「菅首相の多人数での会食」は何故不適切な行動なのか

昨日、菅義偉首相は首相官邸で記者団に対し、12月14日(月)の夜に自民党の二階俊博幹事長や林幹雄幹事長代理ら5人以上と会食を行ったことについて、「国民の誤解を招く意味で真摯に反省している」と発言しました[1]。

公表される1日の動静によれば、菅首相が朝食と夕食をレストランなどで摂る機会が多いこと、さらに会食を通して政府や党の要人や各界の関係者と意見の交換や種々の相談などを行っていることが推察されます。

また、通常は党が担当する業界団体の交渉などについても自らが窓口となるなど[2]、菅首相は2021年10月までに行われる衆院選と2022年夏の参院選に向けて、選挙の基盤の確立を急いでいることが分かります。

そのため、今回の会食も、菅首相にとっては日常的な行動の一環であって、特段の注意を必要とするものではなかったと言えるでしょう。

一方で、全国各地で新型コロナウイルス感染症の感染が拡大し、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会も5人以上の会食は感染の危険性が高いと指摘していることを考えれば、菅首相が同席者が5名以上の会食に参加したことは、適切な対応ではなかったことが窺われます。

さらに、分科会が危険性を指摘する5人以上での会食を行ったことは、菅首相が現在の状況を軽んじているか、適切に理解していても対応する意思がないか、それとも5人以上の会食は感染の危険性が高いという意見が根拠に乏しいものであるかのいずれかの可能性に基づいていることになります。

実際、新型コロナウイルス感染症対策を担当する西村康稔国務相による「専門家も何かエビデンスがあって何人以上と言っているわけではない」という指摘は[1]、菅首相が上記の3つの可能性のうち第3の選択肢に基づいて行動したことを示唆します。

もとより、内閣総理大臣に倫理的あるいは道徳的な規範として行動することを要求するのは、過剰な期待となります。

しかし、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の本部長が内閣総理大臣であることを考えれば、たとえ「何かエビデンスがあって何人以上と言っているわけではない」としても、菅首相は不用意な行動をとったと言えます。

それだけに、菅首相に求められるのは、「真摯に反省している」と言うだけでなく、真摯な反省の結果を具体的にどのように行動に反映させるかという点なのです。

[1]首相、会食「真摯に反省」. 日本経済新聞, 2020年12月17日朝刊4面.
[2]首相、二階・林・森氏と密接. 日本経済新聞, 2020年12月15日朝刊4面.

<Executive Summary>
What Is an Important Viewpoint for Prime Minister Yoshihide Suga as the Head of the Novel Coronavirus Response Headquarters? (Yusuke Suzumura)

Prime Minister Yoshihide Suga apologised that he held a large dinner party of the 14th December on 16th December 2020. It might be important for Prime Minister Suga to remember that he is the Head of the Novel Coronavirus Response Headquarters, since the specialists point out the a large dinner is a high-risk event under the outbreak of the COVID-19.

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