「藤井聡太七冠の誕生」の持つ意味は何か

去る5月31日(水)と6月1日(木)、将棋の第81期名人戦七番勝負の第5局が行われ、挑戦者である藤井聡太六冠が渡辺明名人に勝利し、通算4勝1敗の成績で名人となりました。これで、藤井六冠は竜王、王位、叡王、棋王、王将、棋聖に名人を加え、七冠となりました。

七冠は1996年の羽生善治九段に続き史上2人目で、20歳10か月での達成は25歳4か月の羽生九段を抜く史上最年少記録となりました[1]。

アマチュア時代から傑出した存在として、愛棋家だけでなく広く一般の関心を集めていた藤井七冠だけに、今回の偉業が多くの人々の注目するところとなるのも当然です。

それとともに、藤井七冠が周囲を圧倒する強さを誇ると、かえって「強すぎる藤井七冠」に対する人々の関心が薄れるという懸念があるかもしれません。

しかし、実際にはそのような藤井七冠が残る王座を獲得して八冠となるのか否か、どこまでタイトルを防衛できるのか、最初に失うとすればどの称号か、あるいは藤井七冠に挑戦するのはどの棋士か、さらには誰が新たな壁として立ちはだかるのか、といった様々な注目すべき点があり、人々の関心が高まることはあっても失われることはないでしょう。

しかも、過去40年間に限っても、羽生九段や谷川浩司十七世名人、20歳で竜王となって以来18年にわたり何らかのタイトルを保持してきた渡辺明九段など、将棋界には傑出した才能や優れた人物が絶えることなく登場してきました。

それだけに、当面は藤井聡太七冠を中心として展開される棋界の動向は、ますます社会の大きな話題となるのです。

[1]藤井七冠 最年少. 日本経済新聞, 2023年6月2日朝刊1面.

<Executive Summary>
What Is the Meaning of Mr. Sota Fujii as the Seven-Crown Title Holder? (Yusuke Suzumura)

On 1st June 2023, Mr. Sota Fujii completed a sweep of Mr. Akira Watanabe in the best-of-seven Osho Championship with his Game 4 victory and became the Seven-Crown Title Holder. On this occasion, we examine the meaning of this historical achievement by Mr. Fujii and its impact to Japan's society.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?