「立民と国民の合流」で重要な「選挙区の調整」は行われているか

昨日、国民民主党の玉木雄一郎代表が記者会見を行い、立憲民主党との合流について、合流に参加する議員と不参加の議員とで党を分けると説明するとともに、自らは合流に参加しないことを表明しました[1]。

さらに、玉木代表は自らを含め合流に不参加の議員については国民民主党を回答したうえ、法的には新党となる国民民主党を結成することを明らかにしています[2]。

玉木代表が説明した手法は2018年に希望の党と民進党が合流して国民民主党を結党した際に取られた手法で、すでに党の執行役員会で了承を得ており[2]、8月19日（水）に両院議員総会を開催して正式に決定される見込みです[1]。

今回の方法で合流を見送るのは玉木代表のほか、前原誠司元民進党代表や山尾志桜里元民進党政務調査会長など10人に満たないと指摘されています[2]。

民主党とその後身である民進党に由来する国民民主党と立憲民主党ではあるものの、希望の党への合流を巡り、小池百合子代表の対応に反発して結成された立憲民主党と、民進党と希望の党及び無所属の会の議員一部が合流して誕生した国民民主党[3]という来歴の違いを考えれば、民進党代表として希望の党への合流を推進した前原氏が、事実上立憲民主党を主体とする新党への参加を見送るとしても不思議ではありません。

立憲民主党に所属していたものの今年3月18日に「執行部ももっと党内の意見を聞くべきだったというふうには率直に思う」と党運営のあり方を批判して離党した山尾氏[4]の場合、批判の対象が主導する新党に参加しても冷遇されることは想像に難くないだけに、一旦は合流を見送ることは最善ではないとしても次善の策とはなるでしょう。また、所属する政党が合流するからかつて批判した相手と無条件で合流するということは機会主義のそしりを免れないだけに、山尾氏の態度は首尾一貫していると言えます。

あるいは、「党名は投票など民主的な手続きで選ぶのがいい」[5]などと細部に拘泥して合流に向けた協議を停滞させたた玉木代表[6]の態度からは両党の合併に消極的な様子が窺われただけに、新党への不参加は当然の対応となります。

一方、今回の協議では党名の決定方法や新党設立時の綱領、あるいは代表選挙の規程が公表されたものの[2]、両党の議員の選挙区の調整をどのように行うかについては明示されませんでした。

両党が合併すれば衆参両院の所属議員の間で選挙区の重複が生じることは明らかです。

もちろん、選挙対策に携わる両党の実務者同士が、すでに水面下で入念な検討を進めていることでしょう。

しかし、もし合流することのみを優先して、新党設立後に不可避な問題の解決を先延ばしにしていればどうなるでしょうか。

2021年10月の衆議院の任期満了まで1年2か月しかないことを考えれば、新しい選挙区に配置される議員や候補者の氏名や政策などが各選挙区の有権者に浸透する前に解散総選挙となり、合流によって拡大した勢力が縮小しかねません。

それだけに、立憲民主党と国民民主党の合流に際しては、党名の決定方法や綱領も重要ながら、それ以上に根本的な選挙区の調整を入念に行うことが期待されるのです。

[1]国民民主、「分党」へ. 日本経済新聞, 2020年8月12日朝刊1面.
[2]国民、立民との合流加速へ. 日本経済新聞, 2020年8月12日朝刊4面.
[3]小西德應, 竹内桂, 松岡信之編著, 戦後日本政治の変遷. 北樹出版, 2020年, 162頁.
[4]立憲・山尾氏が離党届. 朝日新聞, 2020年3月19日朝刊4面.
[5]枝野氏、衆院選へ危機感. 朝日新聞, 2020年7月17日朝刊4面.
[6]「党名は投票で」立憲と国民一致. 朝日新聞, 2020年8月8日朝刊4面.

<Executive Summary>
What Is a Core Issue for the Merger of the CDPJ and the DPFP? (Yusuke Suzumura)

Parliament Member Yuichiro Tamaki, the Leader of the Democratic Party For the People, said that the DPFP will be dividied into two groups, the one to merge with the Constitutional Democratic Party of Japan and the other not to join the new party on 11th August 2020. It seems important decision, however there is more important point for the merger of the CDPJ and the DPFP, how to determine the allocation of constituencies for members.