菅義偉首相は「東京の実態」を把握しているか

昨日菅義偉首相は首相官邸で記者団の質問に答え、全国の1日あたりの新型コロナウイルスの感染者数が初めて1万人を超えたことに関し「強い危機感をもって対応している」と発言するとともに、「自動車の規制やテレワークを進めている。人流は減少傾向にある」と指摘しました[1]。

菅首相の発言は、東京都に対して緊急事態宣言が発令される状況の中で東京オリンピックを開催するという一見矛盾する態度を示す当局の態度を正当化するための虚勢のようです。

その意味で、菅首相は事態の容易ならざることを承知しながらも、「オリンピックを行って政権を浮揚させて解散総選挙を行う」という方針を実現するために弱論を強弁していることになります。

一方で、菅首相に情報が正しく届けられない、もしくは種々の情報の中から所定の方針に合致する内容のみが報告されているために状況が適切に把握されていないという可能性も捨てきれません。

もちろん、実際に街中を歩き、東京駅であれ渋谷駅であれ都内の主要駅を利用すれば、1か月前、2か月前に比べて人出が増えていることは身をもって体感できます。

また、各種の報道機関が携帯電話の位置情報などを基にした人の流れを報じていますから、こうした記事や話題に接すれば現在の状況がどのようになっているかは容易に理解できます。

しかし、警備面での問題もあって内閣総理大臣の移動は原則として専用車ですから、車内の窓から眺める街中の様子は「人流は減少傾向にある」ように見えても不思議ではありませんし、視聴するテレビ番組や閲覧する新聞の紙面によっては人出の増加という状況が伝わりにくい場合もあることでしょう。

このような状況を考えれば、菅首相の理解する現在の都内の状況が実際の様子と異なっているとしても不思議ではありません。

菅首相が解散総選挙のために弱論を強弁するだけであれば頑なな態度を軟化させることは難しいものの、事実に接していない場合は、実際に市中を徒歩で巡視することであるがままの様子を確認できる機会は高まります。

くれぐれも正確な情報が壟断されているために適切な対策を取れないという状況だけは避けられなければなりません。

[1]感染、全国1万人超す. 日本経済新聞, 2021年7月30日朝刊1面.

<Executive Summary>
Does Prime Minister Yoshihide Suga Understand the Actual Situation of Tokyo? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Yoshihide Suga emphasises that the authorities can suppress the flow of people and management the situation to prevent the outbreak of the COVID-19. However it might be suspicious comment, since it seems that he does not understand the actual situation of Tokyo.

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