自民党総裁選挙と菅義偉氏の当選の持つ意味は何か

本日、自由民主党は両院議員総会を行い、新総裁の選出のための投票を行いました。

その結果、届け出順に石破茂元幹事長が68票、菅義偉官房長官が377票、岸田文雄政務調査会長が89票を獲得し、菅氏が初当選を果たしました[1]。

各候補の得票の内訳は以下の通りでした(表1)。


表1 自由民主党総裁選挙での得票の内訳

20200914表1 自由民主党総裁選挙での得票の内訳01


主要5派閥の支持を集めた菅氏が議員票、都道府県票でともに最多の得票数を記録したことで、1か月前まで党内で確固とした基盤を持たなかった菅氏はひとまず国会議員と各都道府県連の信認を得たと言えます。

一方、今回が初の総裁選となった岸田氏は地方への支持の浸透不足が、4回目の挑戦となった石破氏は国会議員の間での不人気さがそれぞれ得票結果に反映されました。

特に石破氏は3人以上が立候補した総裁選としては初挑戦であった2008年以来となる最下位に留まり、改めて党内での地位の微妙さが浮き彫りとなりました。

3人が立候補し、小渕恵三氏が当選した1998年の自民党総裁選の小泉純一郎氏や、やはり3人が立候補し小泉氏が当選した2001年の総裁選での麻生太郎氏のように、第3位となりながら後に総裁となった事例はあるものの、2012年、2018年の選挙時に比べて地方票で伸び悩んだこと[2]は、総裁候補としての石破氏の魅力が頂点を過ぎたことを示唆します。

また、岸田氏は岸田派の所属議員47名を32名上回る議員票を得たことで、次回以降の総裁選挙への望みを繋いだと言えるでしょう。

ただし、発信力不足や存在感の乏しさという岸田氏の自己理解[3]に基づけば、今回の得票数は岸田氏の政策や指導者としての魅力だけではなく、安倍晋三首相が後継者として期待を寄せていたとされる岸田氏[4]を今後の総裁選候補に止めるために、例えば安倍首相が所属する細田派や菅氏をいち早く支持した二階派などが共同して票の按分を行った可能性も推察されます。

いずれにせよ、9月16日の首相指名選挙を経て内閣総理大臣に就任することが予想される菅氏は、些事に囚われず、一国の首相に求められる経綸を示し、実践するだけの魄力を発揮することが求められるところです。

[1]開票結果. NHK NEWS WEB, 2020年9月14日, https://www3.nhk.or.jp/news/special/primeminister/?utm_int=detail_contents_news-link_001 (2020年9月14日閲覧).
[2]自民党の歴史. 自由民主党, 公開日未詳, https://www.jimin.jp/aboutus/history/ (2020年9月14日閲覧).
[3]社保改革へ国民会議 立場とらわれすぎた. 日本経済新聞, 2020年9月13日朝刊5面.
[4]ポスト安倍 割れる細田派. 読売新聞, 2020年6月25日朝刊4面.

<Executive Summary>
How Can We Examine the LDP's Presidential Election of 2020? (Yusuke Suzumura)

The Presidential Election of the Liberal Democratic Party was conducted on 14th September 2020 and Chief Cabinet Secretary Yoshihide Suga defeated other two candidates, Policy Research Council Chairperson Fumio Kishida and Former Secretary-General Shigeru Ishiba. In this occasion we examined a meaning of the election.

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