小池百合子都知事の記者会見が示唆した「東京都の苦境」
本日、小池百合子都知事が記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染の拡大に対する東京都の方針を説明しました[1]。
記者会見において、小池都知事は感染症対策班の見解として、接客伴う夜間に営業している飲食店での感染が濃厚であり、こうした場への出入りの自粛を要請するとともに、若者に対してカラオケ、ライブハウス、企業の接待などで行くナイトクラブの利用を控えることを求めました。
また、小池都知事は、国に要望するだけでなく都として中小企業や飲食店への支援を行うことを表明するとともに、東京都の医療体制について、現在は都内の病床数が逼迫していること、医療体制の崩壊を防ぐために、今週末の外出の自粛も要請しました。
現在、新型コロナウイルスの感染の拡大に伴って中小企業や飲食店の経営が困難になっていることが指摘されている[2]だけに、都が独自の支援を行うことは適切であり、重要な施策となります。
これに加え、現在、東京都では患者数の把握が難しくなっており、今後は発症者に関する情報を従来の随時ではなく定時の提供に改めることが指摘されました。
今回の記者会見は、本日8時30分時点で累計で443人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されている東京都の状況[3]に鑑みれば、現状を適切に分析するとともに、感染していることを自覚していない人が意図せず他の人に感染させる危険性と、病床数の不足という喫緊の課題を指摘しているという点で、内外に東京都を取り巻く環境の切迫さを伝えたと言えます。
それとともに見逃せないのは、記者会見に同席した厚生労働省の新型コロナウイルス対策班の一員である西浦博氏が感染者数の急増傾向が認められることを指摘したことです。
何故なら、もし西浦氏が統計学的な見地から「傾向」という語を用いたのであれば、感染者が統計学的に有意な差をもって増加してはいないものの、今後患者数の一層の増加が起きる可能性を推察させるからです。
実際、発症者に関する情報の発信の頻度を変更することは、東京都が患者数の増加を推測して対応策を立案していることを示唆します。
それだけに、今回の記者会見は東京都の苦境を示しているのであり、決して事態を楽観視しているなどと捉えられてはならないのです。
[1]小池知事「知事の部屋」/記者会見(令和2年3月30日). 東京都, 2020年3月30日, https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/governor/governor/kishakaiken/2020/03/30.html (2020年3月30日閲覧).
[2]中小資金繰り支援 重視. 読売新聞, 2020年3月29日朝刊4面.
[3]東京都 新型コロナウイルス陽性患者発表詳細. 東京都福祉保健局, 2020年3月30日, https://catalog.data.metro.tokyo.lg.jp/dataset/t000010d0000000068 (2020年3月30日閲覧).
<Executive Summary>
Tokyo Governor Yuriko Koike's Press Conference Implies Tokyo's Serious Situation against a COVID-19 Outbreak (Yusuke Suzumura)
Tokyo Governor Yuriko Koike held a press conference on 30th March 2020. On this occasion she implies Tokyo's serious situation against a COVID-19, since she emphasises lack of hospital beds in Tokyo and a possiblity of more rapid outbreak of the disease.https://researchmap.jp/blogs/blog_entries/view/76353/283902e45955121748efbb4f8fa451ff?frame_id=435622
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