マイナンバー情報総点検本部が「マイナンバー問題」の解決のためになすべきことは何か

本日、政府にマイナンバー情報総点検本部が設置され、初会合が開催されました[1]。

これは、いわゆるマイナンバーカードについて、「マイナンバー」と銀行口座の状況などを対応させる際に別人の情報が登録されるなどの問題が相次いで起きたことを受け、省庁横断型の組織として設けられたものです。

本部の会合に出席した岸田文雄首相はデータやシステムの総点検、新たな誤りが生じないための仕組みづくり、国民のマイナンバー制度に対する不信感の払拭のための対応などを指示しました。

確かに、当初は社会保障と税の一体改革の中で作られたものの、現在では制度が始まった当時の理念を離れ、納税や診療・投薬の履歴、健康診断の結果までを含む、日本に住む人一人ひとりの生活にかかわる情報を一元的に把握する仕組みへと変化したのが、マイナンバー制度です。

高度情報化社会における新たな社会の基盤の役割を与えられたマイナンバー制度は、新たな仕組みだけに当局にも相応の慣れが不可欠ですし、われわれ利用者も行政当局を信用するのではなく、登録された情報に誤りがないかを確認する習慣を身につける必要があるでしょう。

それとともに、今回の本部がどこまで実効的な組織となるか心許ないということも事実です。

何故なら、本部を率いるのはデジタル担当でもある河野太郎国務大臣だからです。

河野国務相はマイナンバーを巡る混乱について、「人間が作業をやったことによるヒューマンエラー」[2]と発言しており、今回の問題への理解が不十分であるように思われます。

むしろ、問題は本来はオンライン上で完結するはずの番号をあえて紙に印刷して利用者に交付したり事務作業を行うという現在の仕組みそのものに求められます。

すなわち、「人間が作業をやったことによるヒューマンエラー」は主たる問題ではなく、そのような作業を行わざるを得ない制度が解決されるべき問題なのです。

この点を見逃すと、どれほど問題の解決を訴えても実効性は乏しく、かえって新たな混乱を生じさせかねません。

その意味で、河野国務相をはじめとする本部の関係者は、ぜひとも実際に作業に従事し、何が効率的で問題のない作業の実現を妨げているかを身をもって体験することが、「新たな誤りが生じないための仕組みづくり」への第一歩となるのです。

間違っても、霞が関の大廈高楼に安居して号令をかけるのみであってはならないのです。

[1]マイナンバーカード問題 “すべてのデータ総点検” 首相指示. NHK NEWS WEB, 2023年6月21日, https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230621/k10014105761000.html (2023年6月21日閲覧).
[2]河野太郎デジタル担当大臣が疑問に答えた 「マイナンバー法改正案」成立で何が変わる. テレ朝news, 2023年6月1日, https://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000301640.html (2023年6月21日閲覧).

<Executive Summary>
What Is the Core Problem of the My Number National Identification System Issues? (Yusuke Suzumura)

The Japanese Government forms a new headquarters to checke and examine the My Number National Identification System Issues on 21st June 2023. On this occasion, we examine the core problem of the issues and suggest the measure to overcome the problem.

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