女性には「好き」だと伝えていないらしい。

こういう恋愛だってたくさんあるんだ。今更何をしたいでもない。ただ、その気持ちは自分の中でそっと大切にしているように感じた。

これを未練がましいと言えるだろうか。

これを女々しいと言えるだろうか。

僕はその彼の恋心をすごく素敵だと思えたし、カッコいいなと感じた。ああ、純愛ってこれだなって。

僕は不思議とその果たせなかった恋が叶って欲しかったなと感じて、なんとも言えない気持ちになっていた。いい恋だなって思えたから余計に。

「もしかしたら付き合ってたかも知れないじゃん!」って20年後の今になって盛り上がって笑ってさ。恋愛をこの歳で語るのはなんとも恥ずかしげもあるけれど、大切にしている記憶をこうやって話すことでほんの僅かでも報われるといいなと思えた。

恋愛は果実のようだ。

実らせること。そして、それをしっかりともぎ取ることまで出来て叶う。

時間をかけてコミュニケーションを重ねながら恋心を育てることはきっと出来るのだと思う。しかし、実った果実をただ見上げていても、手元になければ意味がない。

もぎ取って味わって確かめて。

甘いこともあるし、苦いことも、酸っぱいこともある。

それはもぎ取ることでしかわかることが出来ないのだから。

きっと、友人の恋心の果実は実っていたのだと思う。ただ、それを確かめることが出来なかったんだ。

きっとそうだろう。

かつてのMuse杯作品でお目見えした憑依する感覚。

書きながら世界に入り込んでいく。僕自身が登場人物に入り込んで、男性も女性も関係なく感情を注入していく。

女性の気持ちなんて一生かかってもわかり得ないと僕は思っているんですけどね。女心?乙女心?は自分の理想としている女性だから感覚がわかるってっことでもないんです。自分の今まで書いていきた作品の女性キャラって言うなら《恋愛下手》な設定は確かにあるのですが、別にタイプであるわけでもないい、自分の経験上のものでもない。

完全に妄想ばかり。

ある女性読者から「なんで女性側の視点で書けるの?」と言われることがあったけど、なんでだろうな。

書いているときは完全にその女性になりきっているのかも知れないね。

これからも恋愛をテーマにした作品は書いていくつもりでいる。

せめて僕の描く作品の世界では恋愛の果実は実り、もぎ取れるようにしてあげたい。味わってときには傷ついたり悲しんだりしてもいいと思う。

それが恋愛をするということ。人を好きになるということ。

そして、誰かを大切に想うということになるのだから。





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