「東京五輪開幕100日前」に改めて「東京オリンピックのあるべき姿」を考える

東京オリンピックの開催まで、今日でちょうど100日となりました。

今年に入ってから大会組織委員会を巡る不祥事や日本での「コロナ禍」の終息の見通しがつかない中での開催については、日本国内でも消極的な意見が高まりつつあります[1]。

また、日本国外でも今夏の開催に懐疑的な意見が散見されるだけに[2]、東京オリンピックを取り巻く環境の厳しさが窺われるところです。

一方で、オリンピックの開催を最大にしてほとんど唯一の存在意義とする国際オリンピック委員会(IOC)にとって、大会を中止することは自らの存在を否定するだけでなく、現行の放映権や協賛契約の更新の際に「中止リスク」を踏まえた改訂、すなわち契約の期間の短縮や契約金の減額を余儀なくされかねません。

さらに、再度の延期は2022年2月に開催予定の北京五輪との兼ね合いがあり、2023年に実施すれば翌年のパリ大会と開催時期が近接するため、いずれも現実的な選択肢とはなりません。

何より、オリンピックの開催の可否の最終的な判断は大会組織委員会や日本オリンピック委員会(JOC)ではなくIOCが下します。そのため、たとえ組織委やJOCが日本の実情に即して中止や再延期を要請しても、IOCが積極的に対応することは期待できません。

このように考えれば、「東京オリンピックは必ず開催される」といったIOC関係者の発言[3]は自信の表れというよりはそのように答える以外に方法がないという実情を反映しており、大会を中止しても今後の契約の面で金銭的な損失が生じないという確証がない限り、どのような形でも開催されることでしょう。

あるいは、水面下で新たな方策を検討しているとしても、直前までそのようなやり取りが明らかになる可能性は限りなく低くなります。

もちろん、一連の判断の過程でIOCが重視するのは放送事業者や協賛企業であって、開催都市や開催国はもとより選手の意向も度外視されています。

その意味で、是非の判断は措くとしてもIOCが徹底して自らの利益と欲求を追及していることがより鮮明になったのは、東京大会の一つの成果と言えるでしょう。

いずれにせよ、関係者には予断を排し、「コロナ下」という状況に即した大会の実現が望まれるところです。

[1]五輪、「観客数を制限」49%. 朝日新聞, 2021年4月13日朝刊4面.
[2]It's Time to Rethink the Olympics. The New York Times, 12th April 2021, https://www.nytimes.com/2021/04/12/sports/olympics/olympic-games-boycott-tokyo-beijing.html (accessed on 14th April 2021).
[3]「東京五輪必ず開催」. 日本経済新聞, 2021年4月14日夕刊1面.

<Executive Summary>
What Is an Important Way for the Tokyo Olympics? (Yusuke Suzumura)

The 14th April, 2021 is 100 days to go before the Olympic Opening Ceremony. In this occasion we examine an important way for the Tokyo Olympics under the COVID-19.

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