IOCに求められる「東京オリンピックを予定通り開催する必要性」の説明

現地時間の1月27日(水)、国際オリンピック委員会(IOC)は理事会を開き、トーマス・バッハ会長は今夏に延期された東京オリンピックを予定通り開催するとともに、新型コロナウイルス感染症への対策をまとめた手引書を今年2月初旬に公開すると発表しました[1]。

また、理事会後の記者会見において、バッハ会長は「われわれは大会が開かれるか否かについては疑問を持っていません。どのようにして開催するかを検討しています」と発言するとともに、「東京大会を2032年に延期するという代替案があると耳にしましたが、2021年の大会に備えている選手たちと議論する機会があるのなら『幸運を』と言うだけです」と指摘し、大会の再延期は念頭にない姿勢を改めて強調しました[1]。

すでに本欄の指摘するように、IOCにとって「オリンピックの実施」は組織の根幹であり、IOCの存在意義でもあるため、開催の実現のために最善の努力を尽くすのは当然です[2]。

その一方で、国際社会の間では、「これまでに開催された中で最も複雑な競技会となる」[3]というように、東京オリンピックの開催そのものを懸念する声が根強いのも事実です。

こうした報道によって、今後、国際社会の反応が「東京五輪開催」に消極的になることが推察されます。

さらに、日本国内においても、新型コロナウイルス感染症の感染の拡大が収束しない状況を受けて、大会の開催を危惧したり、開催そのものに否定的な意見も高まりを見せています。

その様な中で、たとえ水面下で何らかの代替案を検討しているとしても、表面上は予定通りの開催を主張するIOCは、「何故、このような状況の中で開催にこだわるのか」という素朴な問いに対して有効な回答を示し得ていません。

従って、IOCは、中止や再延期をせず、予定通りの開催しなければならないかを、情緒ではなく具体的な根拠に基づいて説明する必要があることに、十分に注意しなければならないのです。

[1]IOC PRESIDENT REAFFIRMS COMMITMENT TO THE OLYMPIC GAMES TOKYO 2020. The International Olympic Committee, 27th January 2021, https://www.olympic.org/news/ioc-president-reaffirms-commitment-to-the-olympic-games-tokyo-2020 (accessed on 28th January 2021).
[2]鈴村裕輔, 「ザ・タイムズによる五輪中止報道」の持つ意味は何か. 2021年1月22日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/3f8fe362e2e2e284dd77fc91ab19560f?frame_id=435622 (2021年1月28日閲覧).
[3]Pulling off Tokyo 2020 will be a logistical nightmare ... and the clock is ticking. CNN, 28th January 2021, https://edition.cnn.com/2021/01/27/asia/tokyo-olympics-logistics-intl-hnk-dst/index.html?fbclid=IwAR27UOth4QFiY4eZLso8HqnIWiMVfM_BOqiWOo6SaXgqeXVwOk3JlFAE78U (accessed on 28th January 2021).

<Executive Summary>
Will the IOC Be Able to Explain a Necessity of Holding the Tokyo Olympic Games under an Outbreak of the COVID-19? (Yusuke Suzumura)

The International Olympic Committee (IOC) holds the Executive Board and President Thomas Bach emphaseises that the Tokyo Olympic Games will take place as planned on 27th January 2021. In this occasion we ask the IOC to explain a reason why it must be held as scheduled.

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