村上宗隆選手の「55号本塁打」の持つ意味は何か

昨日、明治神宮球場で行われた読売ジャイアンツと東京ヤクルトスワローズの24回戦で、スワローズの村上宗隆選手が今季第55号本塁打を記録し、1964年の王貞治、2001年のタフィ・ローズ、2002年のアレックス・カブレラの3選手と並び、年間本塁打数で歴代2位となりました。

今季の村上選手はこれまで延べ14人が達成した年間50本塁打以上の記録に歴代最年少の22歳で到達しており、残り15試合で日本プロ野球の新記録となる年間61本塁打を達成することが期待されます。

1964年に王貞治選手が当時の日本記録となる55本塁打を放って以来、日本のプロ野球界において「55」という数字が大きな価値を持ってきたことは、例えば1985年に54本塁打であった阪神タイガースのランディ・バース選手は最後の2試合で9回打席に立ち6度敬遠され、「55本塁打」に並ぶことができませんでした。

このときのジャイアンツの監督は王氏であったため、王氏の記録を破られないためにコーチが打たれやすい球を投げないよう指示したという指摘もあり、それだけ「55本塁打」が重視されていたことが分かります。

一方、2013年にスワローズのウラディミール・バレンティン選手が新記録となる60本塁打を達成できたのは、当時のプロ野球が過去に比べて開明的になったからばかりではなく、バレンティン選手が20試合近くを残して55本塁打を記録した以上、残りの試合の全てで敬遠を行うことが現実的でないという事実にもよります[1]。

それでは、現在村上選手に年間本塁打数の記録更新への期待がかけられるのは何故でしょうか。

もちろん、関係者や愛球家の中に外国人選手ではなく日本人選手が記録保持者になることを期待するという考えがあっても不思議ではありません。

あるいは、以前に比べてソーシャルメディアの発達もあって、対戦相手との勝負を避けるような行為が瞬時に非難の対象となるという状況が、指導者や選手の行動を規定しているかもしれません。

それとともに、野球に限っても大リーグの大谷翔平選手(ロサンゼルス・エンゼルス)が打者と投手で球界屈指の活躍を残していることが示すように、これまで不可能と思われてきた成果を達成したり、常識を覆すような成績を挙げることを積極的に評価するという意識が人々の間に浸透したことを示唆していると考えられます。

その意味でも、今後村上選手がどこまで本塁打を打つことが出来るのかが注目されます。

[1]鈴村裕輔, バレンティンの本塁打記録更新が持つ意味. 2013年9月16日, https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/05cb6f7f5bd9517d78af383c3b3a28d8?frame_id=435622 (2022年9月14日閲覧).

<Executive Summary>
What Is a Meaning of Mr. Munetaka Murakami's 55th Homers? (Yusuke Suzumura)

Mr. Munetaka Murakami of the Tokyo Yakult Swallows hit his 54th and 55th homers at the Meijijingu Stadium on 13th September 2022. On this occasion we examine a meaning of the number "55" in the history of Japanese baseball and the future of Mr. Murakami's record.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?