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本棚の本だな!

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わたしが出版物や読書について書いたものを入れておくnote本棚なんだな!
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記事一覧

文庫・新書の独断的10選(2024年上半期)

昨年末に1年間の読書を振り返って10冊を選んでいたけれど、後でやっぱりあれも入れとけば良かった、こっちよりもこっちだったかな、なんて因循に考えることもあった。 その後、このnoteで取り上げられていた本を買いましたなんて話を個人的に聞くこともあって、やはりもうちょっと本の紹介をしておいても良かったかなと思ったりしている。 何度か書いているように、わたしには乱読癖があって、ひとつの本をじっくりいっぺんに読破するということがあまりなく、だいたい同時進行で何冊も読んでいる。だか

乱読本棚が先週特にスキを集めてくれたらしい。

ウワサには聞いていた「先週特にスキを集めた」通知が、とうとうわたしのところにもやって来た。 激しい雨が上がって青空が戻ってきた月曜午後の東京。休憩がてらスマホを手にとったその時、この通知が届いた。文字どおり青天の霹靂だななんて、またつまらないことを考えながら、記念のスクリーンショットを保存した。 フォロワー数の少ない拙アカウントでは、こうした通知はまったく縁のないことだと思っていた。昨年12月に「今週の注目記事」に選ばれた時ですら該当しなかったというのに、これはどうしたこ

本棚からその持ち主の頭の中がわかるって?

わたしの読書習慣は乱読である。大半はいわゆる速読で、速読したあとに気になった本を読みなおすことが多い。それも飛ばし飛ばしだったり、途中でほかの本に移ってみたりと、一般に読書とされる行為の範疇に入れてもよいものか甚だあやしい。小説や詩では一語一語をていねいに読むことが多いのだけれど、わたしの読む本のなかでは小説は少数派だ。 我が家のリビングには、いつの間にか本棚化した棚があって、そんな乱読している書籍がざっくりとした分類のもと、著者や分野がなんとなくかためて置かれている。それ

世界はさまざまなストーリーでできている。ポール・オースターさんありがとう。

訃報はいつも突然やってくる。米国の作家、ポール・オースター氏が亡くなった。77歳。肺ガンを患っていたらしい。まだ新作が読めると信じていたから、この訃報はとてもショックだ。 ちょっと前にブッカー賞のノミネートだかにも名前があがっていたと思ったけど、それももう7年前だったようだ。時の流れの速さを実感する。そうか、7年ともなれば病気にもなるか。オースター氏に年齢の近いわたしの父もいろいろと病気を患っていることにもふと思いをめぐらせた。 ◆ わたしがポール・オースターを知ったの

天下を取った成瀬あかり

今年の本屋大賞は『成瀬は天下を取りにいく』。いやはやこんな形で天下を取るとは!いかにも成瀬らしい展開ではないか。 いつもはあまり発信しない高校時代の旧友が何名もソーシャルメディアで触れていたのを見た。 ローカル色の強い小説だからか、なおのこと母校や実家まわりで盛りあがっているに違いない、と思ったり。これを機に西武百貨店が大津に再進出を検討してくれまいか、なんて妄想してしまった。 せっかくだから、わたしが昨夏に書いていた読書感想文を引っ張ってこよう。もしよければ読んでね!

今年読んだ書籍からのトップ10

昨日、今年の振り返りとしてやっぱり書いておきたくなって映画について書いた。 もうひとつ。本についても書きたかったのだけど、読んだ本が多すぎて、しかも乱読ゆえに記憶が交錯していて、まとめるには時間もなくて・・・、これらはそれらしく聞こえる言い訳なのだけれど、ようするに「#今年のベスト本」のnoteを書くのは断念していた。 この年末年始は帰省しないことにしたので、通常の買い物など以外は引きこもっている。たとえ仕事は休みにはいっていてもなにかと気忙しいのが年末で、家事やら買い物

本の街を歩いたあとの月夜、蛇紋石の杯に葡萄酒を注ぐ。

秋の読書週間にあわせて始まった神田古本まつり。そして連動して開催される神保町ブックフェスティバル。昨年同様、半日だけだったけれど足を運んだ。天候に恵まれて気分が良いので秋葉原から散歩を兼ねて歩いて行った。意外と近かった。 今回はブックフェスティバルをメインにして書くつもりではなく、その前日に中国出身の同僚からもらった中国のお土産について。 ◆ それは深いグリーンの小さなコップ。日本で言うお猪口に相当するか。暗いグリーンに黒い縞模様が見える。その材料は石。マントル物質の変

夏が来れば思い出す遥かな膳所

気がつけば立秋も過ぎ、暦のうえでは秋なのだけど、そこは例年どおり猛暑が続いていて残暑お見舞い申しあげますなんて挨拶を交わす気分にはなれない。東京にいても今年はほんとうに暑い暑いとみんな話していて、ランチタイムには日傘がないと外も歩けない。お盆の墓掃除で熱中症にならないかが心配になってくる。 先ほど琵琶湖の花火大会のニュースが目にはいり、ああそうだった、花火の時期だったなと思い出す。ただ、それはなんとも後味の悪いニュースで、4年ぶりの開催だというのに運営側が有料エリア以外から

“描くこと”に迫る『デッサンの眼とことば』

オトナの美術研究会の月イチお題note企画、今月は「#おすすめの美術図書」。いつも月末ギリギリになってしまっているけど、今月はわりと早めから書きはじめている。 わたしがオトナの美術研究会に参加して5ヶ月ほどが経った。メンバーのみなさんは鑑賞側の視点を持ったかたが多い。投稿されるnoteや掲示板の書き込みには、自分の視点との違いに多くの学びがあって、いつも楽しませてもらっている。 わたしは描く側の視点で鑑賞することが多い(というか、どうしてもそうなってしまう)のだけど、どう

コ・イ・ヌールは呪われたダイヤモンドなのか

宝石の代表格ダイヤモンドは、4月の誕生石としてもよく知られている。昨年はタヴェルニエの記録した古いダイヤモンドについて書いた。 ほかにロッククリスタル(無色透明の水晶)とモルガナイト(ピンク色のベリル)も4月の誕生石にリストアップされているけれど、今年もダイヤモンドについて書くことにした。このところ、ある有名なダイヤモンドが話題になっていたからだ。 先日5月6日、英国のチャールズ3世の戴冠式があった。この戴冠式にあたって歴史好き・宝石好きの界隈でちょっとした話題になってい

世界は一冊の美しき書物に終る

昨年後半のある日。よく宝石やジュエリーについてのやりとりをしている友人から、ある古本に書かれていたという「印度産のサファイヤ」についての質問を受けた。 それなりの品質のサファイアだとすると、有名な産地ではカシミールかミャンマーあたりだろうか。どちらもかつては英領インド帝国の一部だったことがあるし。インドに近いスリランカも有名なサファイアの産地だけど、こちらはセイロン島として古くから知られていて、わざわざインド産と書くとは考えにくい。 そんなやりとりをした後、その本がどんな

暖な日の色に染まつてゐる宝石

晩秋から冬にさしかかるこの季節。暗い雲が垂れこんで冷たい雨が降ったりするとどこか暗い気持ちになることがある。晴れても風が冷たくて、あの穏やかで暖かな日々はどこへ行ったのだろうと、ほんの数ヶ月前が恋しくなる。 紅葉が終わって山からも街路樹からも色がなくなると、どこか心のなかまで灰色になる。灰色の世界には暖色がよく映える。スーパーの店頭にも、ご近所さんの庭木にも、家のなかの居間にも、映える暖色のミカンが現れる季節になった。 俳句では「蜜柑」は冬の季語。わたしたち日本人には、

代官山の洋書セール

代官山の蔦屋書店でたまに開催される洋書のバーゲンセール。もちろん対象商品は限られている。しかし蔦屋書店のあつかう書籍のジャンルがわたしの好みにぴったりなので、とても気になっていた。 今週末で会期が終了する展覧会を観に行こうかと考えていたのだけど、たまたまソーシャルメディアで今回の洋書セールがあることを知った。しかも最終日の日曜日、5点以上買えばすべてが80%引きという太っ腹さ! これは行かねば! そういうわけで予定変更。まだ代官山には行ったことのない長男を誘ってみたけど

夜はいろいろな顔を持っている・・・手塚治虫没後33年

2月9日は手塚治虫さんの命日。昨年noteに書いたように、わたしは毎年この日には手塚関連の絵を描いて追悼している。 ちょっと遅れたけれど、今回もnoteで手塚さんを偲ぶことにしたい。 ◆◇◆ わたしが小学生のころ、講談社から手塚治虫漫画全集が刊行されていた。その全集の何冊かを買ってもらったのがはじまりだった。鉄腕アトムやリボンの騎士、ふしぎなメルモなどのテレビアニメも観ていたけれど、漫画の単行本は別格だった。静止画なのにアニメ以上に動きが感じられた。何度も何度も読み返し