「いばらの道」への第一歩を踏み出したリズ・トラス英国首相

昨日、保守党党首選挙に勝利したエリザベス・トラス氏が英国の首相に就任しました[1]。

新型コロナウイルス感染症の感染が拡大した際の行動規制が問題視され、首相の辞任に繋がったボリス・ジョンソン氏が掲げた欧州連合(EU)からの離脱や対中露政策での強硬な姿勢を一貫して支持したのがトラス氏です。

こうした「親ジョンソン」の姿勢が、辞意を表明した後も保守党内で強い基盤を持つジョンソン氏を支持する党員の支援を受け、リシ・スナク財務相との決選投票を制しました。

しかし、党首選挙でのトラス氏の得票率は2001年以降の過去4回の当選者の中で最低となる57%でした[2]。

これは、ジョンソン派の党員の支持を得たことで党首の座を得たものの、党内のほぼ半分が「ジョンソン路線」を引き継ごうとするかのようなトラス氏に対して否定的ないし懐疑的な態度を示していることを推察させます。

こうした状況は、2025年1月までに実施される下院選挙に勝利するという、政権党党首としてのトラス氏に課せられた役割を実現するための大きな障壁となります。

内政の面では賃金の上昇や物価対策で成果を挙げることが有権者の支持を得るには不可欠ですし、外交面ではEUや中露とどのような関係を築くかを避けて通ることはできません。そして、これらの点で党内世論が分裂すれば、トラス氏はたちまち政権運営の困難さに直面することになるでしょう。

さらに、ジョンソン氏の扱いは、当分の間は何にも増してトラス氏にとって重要な課題となります。

それだけに、国政の面でも党運営の面でも目に見える難題に囲まれたトラス氏がいかにして困難な状況を克服するのか、あるいは事態を解決できず、テリーザ・メイ、ジョンソンと短期間で退陣した過去2代の首相と同じ道をたどるのか、今後の動向が注目されます。

[1]Liz Truss becomes UK prime minister after meeting Queen at Balmoral. The Guardian, 6th September 2022, https://www.theguardian.com/politics/2022/sep/06/liz-truss-becomes-uk-prime-minister-meeting-queen-balmoral (accessed on 7th September 2022).
[2]トラス氏、挙党体制急ぐ. 日本経済新聞, 2022年9月7日朝刊11面.

<Executive Summary>
Prime Minister Liz Truss Have Taken the First Step to a Thorny Path (Yusuke Suzumura)

Conservative Party Leader Elizabeth Truss is appointed as the British Prime Minister on 6th September 2022. On this occasion we examine Prime Minister Truss' future as the leader of the UK.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?